不破
2022-12-09 00:45:17
5125文字
Public 空戦
 

#11


 けたたましい警報と無数の足音、怒号が近づいてくる。
 メッカ。サイード軍が本部を置いたその都市に単身で舞い降りたテイルは、敵襲を知らせる警報が響き渡る中、ヒールを鳴らして歩いて行く。敵地、それも敵軍が本拠地とする都市の真ん中を隠れることもなく、堂々と、優雅に。およそ鏖殺を命じられたとは思えぬほどにこやかな表情で。

「止まれ!」

 いくつもの声がそれぞれの口から放たれた制止の声が耳へ届いた時には、既に数多の敵兵が目の前に立ちはだかり、行く手を塞いでいた。にこやかにその光景を見据え、テイルは悠長に口を開いた。

「あはは、こんなに沢山の人に向かえて貰えるなんて嬉しいなあ」

 長い袖で口元を隠し、肩を揺らして笑いながらテイルは言う。こちらを捉えている数多の銃口や刃の切っ先に血の色の両眼を細めて、続ける。

「僕等は欲の徒、お腹が空いた」

 歌うように唱え始めたそれは魔術の詠唱。それに呼応するようにして、テイルの影がうぞうぞと蠢き始めた。

「食べよう。血を啜り、骨を噛み砕いて」

 蠢き始めた影の一部が様々な形へ姿を変えてテイルの足元から広がり始め、テイルはその上で笑う。

「恣に平らげよう」