砂を蹴り上げ縺れる足を気合で態勢を直し、後方からリズミカルに鋏をカチカチ鳴らす魔物から必死に逃げ回る。塒の主にして狂気と無邪気さが入り混じる遊びを提案した大蟹の目が大変愉快そうに弧を描いていた。
勝手知ったる場所とまではいかなくとも全然知らない未開の土地とまではいかない。悲鳴をのみ込み相手よりかは小さな身を活かして物陰に隠れた。なめらかな肌を伝う冷たい汗を拭うのも忘れモアナは上機嫌に獲物を探すタマトアの隙を窺う。
とてつもない気分屋であるがため、出ていく瞬間を決して間違えてはならない。もし、今の愉しげに獲物を追詰めているタマトアに僅かでも残忍で残酷な色が混じろうものならただ事では済まなくなる。まだ歌に乗せモアナが隠れていそうな岩を一つ一つ鋏で摘み戻している間ならいい。問題なのはそれが何時まで続くかだ。
現にモアナにとって洒落にならないこの遊びを唐突に持ちかけた上に勝手に始める相手の心情は図り切れず、もといタマトアの心と頭の中は一生読み取ることは出来ないだろう。
しかし、諦めずタマトアと塒の入り口の距離と位置を図り、モアナは自身の足の速さで逃げ切れるか何度も頭の中でシュミレーションした。
「Uh~、何処に隠れたんだァ~?」
知らず身を乗り出し過ぎてしまっているモアナに気付かないフリをしてタマトアはまた彼女が隠れていない岩の一つを摘み持ち上げる。
よぉし嬢ちゃん鬼ごっこをしよう
怖~い鬼役は俺が引き受ける、なに逃げ回る相手を追いかけ追詰めるのが愉しいなんざこれぽっちも思っちゃいねぇよ?
そぉら鬼ごっこのはじまりだ逃げろ逃げろ、鬼の目を盗み鬼の手を掻い潜り逃げ切れ逃げ切れ
じゃないと…
おやおやおや?
気付けば壁際に追い込まれてるなァ
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