【原型蟹】鋏と糸【タマモア】

運命の赤い糸を可視出来るタマトアがモアナの小指から伸びる赤い糸をちょっきんするお話。






鋏で掴んだ時点で分かっていた。こんな禍々しいまでに輝きを放つ糸なんかそうそうあるものではない。
幾つもの縁を切って切って切って。その結果、余計雁字搦めになった糸が我が物顔で小指に括りつけられている。切ってきた糸の先にいる輩の顔を見たことはないが、この糸に限っては何処に繋がりどんな相手なのか分かる。
重々にそれこそ痛いくらいに。
小枝にも満たない細い人間の小指から伸びる糸の先、反対側には人間達が恐れ慄き恐怖する鋏。無機質な体の一部に巻き付くそれは一見して解けるように見えて解けやしなかった。細かな作業に慣れた鋏の切っ先から糸がすり抜けていく。解けない。縁を解くことはできない。
ならば切るしかない。縁は解くものではなく切るもの。

魔物と人間が添い遂げる物語が何処にある。
魔物には魔物の、人間には人間の世界がある。人間は夢を見て、魔物は夢を見ない。魔物は夢を見ない、見てはいけないイキモノだ。



チョキン

あれだけ切れなかった糸が呆気なく切れた。大概の予想はつく。気にも留めない些細で如何でもいいことだ。

「じゃあな嬢ちゃん」

霧散していく糸をそっと手繰り寄せ人間の真似事のように最早何も無くなってしまった鋏に唇を寄せた。