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豆炭々炬燵
6167文字
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訳アリ心霊マンション
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【東←モブガキ】カブトムシ味の夏
モブガキ(2種類)が🍮さんと一緒にカブトムシ取りするお話。夢小説っぽさがありますご注意。
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【人間ver.】
木漏れ日揺れる森の中、降り注ぐ蝉の大合唱を駆け抜ける足は急かす気持ちに比例してどんどん速くなっていく。
「おーい、待てやクソガキー。一緒にカブトムシ捕まえようぜー?」
「く、来んなー!?」
木の根がボコボコせり出し、小石や岩が転がっている山道は履きなれたスニーカーでも走りにくいってのに
…
。
どれだけ離せたか振り返った先、今後方から追い掛けてくる相手の足元を見た瞬間、なんでそれで走れるんだよ!と怒りが籠った疑問の言葉が無情にも山の中にこだまして行った。
「やったぜ、大漁大漁~」
どこを見てもだだっ広い自然だけしかない田舎のばあちゃん家に遊びに来た日からずっと裏山で遊んでいた。
はじめは電波無くてスマホでゲームも出来ないし、動画も見れないしでくっそつまんなかった。早く冷房ガンガン付けた涼しい部屋でベッドに寝転がりながらスマホいじくって漫画を寝ころびながら読みたかった。
ここには仲のいい友達なんていないから一緒に遊ぶってのも出来ない。ほんとつまらない。
って、拗ねていたらじっちゃんがカブトムシトラップを裏山の木に仕掛けてくれたみたいで、昨日眠たい目を擦りながらトラップの場所に連れて行かれた。着いた途端、眠気なんて吹っ飛んだ。トラップに引き寄せられたカブトムシが沢山いる光景に思いが声になって口から出て行った。
「すっげー!いっぱいいる!?」
つやつやな体。かっこいい角。掴んで見ているだけで興奮する。自分の住んでいるとこじゃ精々虫かごに入って売られているのしか見てないから、虫かごに入っていない自然の木にくっ付いて動く姿にとても感動した。
興奮気味にカブトムシをトラップから引き剥がして虫かごに入れている俺の頭を撫でながらじっちゃんは「作り方教えっちゃろか?」と笑って聞いてきた。
俺は首が捥げるんじゃないかってくらい頷いて、カブトムシトラップの作り方を教えてもらった。
次の日からトラップをせっせと作っては仕掛け、カブトムシを捕るを飽きることなく続けた。
「おっきいやつだけ残して、あとは逃がす」
仕掛けたトラップを順繰り回って選別したカブトムシを虫かごに入れていく。トラップに引っ掛かったやつ全部を入れるには虫かごは小さすぎるし、別にそんなにいらない。トラップにどんなやつが引っかかっているかのドキドキ感と、大きいやつがいるかなのワクワク感がいいんだ。
それに捕りすぎは良くないってじっちゃんに言われてたから捕まえるのも程々にして、と。虫かごの蓋を締めた音に重なって、後方から枝を踏み鳴らした音に気付かなかった。
「おいそこのクソガキ! カブトムシ捕まえて売りに行くから手伝え!」
ぶっちゃけ自分以外この裏山に人がいるなんて思っていなかったから後ろから聞こえた声に盛大に吃驚したし、振り返った先にいた木の葉を頭に付け山の中を今の今まで駆けまわっていました感を出している、おね、いや、お兄さん?を見てその場から数センチ体が浮いた。
「な、なんだよいきなり!?ここは、ばあちゃんの山なんだぞ!なに勝手に入ってんだよ!」
吃驚したのを誤魔化したくて声が大きくなる。ここはばあちゃん所有の山。今目の前にいる人は誰なのか知らないが勝手に家に上がられたような不快な気持ちに顔を顰めてしまう。
「ばあちゃん?あー、それって○○とこの△△さんだろ?ちゃんと許可もらって入ってっから」
カラカラ笑うその顔がムカついて仕方なかった。もし、本当なら俺がどうこう言う事なんかできない。
だけど、俺の中にあるいっちょ前に俺がここを守るんだー!の気持ちが雄叫びをあげる。
「うっせー!そんなの知るかよ!ここから出てけえ!」
振りかぶった右拳を振り下ろしながら突進した。高いところにある顔を目掛けて放った拳は虚しく空振りする。
