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冬灯夜
2016-09-26 23:59:58
7147文字
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TOV
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りれーレイエス
TOV レイエス+α
・スピカさんとのリレー小説
・空白で書き手入れ替え、スピカさんスタート
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2
先にお店に行ったver
スピカさん→冬灯夜の順
大通りを抜けて角を左に。美味しいと評判の甘味処を右に。人通りはぐっと減り、例の店はそこにぽつりと佇んでいる。
その店を覗いている人もいないわけではないが、ほとんどが通り過ぎ、関心を払う人はいない
……
いや、一人だけ、店頭に立っている。珍しいと目を凝らした瞬間。
「
……
嬢、ちゃん」
捜していたまさにその人が、そこにいた。思わず零してしまった声を落とさぬように口を塞いだが、幸い聞こえていない。当たり前だ、十分距離があるのだから。一体どれだけ動揺しているんだろう。
彼女
――
エステリーゼは食い入るように一点を見つめて、動かないでいる。そっと隣に近付いて、見ているものを覗き込んだ。
青く、碧く輝く水面。その鮮やかな色に反して、暗がりの洞窟がキャンバスの奥に広がっている。
「エアルクレーネ、だよね」
「
……
はい、
……
わたし、実際に見たことがあるのに、この絵には、まるで本物の美しさが宿っているみたいで、すごく感動して」
「うん」
「この人も、きっとあのエアルの泉を見たんですね。それで、みんなに綺麗な景色を伝えたかったのかも」
「ただ、綺麗だって思ったから
……
かもよ?」
「
……
そうかもしれません。でも、きっとそれでも、こうやって誰かにその心が伝わるのなら
――
」
ぱちりと視線がかち合う。三秒きっかり経って、エステリーゼの顔が真っ赤に染まった。
「れっ、れ、レイヴン!?わ、わたし、え、あの、」
「くっ
……
、じょ、嬢ちゃん、待って無理、面白、」
「ひ、ひどいです!一番最初に声をかけてくれればわたし
……
!」
感銘を受けた絵について話す、深い感動を湛えた表情、無意識だったのだろう心の声が漏れてしまっていたことへの羞恥とそれを聞かれたことへの憤慨、本当にいろいろな表情を見せてくれる。
彼女のどんな表情にも、想わされてしまう。必死で笑いを抑えながら、頬を膨らませたままのエステリーゼをどうなだめようかと考えた。
「もう、レイヴンなんて知りません!わたしせっかく素敵なお店を見つけて、いいなあって思ってたのに
……
」
「ごめんごめん、いや、嬢ちゃんが同じ店気に入ってくれたのが、嬉しくて」
「
……
同じ?」
「世界中の綺麗な景色を描いた絵を集めた店、なんて嬢ちゃんが見たら喜んでくれるかと思っ
……
あ」
「
…………
」
「
……
や、捜してたのよ、嬢ちゃんのこと。この店に連れて来たくて。あ、別に変な意味じゃないからね!?ホントに!」
次に失敗したのはこちらの方だった。心の声がだなんて面白がっておいて、よく言わせたものだ、こんなに恥ずかしいことが他にあるだろうか。せめて冗談っぽく済ませればよかったのに、いらないところで念押しをしてしまった。
沈黙が痛い。どうしよう、今なら引き返せるかもしれない、だがどうやって
――
「ありがとうございます」
ふわりと笑ったエステリーゼに、一瞬息を呑む。
「嬉しいです」
「や、別に嬢ちゃん自分で見つけたしね」
「ここをわたしに見せたいって思ってくれて嬉しいです」
ああもう。
座り込んで顔を隠したい衝動を必死に耐える。
「そ、か」
「今度はわたしがレイヴンに見せたいもの、探しますね」
頼むからそういう可愛いことを言わないでくれ。本当頼むから。
いつものへらりとした笑みは、多分なんとか装えていただろう、と思う。
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