【ファン風】認めんぞ

育児でのトラブルと受け入れ難し学校潜入なお話。ほんのり👊💥☄️味。


死は何時だって隣り合わせでいたが、それ以上に老いぬ体は武を極めるのに適しており、何より自分だけ老いず周りに置いて行かれる孤独感は常に纏わりついていた。
そんな孤独の中、自身と同じ老いず何より自分を負かした出雲風子との出会いはファンの生き方を劇的に変えた。強者との闘いに血沸き肉躍る。心が興奮冷めやらぬ昂りに酔いしれる感覚に浸れるものだとその時は疑いもしていなかった。

ファンなりに抑えている気迫は生徒たちを怯えに怯えさせていた。
出雲風子の母国である日本。その学び舎で体育教諭として潜入任務を半ば謀られたかたちで協力しているファンの額は終始血管が浮かび上がっている。
だが、教え学ばせる面に置いては至極真っ当に熟し、生徒の細かな機微でさえ気付くので雰囲気と顔は怖いが彼の先生としての評判は上々だった。
「何故オレはこんなことを……
ぶつぶつ恨み言に近い愚痴を零しつつ廊下を歩いていたファンはふと窓の外を見下ろした。
透明な窓ガラスの先、随分と楽しげに笑うシェンと同じく実に嬉しそうに顔を綻ばせたムイが一緒に並んで歩いていた。
その二人の姿を見た途端、ファンの心に渦巻いていた苛立ちや不愉快な気持ちがすっと凪いていく。知らず立ち止まり此方の視線に気付く気配の無い背中を見えなくなるまで眺めていたファンはらしくなくぼそりと呟いた。
「いっちょ前に色恋に現を抜かしおって。そんなに楽しいか此処の腑抜けた生活は……
その目つきが悪いと揶揄されるファンにしては優しすぎる眼差しは誰にも見られていない、筈だった。
「やっぱり学校でのそういうのって楽しいじゃないですか」
憧れますよねー、とファンの隣にいつの間にか立っていた風子が明るい口調で述べる。
視線だけ風子を見遣ったファンが視線を前に戻す。
「いつからいた」
「今さっきです。やっぱり大事なんですねシェンさんのこと」
殊更和やかな声色で言葉を綴る風子にファンは鼻で笑い、苦虫を嚙み潰したようにされど認めたくは無いが認めざるを得ないといった言葉を吐き捨てる。

「──26年間寝食を共にすれば嫌でも情が移る」

そんなファンの言葉に風子がやんわり笑ったのが非常に面白くなかったのか彼は彼女に向き合いすわ悪人面よろしく笑いながら指差した。
「キサマにもな」
時間の長さではお前の方が上だ。そう付け加え呆然としている風子を残してその場から立ち去ったファンの心は久々に清々しいものであり、少しだけ時間を置いた風子は「あ、死合うって意味でか」とひとり納得したのだった。