無窓居室
2023-12-03 00:50:30
6899文字
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デートプラン😈👹😈(晩夏〜秋)

付き合ってるようないないような😈👹😈が実在の場所でデート(未満?以上?)する短文集です。
二人が普通に相手のこと大好きで原作の面影はあまりない。
書いてる奴の時間と気力が許せば増えていきます。


原宿


 駅から続く商店街の目抜き通りは歩くのも難しいほど混雑していた。
 奇抜なファッションをした若者や観光客らしい外国人から、ベビーカーを押す家族連れに平凡なスーツを着たサラリーマン風の男性まで、一般的なイメージよりもはるかに多種多様な人々が、通りの終点までを埋め尽くす人混みを構成している。

「タピオカドリンクってブームは過ぎたと思ってたけど人気店は今も人だかりなんだな」
「あの綿飴、大きいですね〜。しかも虹みたいな色してますよ」
「あっちのポテトフライも凄い!あんなに長いやつ見たことないよ!!」
「さっきのグミは有名なYouTuberが動画で紹介してた商品ですね。優中部町じゃなかなか見つかりませんでしたが、ここに売ってたんですか」

 通りが活気で満ち溢れる休日の午後。動画のアイデアを拾いに来たブラックとアカネは人波の両岸に次々現れる食べ物に興味津々だった。格闘家としてのストイックさに似合わずアカネは甘いもの好きで、人間界でも珍しい品を扱うスイーツ店には特に目を輝かせる。
 更に甘党のブラックは言わずもがなだ。興奮のあまり腰から尻尾が露わになってしまっており、背中には翼の先まで覗いているが、周りは誰も気にしない。アカネの角と同様にこの場で目立つには地味すぎるアクセサリーのようだ。

「いちご大福も美味しそう!知らないキャラだけどこのコラボ商品も可愛い……あれ、ブラック?ブラックーー!!」

 行く手に現れた和風カフェに気を取られているうちに隣にいたはずのブラックを見失ってしまい、アカネは大声で連れの名前を呼んだ。



「はあ、見つかんないな……携帯にも出ないし。人を見過ぎて疲れちゃったよ」

 ブラックとはぐれた場所からほど近いブティックの軒下でアカネは溜息をついていた。あまり離れない方が良いだろうとその場で行き交う人の中を探していたのだが、埒があかないので通りの左右の店を覗いていたところだ。そこにもブラックの姿は無かった。

「アタシみたいに、お洒落とか流行とか興味ない奴と回ってても楽しくなかったのかな?こういうのも素敵だとは思うんだけどなアタシにはガラじゃないっていうか」

 限定品らしいキャラクター商品やポップな色使いの雑貨を横目にしながら俯くアカネに、背後から声が掛けられた。

「お待たせしました!アカネさん。ちょっと休憩にしましょう!!」
「うわっ!?何だ急に……ってブラック!どこ行ってたんだよ」
「すみません、来る前から必ず寄ろうと思っていたお店を見つけたので。あと、アカネさんにはこちら」

 戻って来たブラックの片手にはクレープ、もう片方の手には専門店のりんご飴がある。両手が塞がっていたせいで電話にも出られなかったのだろう、と察してアカネは脱力し、次いで差し出されたりんご飴に顔を赤くした。
 いつかの祭り会場でアカネが気に入ったのをブラックは憶えていたのだ。



 ブティックの脇の細い道を一本入るとメインストリートほどの人通りはなくなる。道の脇に並んで甘味を頬張りながらアカネはブラックを盗み見た。

(ブラックのやつ……絶対にアタシより可愛いものや仕草が似合うよな。獅子原とかいう学生と一緒だったときも、女の子みたいな会話が違和感なかったし)

 ブラックが買ってきたクレープは生地から溢れそうなほどの生クリームの上にフルーツやアイスや小ぶりのケーキまでトッピングされたもので、黒一色の服に身を包んだ細身の男──それも凶々しいの尻尾と翼つきの──が手にしている図には実にキッチュな魅力がある。