俺のパンチを避けた相手の全然緊張感のない表情に恥ずかしさと怒りの感情がどんどん膨らんでいって。もう意地になって一発入れるんだと我武者羅に突っ込んでいた。
「なあ、お前の虫かごカブトムシいっぱい入ってんじゃん?どっか穴場スポットでもあんの?教えてくれよー、んで捕まえさせろや」
避けながら淡々と話し掛けるところとか、俺のパンチを避けるのに合わせデコピンしてくるのとか、なんか悔しくてたまらなくて
…
。よろめいて地面に豪快に顔から突っ込んだ後、後ろから気遣ってくれる声がどうしようもなく居たたまれなくて
…
振り返らず走り出していた。
「教えねーよ!バーカ!!」
俺自身かっこわるい捨て台詞。滲む視界を拭って駆けている時、背中を掴むみたいに伸びてくるはっきりと聞こえた声に背筋が凍った。
「なんだ元気じゃん。こちとらカブトムシ捕るまで帰らないからな」
「う、うわあああああああ!!」
まさに獲物を逃がさんとする捕食者の顔。
それを見た俺の情けない悲鳴は山中に響き渡った。
めげずに逃げ回っていたけど、結局捕まってしまい渋々俺が仕掛けたトラップを順繰り一緒に周る羽目になった。トラップを仕掛けた木は軒並み大盛況。わんさか集まっているカブトムシを笑いながら虫かごに突っ込んでいく大人の姿に若干引いた。
「おっほほ~。大漁大漁。いやー、朝から山に入って探したんだけどカブトムシ全然見つからなくてさ。助かったぜ。そっかそっか、今度から罠仕掛ければいいのか」
既にカブトムシで満ち満ちている虫かごからキシキシ音が絶えず聞こえている。俺ははじめてむっちり狭いところに押し込まれているカブトムシの姿を見て憐れみと恐怖を抱いた。
「っよし!んじゃ、次行こうぜー」
「おい、引っ張んなって」
もう逃げないのを分かっててか無遠慮に俺の手を掴んで引っ張る力にげんなりする。
ずんずんと山の中を歩く、カブトムシを捕って売るという明らかにヤバそうな大人の背中を見て諦めの溜息を吐いた。
ふと、掴まれている手を見下ろす。俺の手を掴む大人の手。すっぽり包まれる感覚に、汗ばんでじっとりする肌の感じに、何か目と意識を逸らしたくて俺は見当違いの方向に進んでいる相手の手を引っ張って次のトラップの場所に連れていく。
そうこれは引っ張っていくために握り返したんだ。別に、手を握りたいとかそうじゃない。って自分自身に言い聞かせている間、あれだけ五月蠅かった蝉の声の代わりに心臓の音がやたら大きく聞こえてどうしようもなかった。
「こんなもんか」
「うわー
……
」
恐怖ぎっちぎち虫かごに詰められたカブトムシの塊に思わず声が出た。
頗る嬉しそうな大人の顔がまた恐怖心を煽るのに拍車を掛ける。
トラップを周っている間、別に聞きたいわけじゃないのに色々聞かされては聞いてくる相手の正体はやっぱりよく分からない。だけど、話しているとそこまで悪い大人じゃないかって思い始めた。
手ごろな倒木の上に二人揃って腰かけて、手の中にある今日の収穫物を眺める。
俺は徐に自分の虫かごからカブトムシを捕りだして、近場の木に引っ付けた。
「んだよ、逃がすなら私にくれよ」
ぶーたれる声に俺は振り返りながら応えた。
「誰かさんがたくさん捕るからその分逃がしてんの。じゃないと来年捕まえる分が少なくなる」
「
……
そんなひっでー奴いるんだな」
「あんただよ!?」
何処まで本気なのか冗談なのか分からない。気持ちを切り替えて、これは絶対逃がさないからと虫かごを胸に抱きしめている大人の隣に腰かけて、ずっと頭にくっ付いたままだった木の葉を取ってやった。
目をぱちくりしてるもんだから、取った木の葉を見せてやれば静かに笑う姿にまた胸の鼓動が五月蠅くなる。
それを誤魔化したくて急いで倒木から腰を上げれば、タイミングよく相手も腰を上げた。
「そろそろ帰るわ」
「やっと帰るの?」
「うっせ」
ヒグラシが鳴き始めた山の中、カブトムシのひしめき合う音が遠ざかっていく。
知らず寂しい気持ちが募り知らず胸元を握りしめて大声を出すべく大きく息を吸った。
「またなー!変な人ー!」
ブンブン手を振って見送れば、虫取り網を掲げながらこっちに振り返った。
「私は変な人じゃねー!東雲薫って言うんだー!」
一頻り叫んだあと八重歯を覗かせながらニッカリ笑う相手を見て俺は夏の暑さとは違う熱で顔が火照っていくのが分かった。
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