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豆炭々炬燵
2678文字
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魔法使いの嫁
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【ヨセチセ】伽藍洞に浮かぶ輝く世界
生まれてはじめて安寧を得た痛みに彷徨っていた者のお話。
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眠りが浅くなるにつれ耳から拾う音が明確になる。何となしに寝返りを打ち見上げれば主役を奪われた陽の光がそれでも弱々しく差し込んでいた。主役の座を奪った雫たちが透明な天井に当たり流れ落ちる光景はさながら水底から水面を見上げているよう。
欠けた腕を額に上げ小さく息を吐く。コポリと、見えぬ気泡が水面に向かって浮き上がる錯覚。息苦しくない水中で仰向けになり水底で漂う感覚に浸る。
雨音以外何も聞こえず響かない、欠けた視界で見上げた空は潤い揺らめいていた。
「喉、乾いたな」
ふと水を求め視界を反転させ手を伸ばした刹那、既に空になっている水差しを思い出し体をベッドに沈め枕に顔を埋めた。
天からは絶えず命の雫が降り注いでいる。されど、一度意識してしまった喉の渇きを癒す力を持ちやしない。
「(多寡が水が飲めない程度で死にはしないさ)」
再び眠ろうとしていた矢先のこと。上から降ってくる緊張感が全く感じられない気配に折角沈みかけていた意識が浮かぶ。
一瞬だけ雨の音が近くなり閉鎖された空間に気配が入り込むと同時に遠ざかった。一歩、また一歩。気配が下りてくるたびに伽藍洞の奥で見えない世界が輝きだす。
「(わざわざ雨の中交換しにくるなんて律儀な奴)」
だが、真新しい水を持ってきたのならば有効的に喉を潤すことに役立てよう。
普段通り寝てる振りを貫き通し面倒な気配がいなくなったのを見計らって水にありつく予定、だった。
無音の世界。酷くゆっくり回る世界。弱々しい光の中で空に浮かぶ影に向かって寝床から飛び出していた。狭い足場を駆け上がり一本しかない腕を伸ばし、呪いを受けた手を腕を掴み引き寄せたまま柔らかな寝床に降り立った。
足を滑らせ態勢を崩しても尚、予想していた衝撃が来ないことに疑問を覚え瞼に隠されていた翡翠の瞳が現れ。恐る恐る見上げた先に映る現実に翡翠の瞳が面白いくらい泳ぎまわる。
「(不味った
……
)」
単刀直入に言えばなんて馬鹿馬鹿しいことをしてしまったのか。どうせ足を滑らせ落ちたところで死にはしない。落ちた先にあるのは柔らかであたたかな寝床なのだから大事に至る怪我の類もまま心配いらない。
「ヨ、セフ?」
幸か不幸か。一滴も中身を零さなかった水差しを胸に抱え少し驚いた顔が腕の中から此方を見上げてくる。非常に居た堪れない空気に身を投じ放り投げたい衝動にかられた。
「おはよう」
漸く現状を把握したのか屈託のないはにかんだ顔で言われた瞬間、もう寝たふりがこの先通じないことをまざまざと見せつけられた。
「──
……
っ」
腕を離してそっぽを向いた程度で如何にもならず。
「お水、換えておきますね」
変に察してか突っ込んだ発言をしない相手に苛立ちが募る。挙句、此方から声を掛けるように仕向けるなんて随分いい性格してるよ。空になった水差しを持ち先の礼を真摯に述べた後、階段を登ろうとする相手の裾を掴んだ。
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