【カミ東】不意打ち御法度

ナチュラルに付き合っている🔪🍮前提で🍮さんが🔪様を誘うお話。匂わせ程度で致しておりません。

何の前触れもなく浮かんだ其れに特に深い意味なんか無かった。
ピッタリ隙間なく隣に座り宵闇の瞳を真直ぐレンタルした映画を流しているテレビに向けているカミキリさんをチラリ見下ろす。丁度映し出される濡れ場シーンに昨晩もとい今までの事を思い浮かべる。
ものの見事にカミキリさんから誘う光景しかパッと思い浮かべず、そもそも自分から誘った事はあったかと頭の中の引き出しを片っ端から引っ張り出した。
「(……無いな)」
実にあっさりとした結果に軽く握った手を口元に添える。
もう一度、テレビに映る中々情熱なシーンを顔色一つ変えずじぃーっと膝を抱え観ているカミキリさんを盗み見てから頭の中に思い描いていた事を実行に移した。
右手をカミキリさんの背中から回すように伸ばして、そのままカミキリさんの頭を自分のもとへ抱き寄せるように引き寄せた。うんと近くなった距離を利用して前髪越しにこめかみにキス。ついで伸ばした左手でカミキリさんの左手に指ごと絡ませれば不思議そうに見上げてくる大きな目とかち合った。
どうしたの?と目で訴えかけてくるカミキリさんに仄かに艶のある声を意識して耳元で囁いた。
「したいんだけどなァいい?」
濡れ場のシーンが終わり豪快な爆発音が部屋の中に響き渡る。
暫し無言で見つめ合う。すると、カミキリさんは表情を変えず、丸い瞳を数回瞬かせたかと思えば一気に部屋の隅まで飛び退いてしまった。瞬間、野生動物が距離を取る姿が重なる。威嚇とまではいかない。決して此方から目を逸らさず、やわっこい髪をぶわっと膨らませ、もう後ろに下がれないのに壁に背中を押し付け後退るカミキリさんの姿に頬を掻いた。
「(ありゃ?イヤだったか?)」
不味った。申し訳ない気持ちが波紋となり胸の中に広がっていく。らしくない事をするもんじゃない。そもそも相手にその気が無かったら迷惑のなにものでもない。
何処かで期待していた分、落胆する自分を自虐的に嗤う。だけど、気まずい雰囲気のままにしたくなくて出来る限り何てこと無いように部屋の隅から動かないカミキリさんに声を掛ける。
「ごめんな〜しないから戻ってk」
「スルッ!」
最後まで言い切る前に視界がカミキリさんの甚平にジャックされた。
多分、検証動画が流れるならコマ送りで目にも留まらぬ素早い動きで部屋の隅から自分の顔面に向かって飛び掛かるカミキリさんの映像が流れている。というか情緒どうなってんだ。あれだけ距離を取ってたのはなんだったの。
いつ時かのように此方の頭を胸にしまい込み抱き抱えてくるカミキリさんから一先ず嫌われていたり引かれていたりする雰囲気は感じない。だけどよォ、そろそろ降りて欲しい。それが無理なら締め付ける力を緩めてくれ。このままだと息がそれこそ文字通り詰まる。
ギブギブと、カミキリさんの背中を叩く。
「嫌だ、スル……
「分かった分かったって。する、するから、一旦離れt」
「嫌ッ」
その後、カミキリさんが落ち着くまで掛かった時間は丁度流していた映画が終わるのと同じだった。