豆炭々炬燵
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【ペニビル】たしかにあれは恋だった【+ペニおじ】

ビル「いっそ殺してくれ」



陽の光に照らされてキラキラするコーラ瓶の欠片。緑がかった透明の欠片がやわらかな手の平の肉を裂き赤い傷を作る。滴る生きているという証。それを血が混ざりあうように握り輪になった。
これは約束。所詮子供のやる陳腐で幼稚な事かもしれない。されど、この場に集まった七人の子供たちにとっては神に誓う神聖で至極大切で大真面目なもの。

27年後、まだ”アイツ”が現れたら皆ここに戻ってくる

血でぬめつく手を誰も嫌がらず固く握った。誰も彼も真剣な眼差しで輪を形成している仲間達を見て頷き手を解いた。輪が散り散りに崩れ小さくなって最後に残ったのは二人だけ。
そして、ビルはその場を去ろうとしたベバリーを追い掛け高鳴る感情を彼女にぶつけた。
多寡が子供のままごと染みた行為だと大人は笑うだろう。でも、ビルにとって彼女にキスしたのは気まぐれでも遊びでもない。
純粋で直向きなビルの思いはベバリーに拒まれず、逆に深く熱く受け止めてくれた。血に塗れた彼女の手が愛おしげにビルの頬を撫ぜ包み込む。鼓膜を擽るベバリーの短い吐息にビルは益々口づけを深くしていった。
心地よく何処までも溺れていける。ビルは目を閉じた。視界を閉ざせば絡め合う舌やくちゅくちゅと唾液が混ざり合う感覚と音が強調された。
双方熱っぽい吐息を漏らしたのを合図に重ね合わせていた唇を離す。満たされた気持ちで瞑っていた瞼を開けたビルは言葉を失った。というより、目の前に広がる光景を認めたくなかった。



「いい夢は見れたかい?!ビルゥ~」

白塗りメイクを施した道化師の唇を彩る赤い口紅が乱れ滲んでいる。恐る恐るビルが自分の口許を触り拭う。指先に付いた赤色は如何見ても血の色ではない。
呼吸が速くなり過ぎて上手く息が出来ない。ビルは初めてエディが患っている喘息の苦しさを少し分かった気がした。心が落ち着く気配が全くない。
「(たしか、過呼吸に陥ったら、ビニール袋を――)」
「苦しそうだね? 私が治すのを手伝ってあげよう」
「~~~!?!?」
ペニーワイズの白い右手がビルの顎を掴み上げ、そのまま浅い呼吸を繰り返す口を再び塞いだ。
ベバリーとの情熱なキスはものの見事におぞましいピエロとのキスへとすり替わった。
ビルは口腔内を翻弄されながらも顎を掴んでいる手を如何にか外そうと試みるものの、時間経過と共にビルの手から力が抜け、最後の方は縋りつくようにペニーワイズの腕にしがみ付いていた。
十分堪能したのかペニーワイズはビルの唇をひと舐めして離れた。だが、顎を掴んでいる手を離す気は無いようだ。
ビルは泣きたかった。むしろ泣いていた。目から零れる涙が頬を伝う感触が余計に悲しくなった。あの幸せな膨らみがキスで盛り上がって押し付けられていたのも、拙いながらも求め合いあった大人のキスも、全部が全部――
「すっかり落ち着いたようでなにより」
にんまり笑うペニーワイズにすら抗議の声も上げられないビルは心の中で、ただただ。

このまま息が止まって死ねればいいのに

と、神に願うように呟いた。