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不破
2022-08-17 22:24:01
3918文字
Public
空戦
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#8
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2
リゲル隊が有する新型の航空母艇であるイリアンソスの甲板。アンタレス・オラクルはヘルメットを手に、遠方に見えるバグダードに目を凝らした。
サンセットピンクの短髪に赤い巨星のような目をした彼だが、その目は気疲れしたようにくすんでしまっており、宿した色とは裏腹に爛々と輝いてはいない。メルゼブルク軍で中尉という立場にある彼は、ヴィン・ハートフィールドが統括するシャウラ隊の2番機だ。肩に掛けて羽織っている隊のエンブレムをあしらったフライトジャケットがその証である。
『バグダード領空まで10分。総員、戦闘配置!』
響いてくるアナウンスに、アンタレスは目を細めた。
妙だと思った。敵国の飛空艇がここまで近づいているというのに、バグダードに大きな動きがない。通常なら警報が鳴り響き、
緊急発進
スクランブル
で迎撃に上がってくるはずだ。この時点でその動きがないというのは不可解だった。
『シャウラ隊の発艦後、フォーマルハウト2を射出します。制空権を確保し、イリアンソスで接近。リゲル隊が降下します』
ブリーフィングで共有された内容の確認が行われ、甲板に並ぶシャウラ隊の機体に並ぶように、自身の機体を呼び出す。
虚
ザ・ヴォイド
と呼ばれる自らの魔術式を展開すると、自分の背中側に美しい真紅の機体が現れる。
スコーピウス-αと名付けられた機体で、原型がわからないほどだが旧世界に存在したSu-47という機体に改造を施した物である。
「敵の展開が遅い。シャウラ5、バグダードの状況をモニタ出来ないか?」
『了解。迎撃機、空兵はまだ出てきてませんが、対空砲は起動してるみたいです。ハーディ准尉、モニタリングのデータを共有しますね』
ヘルメットを被り、愛機のコクピットへ続く
舷梯
タラップ
を上りながら、通信を介してシャウラ隊の5番機を示すコールサインへ呼びかけると、大人しい調子だが物怖じしない雰囲気の少女が返してくる。
セシア・G・カンパニュラ伍長。シャウラ隊で唯一、電子戦を担当するパイロットであり、直接的な戦闘よりも味方のサポートを行うことの方が多い立場ではあるが、彼女のサポートに寄ってもたらされた成功は幾度もある。
『助かるわ。こっちじゃあまりハイレベルの電子戦は出来ないから、頼りにさせて貰うわね』
『いいい、いえこれぐらいは
……
へひっ』
通信を介して聞こえてくるハーディ准尉の言葉に、セシアがおどおどした調子で答える。照れているのか怯えているのかわかりにくい反応だが、不愉快に思っているわけでないことはわかっているので、アンタレスは無視した。
『誘われていると思うか? シャウラ2』
「
……
少なくとも、おれはそう思います」
響いたヴィンの問いに短く答える。とはいえ、誘われているのだとしてもこちらは予定した作戦を行い、状況に応じて臨機応変に動くだけだ。返した答えに、ヴィンが「ああ、私もそう思う」と返してくると、続ける。
『シャウラ1からシャウラ2及びシャウラ3、発艦後バグダードへ向かって飛ぶ。敵の誘いに乗る形となるが、それよりも速く敵の心臓を抉る。電撃戦だ。シャウラ4はリゲル隊と共にバグダードの制圧へ、シャウラ5は発艦後上昇、戦況を逐一報告せよ』
ヴィンの指示に「了解」と返し、点灯した計器のチェックを終える。スロットルをゆっくりと上げながら、その時を待った。
『バグダードまで距離4000。風向130度、風速18ノット、発艦に支障なし。シャウラ隊、発艦を許可します』
と、ハーディ准尉の声が響き、ヴィンが「了解」と返した。ヴィンの黒い機体がイリアンソスの甲板から撃ち出されるようにして滑り出し、大空へと躍り出ていった。HUDに「STAND BY」と表示され、アンタレスは小さく口にする。
「シャウラ2、発艦する」
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