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無窓居室
2023-05-23 07:43:09
6411文字
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Dress
ひだり様に差し上げた『ドレス』の没稿をお許しを得て掲載します。
当時、自分の構成力が本当に底辺だったことを再認識しましたが、👹のお父さんを会話に出せたところだけは気に入っています。
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「いや〜!いい結婚式だったよね。あの二人、長年どうなることかと思ってた立場としては本当ホッとしたよ!!」
「
……
うん」
式の帰り、ひめは手配してもらったタクシーに揺られて自宅への帰路についていた。隣のさとしはまだ喜びの余韻も抜けないといった感じで、しきりに良かったを連発している。ブラックの相方として二人を見続けてきたさとしが見せる感慨の重みに、全く同じには応じられない自分が悔しかった。
「披露宴でのアカネちゃんのドレス、綺麗だったなぁ。アカネちゃん普段から可愛いけど、今夜は見違えちゃったよね!」
「そうだね」
「ひめちゃんは将来お嫁さんになる時、どんな服を着るんだろ〜
……
」
勝手に想像を膨らませてやに下がった顔になるさとしを横目に、ひめはドレスに身を包んだアカネの姿に意識をやった。思い出すまでもなく、それはひめの瞼の裏に刷り込まれて離れなかったのだ。
大輪の牡丹の花を開かせる朝の日の光が、茜色の夕日に変わりやがて夜の星の光を従えた闇へ溶ける。アカネの傍に立つブラックが身につけていたスーツはドレスの黒と完全な同色だった。自分が彼女を抱きしめられる唯一の存在だとの招待客全員の前でブラックは宣言したに等しい。今夜、とうとう太陽は夜の手に落ちる。
「さとしくん」
「えっ
……
な、何!?」
ふと、ひめがさとしの手を握った。話していた話題が話題だっただけに、さとしは飛び上がって驚く。
ひめは総絞りの浅葱の着物と萌葱色の帯に橙の帯揚げと帯留を合わせて、いかにもジューンブライドに招かれた女の子らしい装いをしていた。それに比べて学校の制服のブレザーを着ただけのさとしはいかにも垢抜けず、子どもっぽい。しかし今、ひめにとってはさとしのあどけなさだけが自分の子供時代を守ってくれる最後の砦のように思えた。
「離さないで。まだ、離さないでね
……
」
夢見心地だったさとしが、ひめの表情を見て真顔になる。さりげない力で握り返された手を拠り所のように感じた。
車の窓の向こうはとっくに暗くなっていた。見えるのは街の光ばかりで太陽の光は名残もない。今夜、幸せのうちに行ってしまうアカネのことを思って、ひめは甘い痛みに胸を満たした。
2023/05/22(改定日)
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