ひろっぷ
2021-11-09 19:19:53
5367文字
Public 第五 ハス探
 

じゃしんとぼく

支部に上げたものそのままです。ハス探。


【きっかけ】

ただ僕はひたすら戸惑っていた。
あの邪神は何故僕に構うのか。何か彼の怒りに触れてしまったのか。それが気になってまともに会話をしようと思えなかった。
のらりくらりと得意の愛想笑いで誤魔化して過ごしていたものの、この荘園では限界があるらしくあっさりと見つかってしまう。
それから彼に連れられて向かった庭で問い質され、観念して正直に話すとあっさりと答えが導き出された。
『そなたの中のモノが気になってな』と。
中?と聞くと触手で腹を突かれすぐに理解した。
磁石だ。

「磁石?」
『うむ。それは外から来た物故、興味があるのだ』
……殺すの」

口から出たと同時に理解して顔が青ざめた。彼ならやりかねない。いや、ハンターなら皆。
けど強張った僕を他所に彼はケラケラと多数の目を弧に歪ませて笑った。なんで、ここで笑うのさ。

『それも一興だがな。それはそなたが一生を終えてからでも構わぬ』
「へ」

邪神というものは気紛れだ、といつかの祭司は言っていたように思う。猫かよ、と突っ込みたかったが言わないでおいた。
では何故僕に構うのか、という問題はまだ解決できていなかったからだ。

『我といて、そなたはどうだ』
「どう、って質問の意味が
『ふむ

思案する素振りを見せるや否や、彼の触手が伸びて僕を捉えた。抵抗する暇もなく間近に迫った彼の体にぎょっとしたけど、次の言葉でそれどころではなくなってしまう。

『思案する隙は皆無であろ。我の側に居れば無駄な知識が増える事はないぞ』
「?知識……!!」

どうしてこの邪神は知っている。どうして今まで僕は気づかなかった。確かにそうだったのに。
一人になると考え込む癖があり、その時に誰とも知れない声が頭に響く。
振り払っても、別のことを考えようとしても、その声が消える事はなく、時にそれは仲間といる最中でも起こり、僕は度々迷惑をかける羽目になっている。それが彼といる時はない。日常でも試合でも。思い返せばこの邪神のお陰だったのかと罪悪感が勝ってくる。
現に今も落ち着いている。

「何が望み。僕は金持ちでもないから返せる物はないよ」

貸しを作ることだけはしたくない。世の中ギブアンドテイク、そんなものだ。
けれどこの邪神は僕の警戒心なんてものともせず。

『いらぬ。傍にいるだけでよい。生を全うしろ。それが終えられれば後は好きにさせてもらう』

あっけらかんと即答される返事に僕は開いた口が塞がらなかった。無数の目がこちらを見下ろしているが、殺意はなくまるで慈愛の目。
ぼっと顔が熱くなるのが分かってしまう。こんなの、こんなのまるで。
この邪神は本当に何を考えているんだ。いや、もしかすると何も考えていないのかもしれない。なんなんだ。なんなんだこいつ!

『部屋はいつでも来るといい』
「はぁ!?行かないよ!!」

こんな態度をとってしまったが、数日後には彼の部屋に入り浸っている事をこの時の僕は知る由もなかったのであった。