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ナガレ
2020-11-11 20:50:48
7524文字
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Spring has come(ぶぜまつ)
豊前を一人密やかに想っていたかった松井に春が来るまでの話。
1
2
――
ここ数日、松井と顔を合わせていない。
締め日とやらをすっかり忘れていた主と、それを発見したお目付役長義と共に、松井は「立ち入り厳禁」が掲げられた執務部屋に缶詰状態になっている。長義が来るまではへし切長谷部を筆頭に文字の読める者達が手伝っていたそうだが、晴れてお役御免となったことですっかり安心してしまい、主の進捗確認を怠っていたとのこと。長谷部の同位体の中には細かい事が好きだったり得意だったりする者もいると聞いたが、生憎この長谷部は苦手な部類なんだと。分かる。俺も細かい文字がいっぱいのものは苦手だ。
普段は審神者に対して寛容な政府もこの締め日に関してだけはうるさいらしく、期日までに書類一式を提出できない場合は本丸解体もあり得ると言われているんだとか。そりゃ、主も必死になるはずだ。さきほど見かけた長義は死人のような面だったから、主も松井も同じような状態なんだと思う。
(それにしても、マジで松井と会わねーな
……
)
缶詰状態とは言え、主と長義には会った。何か手伝う事はあるかと尋ねたら、無言で書き上げられた書類を渡された。番号順に並べ、紐を通して纏めておけと言いたいらしい。死人の方がマシとも言えそうな長義に渡されてしまった以上、突き返すわけにもいかず引き受けた。紐を通すのは篭手切が手伝ってくれた。
だが、松井には一度も会えていない。篭手切や桑名は松井を見たり会話を交わしたと言うから、会えていないのは俺だけだ。松井が執務部屋からあまり出ないのかもしれないが、これは意図的にすれ違っているとしか思えない。松井に避けられる心当たりは
――
ある。最後に顔を合わせた時の事だ。
「あれは僕の戯言だ。どうか忘れてくれないか」
続けて「今日からしばらく執務部屋に籠もる」と告げ、松井はその場を立ち去った。松井は戯言が何かとを名言しなかったが、もし”あれ”が松井の言う戯言なら、切り捨てられては困る。今すぐにでもその真意を問いただしたい。しかし今動くのは愚策。いま主から松井を取り上げれば本丸の存続に関わってくる。それはもっと困る。だから俺はしばし待つ。
弥生が終わり、卯月になった時。その時が勝負の時だ。忘れてなんかやんねーよ。
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おそまつさまでした。
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