不破
2023-01-25 21:46:32
3425文字
Public 空戦
 

#12




 目を開いた。覚えのない天井が目に入り、上体を起こす。と、右腕に鈍い痛みと違和感があった。目をやれば、そこにあるはずの自分の腕がなく、代わりに金属とゴムで出来た人形の腕のような物があり、目を見開いた。右腕を動かそうとしてもその感触はなく、代わりに腕の形をしたそれが動く。自分が意図した動きを意図した通りに行うそれが義手であることを理解したのは十数秒の後で、混乱する頭の中からようやっと記憶を手繰り寄せることが出来た。

「そうか……俺は腕を……

 斬り落とされた。あの黒い男に。メルゼブルク国境のゲートを破り、あの男の非道な行いを止めようとした結果、救うべき命すら救うことが出来ず、おまけに自身の右腕をも失ったというわけだ。

……くそっ!」

 言いながら拳でベッドを殴りつけた。咄嗟の行動に反応したのは利き手である右腕につけられた義手の方であり、伝わってくるはずの痛みもなく、ただ力ない衝撃音だけが響いた。