らい
2020-10-10 21:16:48
4708文字
Public レオいず
 

今日のレオいず♀㉖「よろめきオーバーキル」

お題「RPG」※泉女体化(性転換、呼称改変注意)/勇者レオ×踊り子泉♀のRPGパロ

 獅子の勇者レオ、胡蝶の踊り子セナ。魔王テン・ショウインを討伐するべく旅を続けていたふたりは、吸血鬼たちが集まる隠れ里のうわさを聞きつけた。
 そこには、赤目の黒魔導士が住んでいるという。古文書に綴られていた『かつて魔王を倒した勇敢な騎士たち』のひとり、その末裔であることに気がついたレオたちは、彼を仲間に引き入れるべく、里に向かうことにした。
 しかし、魔力に満ちあふれた吸血鬼たちの影響か、周辺のモンスターたちは手強くなっている。数体の暗黒剣士に囲まれ、退路を塞がれてしまった。


「チョ~うざぁい!急いでるんだから、邪魔しないでよねえ!」


 踊り子のセナは武器の扇を握りしめ、足のつま先まで魔力を行き届かせながら、美しく宙を舞う。大地から氷柱が飛びだし、魔物たちに突き刺さったが───氷属性への耐性があるのか、傷ひとつ負わせられない。渾身の技を交わされたセナは、眉をひそめて舌打ちをした。


「はあ~!?なんでぇ~!?」
「ほら見ろ!だから言っただろ~、経験値を稼いで早いとこレベルを上げて、『木陰の蛇』とか『逆さ三日月の死神』とか、いろんな属性の特技を覚えておいたほうがいいって!それなのにセナ、『今日はもうバトルは嫌。お肌のケアしたいから、宿に戻る』って帰っちゃうから!」
「ニキビ顔で冒険するなんて絶対に嫌!文句あんのぉ!?」
「あぁ~っわかったわかったっ、女の子の旅に苦労はつきものだよな~!……って、こら~っ!おしゃべりしてるのに、急に切りかかってくんな~っ!」


 数秒前まで首があった位置に、剣の切っ先が飛んでくる。咄嗟にしゃがみ、攻撃を交わしたレオはがるるるるる、と威嚇しながら、応戦した。


「うるさいなぁ、もぉっ!」


 剣を振りかざし、果敢に攻めてくる暗黒剣士を交わしながら、セナも扇をふるう。ところが、攻撃力のステータスが低いために、ほとんどダメージを与えられない。


「無理すんな!セナはその辺でお茶でもして待ってろっ、おれが片付ける!」
「この数……!いくら勇者さまでも対応しきれないでしょお!?」
「無力の踊り子ひとり救えないで、この世界を救えるか!?」
……っ、れおくんっ、危ないっ!」


 三体の敵と交戦しているレオの背後から、禍々しい瞳をした暗黒剣士が襲いかかる。セナはとっさに飛びだした。闇の剣が、セナを切り裂く。


「んっ……!」
「セナ───!」


 ザシュッ。パチッ。ぷるんっ。
 衣服が破ける音が響き渡り、セナは恐る恐るまぶたを開ける。肉ごと切り裂かれてしまうダメージを覚悟していたが、さいわい直前に立ち寄った街で、防御力の高い『胡蝶のはごろも』を購入していたおかげで、まったくダメージを受けていなかった。
 ただし───胸の部分をのぞいては。


「!?」
「!?」
「!?」


 セナ、レオ、魔物たちが三者三様に驚いた。乳首はかろうじて隠れていたが、胸当てのフロントホックはちぎれ、下乳があらわになっていた。装備の着圧から解放され、ぷるぷると揺れるバストに、セナは頬を真っ赤にする。この冒険が終わった後、いつ誰に見られてもいいように美しく整えてはいるが、青空の下で堂々とさらけだすのは、さすがに恥ずかしい。身体じゅうが熱く痺れてしまいそうだった。
 とはいえ───自分は、かつて魔王を倒した光の騎士たちの末裔なのだ。魔王テン・ショウインの居城は遥か彼方、こんな場所でくたばるわけにはいかない。セナは己を奮い立たせて、扇をきゅっと握りしめながら、魔物たちを睨みつけた。