(悪魔のくせに、食べたかったクレープのお店を見つけて我慢できなくなっちゃうなんて

 思わず見惚れてりんご飴を食べるのにも上の空のアカネは、ブラックもまたアカネの方を見ていることに気づかなかった。いくら女子力が無いとはいっても超のつく美少女が、頬を染めながら甘い果物の菓子に唇を寄せている姿は見る者の心を揺さぶらずにはおかない。悪魔であれ、人間であれ。

「アカネさん、もうちょっとオレちゃんの後ろに
「そこの君!そう君だよ!!さっきから見てたけど可愛いね〜、芸能界とか興味ない?」

 アカネへの人目を遮ろうとしたブラックの試みは、しかしあっけなく失敗した。人混みの方向からやって来た男は二人に歩み寄りながらもう名刺を差し出している。この辺りにオフィスを構える芸能事務所のスカウトらしい。

「芸能界?あいにくアタシはYouTuberなんだ」
「それなら話が早い!YouTubeでの活動をさらにステップアップさせるためにも、ウチでアイドル的な活動も並行してやってみるのはどうかな?提携のプランは柔軟、歓迎するよ!!」
「あ、あぁ

 アイドル、の響きにアカネが気まずそうな顔をする。しかしスカウトは却ってそれを攻め所と見たのかなかなか引き下がらない。とうとうブラックがアカネの肩に手を置き口を挟むことになった。

「アイドルといったら清純派のイメージが売りでしょう?昼間から表通りを男と二人で歩いてるような子には向かないのでは?」
「ちょ……ブラック!何言って!!」
「そのへんは大丈夫、君もYouTuberの彼氏さんなら演出ってものを理解してるでしょ?いわばセルフプロデュースね。ウチの得意分野で……って、よく見ると彼氏さんもなかなか絵になるスタイルしてるじゃない。もしかして役者?モデルさん??所属事務所は決まってるの???」
 
 際限ない相手の喋りを聞かずクレープを全て腹の中に収めたブラックが、そろそろ潮時とばかりに辺りを見回したときだった。

「あの、ルビアプリンセスのアカネさんですよね!?」
 
 今度は通りとは逆の方から若い女性が声を掛けてきた。持ち物にはアイドルらしい女の子の缶バッジやキーホルダーが数え切れないほどついており、その方面に相当詳しいことが伺える。

「あははうん、懐かしい響き、だね
「やっぱり!あの伝説のラストライブの!!生でお会いできるなんて感激です!」
「最初で最後のライブだったな……

 ファンを無下にはできないアカネが目を泳がせながら答えていると、芸能人が来ているらしいと耳にした野次馬がたちまち周りに人垣を作る。スカウトは名刺だけでも受け取らせようと人と人との間から割り込み、他の事務所の勧誘まで来ているようだ。

「これはちょっと行き過ぎですね。アカネさん、掴まって下さい」

 ブラックがアカネを抱き寄せるように体へ手を回し、背中の翼を広げると、一瞬の後そこに二人の姿は無かった。



「いきなり空を飛ぶなんて無茶するなぁ……今ごろ大騒ぎになってない?スマホ構えてた人も結構いたしさ
「あのままだと雑踏事故が起きる恐れもありましたので。魔力で画像や映像には残らないようにしたから大丈夫ですよ」

 横抱きにされて街の上空を運ばれながら言うアカネに、ブラックはもっともらしく答える。アカネの方は後のことが気がかりで自分の体勢を気にする余裕もなかったが、ブラックの返事を聞くと胸を撫で下ろした。

「皆さんすぐに忘れるはずです。あの街には刺激的な炎タメが沢山ありますから」

改めて眼下の街を見れば、人でごった返すビル群が道路で途切れるところだった。もうじき広い森へ差し掛かる。

「ねえ……ブラック、あのさ」

 森の端が都心へ続く街並みへ変わる頃、アカネがぽつりと呟いた。夕日に染まる空と点き始めた都会の光が赤い瞳をきらめかせている。

「さっきのりんご飴おいしかった!!ありがとな、お祭りの屋台のりんご飴とはまた違う味がするんだな!」
「カカカッ!どういたしまして」

 飴に包まれた果実を連想させる、その瞳の色を見つめ返していたブラックは笑い声を上げた。そして機嫌よく言葉を継ぐ。

「お代は次のコラボの約束でいいですよ!」