豆炭々炬燵
2770文字
Public IT
 

【ペニビル】随意

兄ちゃんの指を舐めしゃぶる道化師の話。
※へー赤ちゃんなのかそうかそうかー。つまりこういうことか?という考えで出来た産物です悪しからず。

大きく口が裂け剥き出しになる不揃いに連なった鋭い歯。唾液の糸が引き生臭い息を吐き。血を滴らせ肉を喰らい骨を砕き貪る姿はまさに捕食者。
しかし、今回ばかりは少々様子が違った。

”アー”と発音する形に開いた真っ赤な口紅を差した口がビルの親指を咥えた。舌全体で親指を包み込みしゃぶる仕草は人間の赤子と大差ない。奥歯でやわく潰し歯を押し返す弾力を楽しんだり、尖った犬歯の先端で皮膚をなぞるのは止めて欲しい。
隠す気なぞ更々ないビルの渋い顔を物ともせず、ペニーワイズは彼の親指を口の中からちゅぽんと引き抜き隣の人差し指と中指を一緒に頬張る。親指より長い指を唇を窄めた状態で根元まで咥え込み、指先ギリギリまで引き抜いた。何往復かして人差し指と中指を口の中から出したかと思いきや二本の間に舌をねじ込み舌先を上向きにさせ人差し指の指先に向かって舐めだした。人差し指が終われば中指を今度は僅かに開いた唇に挟んで撫で上げる。
蠢いていた舌腹のぬめ付きざらついた感覚とは違う、ぽてっとやわく吸い付くような唇は中指の指先に辿り着いた途端、作為的に音を立て離れていった。
五本中三本が涎でべたべたのデロデロ。指通しをくっ付け離せばてらてら光る糸がいくつもできプツリと切れた。ビルの眉間に深い皺がまた一つ増えた。
流れからすると今度は薬指。半ば強引にペニーワイズの立膝の中に押し込められたビルは嘆息する。だが、予想とは裏腹に親指とは真反対にある小指が口に含まれた。
ふっくらした指の腹をペニーワイズが特徴的な前歯で指の腹に沿う形で食む。歯を閉じれば涎で濡れた小指は挟まれることなくにゅるりと逃げ。それが面白いのか浅く歯を開閉させ、逃げるギリギリのところで挟んで潰れた指の腹を舌先でちろちろ擽った。
また指の付け根を舌がなぞり、最後に残った薬指を根元から指先まで舐め上げ、そのまま根元まで一気に頬張った刹那――。ビルに鋭い痛みが走る。
反射的に引き抜きたかったのを必死に抑え込みねめつけた。すると、ペニーワイズは薬指を離さずにんまり口角をつり上げ嗤う。
つりあがったことで見えた歯の形は前歯が特徴的な人間寄りの歯では無かった。それは幾重にも並んだモンスターの歯。やわい人間の肉を食い千切る獰猛な歯。
「賢いなァ。痛みにビックリして手を引っ込んでたら今頃君の薬指は私のおやつだ」
………
薬指を咥えたままこんなに饒舌に喋れるわけない。だが、そんな些細なことをビルは気にすることはなかった。
薬指に食い込んでいた歯が離れ、変わりに歯が食い込んでいた部分を波打つ舌が這いまわる。
しゃぶり吸い付く音と力にビルは何となく察した。血が出ている。でなければ恍惚の表情で舌を這わせ巻き付け吸い上げるのはおかしい。しかも、止める気配が露もない。
結局、ビルの指がふやけるまでペニーワイズは彼の指をしゃぶるのを止めなかった。










「ビル、君にお願いがあるんだ」
「い、いやだ」
「今度からいつでもどこでも気軽に君の指を頬張りたいから」
「(聞こえないフリして話続けやがったって顔」
「左手頂d――

「鉄柵一本じゃ物足りないなら追加するけど?」