「完璧に、一生懸命に……威風堂々と、戦ってやる!……って、あれっ?ええ………?」


 セナは、ぽとりと扇を落とした。つい先ほどまで猛威を振るっていた暗黒剣士のうち、数体が床に転がっていたのだ。ピンクのもやを出しながら、天に向かって昇天していた。
 わがままに揺れるセナの胸は、魔物相手にも効果的だったのである。


「はあ~~~!?」


 セナは怒りに震えながら、悦に浸っている魔物の胸倉を揺さぶった。まさか敵ごときに、ただで美しいからだを拝ませてしまうとは。いつか永遠の契りを交わすであろう男の子にしか裸を見せないと、固く誓っていたのに!


「ちょっとぉ~!?魔物のくせに、エッチなこと考えないでよねえ~!?」
「グギギ……
……っ!?」


 ところが、全員が全員そうではないらしい。セナのお色気事故に耐えた魔物が、剣を片手にじりじりと迫り寄る。
 しかしながら、戦闘意識のある魔物の陣営は随分と減っていた。四面楚歌状態から一転して、戦闘はぐっと楽になるはずだ。数の暴力に苦戦していたレオも、本来の力を活かせるはずである。
 セナは凛としたまなざしを取り戻し、レオを振り返った。


「勇者さまっ、攻めるなら今だよぉ!こてんぱんにしてやんな!」
「───………
………れおくん?」


 勇者レオは、まるで温泉でのぼせたような真っ赤な顔で、あんぐりとしていた。頭の上には、ハートがくるくると回転している。魔物同様に、スタン状態に陥っていたのだ。
 セナの頬が、ふたたび紅潮した。昔馴染みでありながら、未だに恋人関係にはない勇者の男に、ぷるぷると揺れる胸を目撃されてしまったという現実が、一気に襲いかかる。唐突に羞恥心がせり上がり、からだに灯る熱が上昇していく。
 セナはあらわになった乳房をようやく片腕で隠しながら、レオの胸倉をつかんだ。全ステータス中もっとも最低数値の攻撃力が、どういうわけだか一気に上がる。


「このバカ勇者っ、ちゃんと戦ってよねえ~っ!?」
……はっ!」


 至福の夢に旅立っていたレオが、ようやく帰還する。正気に戻ってしまえば、勝負はこちらのものだ。優勢に傾きはじめたバトルに、泉はほくそ笑んだけれど───レオが自らの装備品を脱ぎ始めたので、口角が引きつった。


「そんなことしてる場合じゃないでしょお~!?」
「視線のやり場がないだろ~!?……って、くあぁあぁあぁあぁっ、おれの防具は勇者専用の特注品だったっ、踊り子のセナには着させられない~……っ!」


 レオがちらっとセナを見やる。やわらかな胸に視線を落として、すぐに両手で顔をおさえた。


「き、きになっちゃうおれのばかっ、ばかっ!ああっ、恐れおののかなくてもよいのです勇者よっ、だれかそう言ってくれっ!ああ~っ夜の女王よっ、復讐の炎で地獄のように我が心を燃やしてくれ~っ!」
「だからぁ~っ、落ち込んでる暇なんかないでしょお~!?とっとと敵を倒してっ、吸血鬼の黒魔導士とやらをスカウトしにいくんだからねぇ~っ!」
「セナもセナだっ、どんな敵にも凛々しく立ち向かう踊り子といえども、自分のからだは大切にしろ!安売りすんなっ、かつて魔王を倒した騎士の末裔である前に、ひとりの女の子なんだから!」
「れ、れおくん……
「ギィ~~~ッ!」
「こら~っ!セナのおっぱいをなんとか隠すから、それまで襲いかかってくんな~っ!」
「ギ……ギィ………?」


 凶暴な魔物をその場に整列させて、レオは道具ぶくろを漁りはじめる。初期装備の防具が出てくるまで、セナも長いこと待たされるのだった。
 獅子の勇者レオと、胡蝶の踊り子セナ。これから出会うであろう三人の仲間たち。魔王テン・ショウイン討伐の旅は、まだ始まったばかりである。
 当分、終わりそうもないけれど。




※次ページに主な登場人物の設定あり(読まなくても問題ないです)