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不破
2024-01-13 17:48:53
6238文字
Public
空戦
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#16
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暗殺。特定の業界や組織情勢の中で比較的重要な役割を担う立場にある人間を秘密裏に殺害することをいう。かつての世界でも多くの著名な人間がこれによって命を落とし、多くの情報とともにその存在を闇に葬られた。極めて政治的、大局的な理由で行われる行為だ。
階層構造になっている帝都ケーニヒスベルク。そのB1フロアに広がる歓楽街。
暗殺者
アサシン
という返り血に塗れた後ろ暗い過去を隠すように輝くネオンの光から逃れ、路地裏の暗がりに身を潜める。眩い光に背を向けて潜り込んだ暗がりの先に気配を感じ、アレンは歩を止めた。
「仕事はもう受けないと言ったはずだ」
前置きを省き、呆れと疲れを混ぜ合わせたような声色で言いながら、アレンは路地の壁に背を預けた。
「
……
そうはいかん。そもそも、この仕事はお前のところの上層部からの依頼だ」
「軍の?」
暗闇の奥から返ってきた聞き慣れた声に息を吐き、その言葉の内容に怪訝な表情を浮かべた。
軍からの依頼でこんな汚れ仕事が回ってくることは極めて稀だ。皇帝の代替わりで方針が変わったか、軍の再編に紛れて不穏因子を抹消しようという動きでもあるのか、大方はそんなところだろうが、軍からの指示となっては受けないという選択肢を取り辛くなる。妻と結婚し、娘のマヤを授かってから、正規の仕事で生きていくことを心に決めてこの稼業から足を洗ったというのに、後ろ暗いことほどなかなか縁が切れないものだ。
「
標的
ターゲット
はこの男だ。見覚えはあるだろう」
暗闇の中からぬっと、痩せこけた手が現れ、手にしていた小型端末が光学モニターを展開、標的の顔を映し出した。その顔を目にし、アレンは深くため息をついた。
その顔は先日、大摩天楼のラウンジで目にしたものだった。黒い髪、右が金、左が深い紫の、左右で異なる色の目。フュゼ・ナイトレイ。処刑されたアラスター・ナイトレイの後継者として突然現れた人物だった。
思い返してみれば、この展開は予想するに容易い。軍の再編が進んでいるとはいえ、旧体制からの大きな変更を快く思っていない者達は少なくない。そんな者達が馬鹿げた依頼を寄越すことは必然だと言えるだろう。
「断る」
ぴしゃりと言いながら、立ち去ろうと壁に預けていた背を持ち上げたところで背後から声が追ってきた。
「妻と子供を帝都から逃したそうだな」
その言葉にアレンは歩を止めた。黄の差した赤色の両眼を見開きながら振り返り、低い声で「なんだと
……
?」と問い返す。
「妻の実家のあるパトラに戻っている。家族思いなことだが、旅客艇の搭乗者リストの細工までは考えなかったか」
脳裏に妻と娘の顔が過る。冷えていく背筋の感覚とは逆に燃え上がるような怒りの感情に脳に不快な痺れを感じながらも闇の向こうを睨んだ。
「家族に手を出してみろ。一生かけてでもお前達を殺す」
「ならば仕事をこなせ。それが互いに臨んだ結果に繋がる」
低い声で凄んだ言葉に淡白な声が返って来、気配が消えた。薄暗い路地裏に取り残されたアレンは歯噛みし、足を速めた。
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