無窓居室
2023-12-03 00:50:30
6899文字
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デートプラン😈👹😈(晩夏〜秋)

付き合ってるようないないような😈👹😈が実在の場所でデート(未満?以上?)する短文集です。
二人が普通に相手のこと大好きで原作の面影はあまりない。
書いてる奴の時間と気力が許せば増えていきます。

箱根


 日暮れのターンパイクは走り屋の車ばかりだ。閉店後のスカイラウンジの駐車場からランボルギーニ・ディアブロが咆哮のような排気音を立てて出ていくと、観光の帰りらしい父子連れの子どもの方が歓声を上げていた。その二人が乗ったシルビアのカスタムカーも行ってしまえば辺りは閑散とする。
 ブラックとアカネは自動販売機で買ったドリンクを片手に、芦ノ湖を見下ろす展望広場で肩を並べた。

「アカネさんがこんなに運転がお上手とは知りませんでした。魔界ならともかく人間界の道路を走れるなんて、練習したんですね」
「ふふん、ガードレール引きちぎりながら走るとでも思ってたか?……まぁ、乗り始めの頃の練習場やサーキットじゃちょっとヤバかったけどね

 ブラックの褒め言葉とも慇懃無礼とも取れる台詞に、得意気なアカネは後半声をひそめて呟く。風に流れる赤い髪が夕日の名残りに映えた。
 空は朱色から薄青に変わりつつあり、遠く望める日本列島一の山はその姿を空に浮かぶ影へと変えていくところだ。

「でも悔しいな。同じ車で上りも下りもブラックに到底敵わないんだもん」
「カカカッ!そりゃそうです」

 ブラックの笑い声を合図にしたように、駐車場から一台の黒い2ドアクーペがパッシングした。かと思うと、ひとりでに滑るように発進し展望広場の前で停まる。その車は瞬く間にカメラの頭部を持つ使い魔に変形してブラックに寄り添った。

「人馬一体、ってこういうことを言うんでしょう?車載カメラでもいい絵が撮れてます」
「じじっ!!」

 カメラちゃんを肩に乗せたブラックがいかにも満足げなので、アカネは悔しさを露わにすることもできず、こんなに当てられるなら自分も助手に来てもらえば良かったと悔やむに留めた。あいにくとアカネのアシスタントの青い小鬼は自宅で編集作業中だ。

「ところで、寒くありません?よかったらどうぞ」

 ブラックが自分のホットコーヒーを差し出してくる。麓では残暑がまだ猛威を振るっているというのに、日が傾いた後の山の上は肌寒いほどの気温だった。風も強く、人間ならば長袖の上着なしではたちまち体温を奪われるだろう。しかしアカネは首を振った。

「アタシは鬼だから。それよりブラックは平気か?」
「その服装で冷えたスポーツドリンク飲んでるひとが悪魔の心配しますかね」

 憎まれ口を叩きながらも、悪魔はちゃっかり鬼の少女を風除けにする位置に立って暮れゆく山の景色を楽しんでいる。申し訳のように熱い缶を押し付けられたので、アカネはそれを相手の手の温もりのように受け取った。

 やがて駐車場と自動販売機に明かりが点いた。行き交う車はどれもハイビームを灯している。
 どちらからともなく駐車場へ戻る途中で、ブラックがやっと温んだ缶の封を切った。冷たい夜気にコーヒーの匂いが漂う。鬼の鋭敏な嗅覚に触れる、車中で開けたチョコレート菓子とそれが混じった香りを、アカネは胸のどこか深い場所へ吸い込んだ。