みたむら
2024-01-08 17:30:09
4432文字
Public 刀剣乱舞(長義さに)
 

空白

2022.07.29「刀さにお題80」(X:@tousaniodai)様より
テーマ:薬

体調不良になった審神者が政府機関の医療に行くのを長義が付き添う話。
※独自設定あり

「主」

本丸で仕事をしていると突然声をかけられ、操作していた端末の手を止めた。
近侍の山姥切長義が、少し様子がおかしい。
何かに気づいたかのような表情だ。
先ほど作成した書類に不備が見つかっただろうか。

「書類はちゃんとできている……だが、顔色がよろしくないと思ってね。どこか体調が良くないのではないかな?」
「体調ねぇ」

体調不良の自覚はあるのかといえば、なくもない。
最近、処理の仕事と政府からの命令により、出陣要請があり、戦略を練たり、刀剣男士たちの様子を見ては編成を考えたりなど、頭が使う仕事をずっとしているような気がする。
一応睡眠は取れているのだが、寝ようとすればするほど頭が冴えていて、読書をして気がついたら寝ていた……というような規則正しい睡眠時間とはいえない事象が続いている。
時間はわりと早めに起床する。
ふと目が覚めるのだ。目を覚ますと二度寝には中々できない。もうそういう癖がついている。
その代わり、昼食を取ったら休憩がてらに仮眠を取っている。

「私自身はわりと普通なんだけど、体調が悪いように見える?」
「そうだね。朝も早く起きているようだし、ちゃんと眠れていないのでは?」
「一応仮眠は取ってるよ、昼過ぎに」

そう言うと、ふいに長義の手が頬に触れてきた。
私は驚いて彼を見る。少し温かい。
頬を触り、額に触れてくる。どうやら熱がないかどうかを見ているようだ。
手を離すと「確かに、熱はなさそうだ」と顎に手を当てて何か考えているようだ。

これで普通に接しているんだから、イケメンはたまに罪な存在だな、と思う。
平常心を保つのに精一杯だ。
身体が少し火照ってきているような気がするので、それが発熱だと勘違いしないでくれてよかったと心の奥でそっとなで下ろす。

「一度、薬研藤四郎に見てもらった方がいいんじゃないか?」
「あの子は医者ではないんだけど……まぁ、そうだね。念のため政府に足を赴いてみますか」
「政府まで行くのか?」

本丸にも一応私のような一般の人間が治療する道具はあるが、それでも簡易的なものだ。
私が審神者になった時、政府職員から「致命的な怪我や病気などにかかったら政府機関の医療施設に相談するように」と、言われたことがある。
実際、そこで治療したらどんな大けがであろうと病気であろうとだいたい治っている。
しかもそう時間もかからない。
新しい技術が進歩して、人類もそう簡単には倒れないようになっていた。

「一応、政府から何か身体の異常があれば医療施設に相談しろって言われたことはあるからね。実際、昔はよくお世話になったよ」
「へぇ……なるほど。なら、誰か護衛に連れて行くといい。誰も決められないなら、近侍の俺が出向こうか?」
「治療に行ってくるって言ったら大騒ぎになるだろうから、長義に来てもらっていい? 近侍は臨時で誰かに頼んでおこう」
「承知した」

臨時の近侍に説明し、私は長義と一緒に政府機関へ向かった。

* * * * * *



ゲートをくぐり、総合案内所から医療施設へと向かう。
医療施設は人が多かった。それもそうだ、最新鋭の技術を使えるのはこの機関のみだ。
民間でも一部は開放しているが、患者のステータスによっては、本格的な医療技術でないと治療ができない者もいるので、仕方がない。
受付に事情を説明すれば、すぐに案内してもらえた。
この治療には一人で受けることになっていて、付き添いは外で待たなくてはいけない。

「軽く検査を受けた結果、相当な疲労が溜まっているようです。30分ほどで治療が終わるかと思われます」
「そう……じゃあ30分くらい、長義は適当に時間をつぶしてくれる?」
「いや、特に寄りたいところもないし、待合で座って待っているさ」
「お小遣いがないなら、渡しとくよ?」
「何を言ってるんだ。そういうことではなくてだな……!」
「冗談だよ、冗談。金欠でどこにも行けないっていうのなら渡すつもりでいたんだけど、金銭管理にも厳しい長義さんには無駄な心配でしたね」
「全く……

はぁ、とため息をつく。それに小さく笑ってしまった。
彼はお金があっても滅多に万屋に行くことはないので使わない。
しかし、30分待つのは結構辛いと思う。
私自身、10分くらいで終わるだろうって思ってたので予想が外れた。

「俺の心配より、早く治してくれ」
「うん、じゃあ行ってくる」
「ああ。行ってらっしゃい」

私は案内人に続いて個室に向かう。
長義はその場にあった椅子に座り、見届けてくれた。

「では、安静にしていてくださいね」
「わかりました」

担当の人が端末を操作していく。
私はベッドに体を預けて、ぼーっと天井を見る。

私はこの時間はどうも好きになれない。
時間はあっという間なのだが、その間の記憶が飛んでしまうからだ。
そして、変な感覚になり、馴染むのに多少時間がかかるのだ。

「では、ゆっくりお休みください」

担当の人が準備を整ったのか、扉を閉めて立ち去っていった。
私はAIの指示に従い、目を閉じた。次第に意識が遠のいていく。