『メルゼブルク皇帝グリーディア・L・メルゼブルクの政策に抗議し、即時取り止めを要求する。これが受け入れられない場合には軍事介入行動を行い、強制的にメルゼブルク軍の行動を停止させることも辞さない』
たったそれだけの文章で、平和というのはいとも容易く揺らぐ。そんな現実のつまらなさを再確認しながら、グリーディアは文書が表示された端末を閉じた。
赤い飛空艇が飛び去った後、それと入れ替わるようにしてベルリンの空へと現れた灰色の飛空艇を見上げながらも、不穏な気配を乗せて駆け抜けていく風に外套を揺らす。
『こちらサイード連邦首長国軍第3強襲連隊である。我々に攻撃の意思はない』
スピーカーを通して響いてくる警告に煩さを覚えながらも、グリーディアは失笑した。
攻撃の意志はないなどと言ってはいるが、下らない建前だ。こちらの返答が望まないものであればそれと同時に攻撃して強制的に従わせるつもりだろう。サイードはメルゼブルクよりも小さな国だ。戦うとなれば短期決戦で決着をつけてしまうのが定石。帝都であるケーニヒスベルクではなく、IT、電子魔導工学、インフラなどを扱うベルリンを標的としたのはそのためだろう。
「銃を寄越せ」
背後で端末を立ち上げて指示を出していたロゼが端末を閉じたのを察してそう言いながら左手を差し出した。
「どうするつもりだ?」
そう問うてくるロゼに不敵な笑みを向けながら、差し出されたライフルを受け取ったグリーディアは長い銃身をぐるりと翻してグリップを握ると、手元のレバーを起こしてコッキングして構えると、応えた。
「……面倒を省く」
遠方の空に見える灰色の飛空艇へ向けられた銃口の前に黒い光が収束していく。収束した黒い光が球となり、林檎程度の大きさとなると同時に、グリーディアはライフルの引き金を引き込んだ。それと同時に鳴り響く銃声が轟音のように空を裂き、黒い光が一直線に駆け抜けた。それは灰色の飛空艇に着弾すると同時に炸裂し、黒い爆炎を上げてホログラフのように輝き、飛空艇が黒煙を上げた。続けざまに爆音と響かせて火の手を上げ、ぐらりと傾いて高度を落としていく飛空艇を鼻で笑いながら銃を下ろし、踵を返しながらロゼへと投げ返した。
「……開戦か」
「ああ。売られた喧嘩は買うものだろう?」
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