ツキシキ
2024-02-25 12:44:48
6104文字
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★雑多夢まとめ

2作品。キャラ×モブまたは主人公。pkmnピニャアオ(女主)、金カ夢ogt。


醜く舌を引き出して死ね(ゴールデンカムイ尾形夢)


・冷たい、暗い
・戦場の残酷さを匂わす程度の描写あり(ぬるめ)
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「俺の右に立つなよ」
 出会って数日、連れ立って歩けばそう叱られ、はぁいと童女のような返事をするのが常だった。

 尾形さんの片目は欠けている。食事中にぽろりと義眼を零したのが知るきっかけで、そうと聞いていなかった私はひどく狼狽した(毒を盛られたんだとヒィヒィ叫びつつも目玉が転げ落ちるような毒があるのかは疑問の余地があった)。
 よくよく見れば彼の視線は片方だけ妙に合わないとわかる、のかもしれないが、たかだか町娘の私にそんな観察眼などあるはずもない。あの頓狂な出来事さえなければ、私は尾形さんの欠損にとうとう気づかぬままだったことだろう。なにせ彼は右方左方関わりなく、私が声をかける前には私に気づいていて、それでいて放っておくような人だった。

「アンタが軍人ならな。はいと答えておいてやらない時点で懲罰房にぶち込んでやれるんだが」
「おしおきしてくれるの? うれしい」

 抱き着けばぐいと身体を引き離される。煩わしそうな割に、突き飛ばすのとは無縁の力の込め具合で、そういった配慮にこれまたうぬぼれたくなってしまう。

……ここまで絡まれることになるとは思ってなかった」

 尾形さんが諦めた(あるいは呆れた)のを言いことに、私は再びちょこんと右隣へ居座った。


 欠けた目の代わりにだなんて、大それたことまでは考えていない。が、まあ命を賭した弾除け程度ならなれるかもしれない、という甘くて暗い目論見があった。好きな男のために死ぬという筋書きには、なかなかどうにも、蝶を誘う花の蜜にも似た香りがあった。
 けれども、今日ばかりは雲行きが違った。

「流れ弾に当たっても知らんぞ」

 普段であれば終わりの問答が、珍しくも続く。一方的に話しかけるだけの関係に進展があろうとは。浮足立った気持ちのまま、私は口を開く。

「儚んでくださいます?」

 泣くどころかおそらくその日の記憶に留めておかれるかすら怪しい。そう察しつつも言ってみた。しかし、意外や。
 尾形さんの薄い唇がクッと釣り上がる。間抜けにそうと知らせるように。

「銃殺なら美しく死ねると思ったら大間違いだな」

 それは、私の浅はかなロマンチズムを看破する物言いだった。

「心臓をきっちり狙いに来るスナイパーはそういない。胸筋、あばら骨……。腹ならいっそう悪い。臓器1つイカレた程度で人は死ねないからな」

 冷えた風が私の身体を薙ぐ。霞がかっていた死に肉付けがされていく。銃弾が自らの身体を貫く、その様。生々しく流れ落ちる血。じぐじぐと苛まれる痛み。

「狙うなら脳天だ。額は意外と簡単に割れるから即死が叶う……まあ中にはしぶといやつもいるが。ほとんどは死ぬ」

 じ、と昏い片目が私を映す。まるで沼だ。足を取られ、次の言葉を探す間もなお、暗がりが私を掴み続けている。沈む……

「そうして脳を壊された奴の死体は、たいていが阿呆面だ」

 なぜ、こういう話の時だけ笑うのか。



 息苦しさに合激、かろうじて、息を吸う。それで、呼吸すら許されないほどの緊張に立たされていたのだと気づいた。私が生にしがみついたのを知ってか、尾形さんはスンとまた無表情に戻った。余韻も色もないその様は、死の沼から逃れようとする私に追う価値もないのだと知らしめる。

「じゃあな」
「あっ……

 甘く絡ませていたはずの右腕は、とうにするりと解けていた。いいや、覚えてもいないがきっと、私から離れたのだろう。
 縋る指も持たぬ私は、静かに手の平を握りしめた。そうして確かめるように、足指で地をかすかに擦る。一度、二度、三度。本能が、こびりつく死の気配を拭い去ろうとするかのように。

 ひとしきりやり終えて顔を上げた頃には、尾形さんの背は見えなくなっていた。
 再び見ることも、おそらく。





~END~