【失笑の歌と蒼い月】終章A/後編

一ページ目必読
※Ibパロ




大学のイベントで美術館に行ったはいいが、自分の心を激しく動かすようなものは見つからなかった。企画で開かれていた“新人芸術家の展覧会”は、確かに新人特有の攻めた表現が見られ非常に個性的であった。ただ、言い方は悪いがそれだけだ。一般人のカンジにとって、深い意味を探りたいと思えるほどの魅力はなかった。


あれから数カ月して。

カンジは自分に、創作意欲というものが芽生えていることに気が付いた。元々は芸人を目指して勉強していたが、どうにも『作品を生みたい』という衝動が消えなくなった。人を笑顔にしたいという目標は全く変わらないが、強く求めていた手段が変わったのだ。


“芸ではなく、美で人を笑わせたい”


強く甘美な衝動に、身を委ねる以外の選択肢は無い。カンジは大学卒業後、素人ながらも芸術家を目指し始める。周囲から反対の声もあったが、彼の作品を見て誰もが言葉を失った。

最初に描かれたのは、青い絵の具だけで表現された男タイトルは〈最高〉。
空想の存在がモデルだというその絵画の男は、深い哀しみの表情を浮かべている。だというのに男は、優しく微笑んでいるようにも、怒り狂っているようにも見える。魔法のようなその技術で、カンジは多くの人間を魅力していった。

そこから彼は止まることなく走り、走り、走ることになる。高い壁も大きな苦難もあったが、全てを乗り越えていく。偉大な無名の英雄譚は、逆十字のペンが突き刺さっている。言葉を嫌う宝石は、軽く叩けば美しい音を奏でる。独特な世界観、そのモデルは全て彼だけが見える空想の存在。

やがて神に愛されるほどの才能だと持て囃され、彼は『オオワライ』として立派な芸術家へ成った。そうやって深淵を求め続けた彼は、やがて深淵と視線を絡ませて、そして────……