【デデカビ】小さくて大きな存在【小話詰め合わせ】

※新作ゲームのネタバレ含みます※
時系列があるようなないような。大体ふせったーの妄想集めてまとめた感じです。

◇開けかけた蓋

只ならぬ気配に臆することなく乗り込んだ巨大なエレベーター。無機質な音をたて降りていくつれ、周りの温度が上がっているのか遠くに見える鉄の壁が揺れ動く。
程なくしてエレベーターが止まった先、煮えたぎる溶岩の海の中に浮かぶ鉄の島に何者かが背を向け佇んでいる。それはカービィにとって見知った背中だったが、振り返り見た顔には馴染みのない仮面を被っていた。
体を小刻みに震わせ両手で仮面を押さえ唸っていたかと思えば、二本のハンマーを振りかぶりカービィに襲い掛かった。吹き荒ぶ雪と凍てつく氷に満ちた場所で再会を果たした時と同じく正気とは思えない様子にカービィは覚悟を決め戦闘態勢に入った。

重たいハンマーの連撃を避けつつ隙を見て反撃をし優勢だったカービィだったが、相手がハンマーを手放した瞬間形勢が徐々に傾き始め、気付いた頃には浮島の端に追い込まれ逃げ場を失ってしまった。
荒い息遣いと共に漏れる唸声。時折、何やら言葉を発しているようだが不明瞭な言葉は途切れ途切れでカービィには聞き取れなかった。途中あの厳つい仮面が取れても血走った眼光が獲物を逃すまいと睨めつけている。
見慣れない歩き方で一歩、また一歩と唸声を上げカービィを追い詰めていく。少しでもバランスを崩せば下でグツグツ煮え滾るマグマに仲間入り。そんな恐ろしい端にまで追い詰められてしまった。
カービィが不安げな面持ちで後ろを振り返る。マグマの熱さで思わず目を眇めると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。視線を前に戻したカービィの目は輝いていた。
ちょっとおかしなことが立て続けに起きていたが、この名前を呼ぶ声はとっても聞き覚えのあるものだ。
いつもの調子で呼ぶ相手にカービィが元気よく手を上げるもそれはスルスルと下がってしまった。
四つん這いだった状態を起こし、沸き立つ衝動を抑え込んでいるのか肩が震え上下に動いている。
「カービィ遅いじゃねえか……待ちくたびれたぜ……
未だ怪しく光る赤い目は虚ろげにカービィを見下し続けている。
相手は、デデデは先程までの荒々しい振る舞いをしていない。だが、カービィの目には普段のデデデとは違う違和感に知らず身構えた。
それが気に入らなかったのか赤い目を伏せながらデデデは一度口を真一文字に閉じた後、胸に犇く感情と頭の中に散らばった記憶のひとつひとつに当てはまる言葉を探し選び紡いだ。
「オレ様はな、カービィ、お前がいない変な世界に飛ばされてどうなったと思う?」
「どこ探してもいねぇ、一緒に飛ばされたワドルディ達にも探させたが。探す日が増えるにつれ、どんどんワドルディ達の行方不明者も増えた」
「このままじゃ、オレ様のせいでコイツらがいなくなっちまう!戦うしかない!丁度そんな時、頭の中に偉そうな声が聞こえるようになった。それは日に日に鬱陶しくなる傍らオレ様を試すようなことを言いやがり始めた」
身構えているカービィの手を両手で包み込みながらデデデは続ける。
「いつしか頭の中がそいつの声で埋め尽くされ、気付けばオレ様の意識は瓶詰めにされ手も声すら届かん特等席でオレ様じゃないオレ様の愚行を眺めるしかできなかった」
手の大きさの違いをいい事にデデデの黄色く大きな手がカービィの小さくてピンクの短い手を撫ぜ、そのままガウンの中に閉じ込める形で抱き寄せた。
「二度とあのくそったれな場所から出れねえかと思ったが違ったな」
「いいか? 瓶の蓋は開けようと思えば開けられたんだ。たったひとつ些細な切欠さえあれば」

「それはお前だ、カービィ」

やはりいつものデデデとは違う相手にカービィは焦りまくっていた。
このままじゃ、何だかよくわからないけど良くないことが起こりそうで。
今尚、確かめるように体を撫ぜ深く抱きしめる手付きが、何度も熱の籠った吐息まじりの声で名前を呼ばれる状況が普段のデデデとかけ離れすぎてカービィは動揺する他なかった。
頭を働かせることが得意ではないカービィの視線にあるものが映り込む。
それが何かと分かる前にカービィはするりとデデデの腕の中から抜け出した。そして、力の限りデデデの頭を叩く通り越し振り抜けば、豪快な衝突音を出したデデデ印ハンマーから湯気が立ち上る。
頭を思いっきり振り抜く勢いで叩かれたデデデは上半身をまるで円を描くように揺れ動き、揺れが収まると同時に仰向けに倒れてしまった。
暫しの静寂後、心配げにカービィがデデデの体を2、3度揺するとボーッとした顔で起き上がってきた。
感覚的にも元のデデデに戻ったと確信したカービィが楽しげに笑う。目が赤くない、纏う空気もプププランドにいた時と同じ。呼び掛ければ、再会の喜びも程々に返事を返してくれる。
だが、元に戻って良かったと喜ぶカービィを気付かれぬよう見つめるデデデの瞳は何処か恨めしそうだったのをカービィは知らない。