【可惜夜廻】終

『「すみません、よくわかりません。」』現行未通過×
※夜廻パロ




数カ月後の朝。すっかり冬模様になった町を前に、ソウゲツは立っている。本来右腕があった場所は不自然にへこみ、ダラリと長袖が垂れ下がるだけである。
ソウゲツの反対側、町を背後にしてカンジが立っている。互いに手を伸ばせば届く距離だが、俯いて影になったその顔色は伺えない。しかし強く握られたその拳が、彼の心の内を鮮烈に語る。


「これから、オマエはどうするんや」


長い長い沈黙を破ったのは、カンジの震えた声。胸の内に秘めた感情が爆発しないよう、必死に抑えているのだろう。対するソウゲツは冷静に、落ち着いた反応を彼に投げる。


「オマエを守る」

「そんな恰好でか? ハッ、笑わせんな。オマエの技術はもう無いんやぞ? オレの憧れる、あの天才で努力家なオマエの右腕は」

「知っている。だが、まだ手足は残っているんだ。どうとでもなる」


ブチン。理性で縛っていたカンジの本心が、呆気なく解き放たれる。一歩踏み出しソウゲツの胸ぐらを掴んで、カンジは激情のまま吠える。憎悪でも敵意でもない鋭さを有した眼光で睨みつけ、喉を裂くと言わんばかりに叫ぶ。


「ふッざけんなよ!! オレがどんな気持ちでオマエに助けられた思っとるんや!! どうとでもなる? なってないからソウゲツはそんな目に合っとるんやろ!! オレが全部悪いのに!! なんでオマエが……ッ」


刺さるんじゃないかと思うほど鋭かった視線が、ゆるゆるとその鋭利さを失い下へ落ちていく。縋り付くようにカンジはソウゲツの肩を両手で掴み、額を彼の胸へと当て懇願する。


「頼む。もうあんなことは、絶対せんといて。オレのために傷付かんといて。お願いや、ソウゲツ。オレにできることなら何でもする。だから……

なぁソージ。オレのこと、もう守らんといて」


ソウゲツを見上げたカンジの頬を、一筋の涙が伝っていく。笑おうとして笑えない、笑顔が常の彼からは考えられないような苦痛の顔。本心を曝け出し、真剣に語った願望。
それでもなお、ソウゲツの瞳は揺らがない。その決心は曲がらない。


……そっか」


するりと、カンジはソウゲツから離れる。心底残念そうに、本心から苦しそうに。目を閉ざし、一度小さく自傷気味にカンジは笑う。ソウゲツが言葉をかけようとしたが、その前に彼はパッといつも通りの笑顔に戻る。


「そんじゃ、帰ろっか! あっせや! 家まで競争しようやソウゲツ! どっちがはよ着くかのレースやで! 遅れたら何か奢ってや! じゃあ行くでー!」


カンジは走り出す。町に背を向けたまま、屋敷に向かって足を進める。遠ざかる金色に、ソウゲツは無い右腕を伸ばそうとして理解する。目を逸らしていた、意図的に無視を行っていた。もう二度と、あの宝物のような日々には戻れない。

彼を救う覚悟が、彼の心を殺したのだ。