ぼろぼろになって汚れた姿でにかりと笑う姿に見惚れた。
今夜はいつもと変わらぬポンチ相手
……ではなく、大量発生した下等吸血鬼相手の一斉駆除だった。汗を流し、埃にまみれ、大事な衣装のあちこちが汚れて、いくつかかぎ裂きまで出来ている。そんな中でも擦り傷程度で、ぎゃいぎゃい騒ぎながらも次々と下等吸血鬼を退治する。いつもの情けない五歳児っぷりはどこへやら、我が城の退治人はよく働いた。
下等吸血鬼はデカイ蚊の突然変異なのか、いつもの姿より小さいものばかり。その代わりと言ってはなんだが、とにかく数が多かった。大量発生したものの栄養が足りず育ちきらない中で、拳大から顔面の大きさ程度の個体が噴き出すようにしていくらでも湧いて出ていた。
飛翔する個体はそれだけで厄介だ。人間の届く場所には限りがあり、的が小さいからこそ有効な手段も限られる。それであるのにとにかく量が多く、銃弾がいくらあっても足りやしない。新横浜に所属する吸血鬼退治人の中で有効な手段を持つものは限られていた。下等吸血鬼用の忌避剤を散布しながら、どうにかこうにか退治を終えたのが深夜二時過ぎ。昼間は別の仕事を請け負っている者たちが先に疲れた顔をしながら帰宅していき、時間に融通のききやすいロナルドを始めとした数人で吸血鬼対策課への報告とᐯᎡᏟへの引継ぎを済ませたのは、夜明けも間近の午前四時のことだった。
東の空が薄っすらと白み始めた新横浜の街を背に、死んだり蘇ったりを繰り返していたこちらを振り返った退治人が、ぱちぱちと数度瞬きを繰り返してにかりと笑った。
「役に立たねえ死にっぱなしのくせに、根性あるじゃん」
いたずらっぽく笑う顔に嘲りはなく、珍しくこちらを褒めているらしい。ロナルドらしいと言えばらしい台詞と、裏のない笑顔にすっかり見惚れて
――参ってしまったのだと思う。
「
……かっこいいな、クソ!」
小さく吐いた悪態に、見慣れた顔がみるみるうちに赤く染まった。
「照れてるの?」
「ちげえよ馬鹿! 動きすぎて暑いだけだ!」
走り回っていたのは数時間前ではあるし、明らかに運動のせいではない赤で顔を染めていく初心さにドラルクはあたたかいもので満ちていくような心地がして笑いをこぼした。
「たしかに今夜の君はかっこよかったさ。そりゃもう悔しいくらいに」
ヌンヌン同意する可愛らしい使い魔の頭を指先で撫でながら、ドラルクは認めた。君は、かっこいいよと。
「
――――――ッッ!」
「うわっ! なになに、危ない! おいこら降ろせ!」
ガッと衝撃が体を襲って重力が失せる。気がつけば、熱く逞しい身体に担ぎ上げられていた。死ななかったのは、単純にロナルドの力加減の賜物だろう。こういう時ばかり器用なおトコに、ドラルクはもう一度「かっこいいな、クソ」と悪態をついた。
「おめえこそ照れてんじゃぇか」
耳先を赤くしたままの我が家の退治人が、ドラルクを担いだまま走り始める。
「陽が出るまでに帰るぞ!」
ここからならにっぴき並んで歩いて帰っても夜明け前には事務所にたどり着くことなど分かりきっていたが、ドラルクはそこに触れることはなく満足気に唇を歪めて「私のために頑張って走れよ。私が死なない程度に!」と可笑しくて死にそうになるのを堪えながら声を張り上げた。
お題元:X(Twitter)
弊ドロこう言うお題
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