【失笑の歌と蒼い月】二章/前編

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※Ibパロ



階段を降りきると、広い部屋に辿り着く。黒を基調としているが、蛍光灯があるため薄暗さは感じない。床には豪華な絨毯が敷かれ、壁には人々が争う絵画が飾られている。カンジはここを、一昔前によくあった貴族の屋敷に似ていると考える。

醜く争い合う絵画は、見ていて気分の良いものではない。さっさと先に進んでしまおうと、改めて周囲を確認する。両脇には、それぞれ緑と赤で鮮明に彩られている扉が一枚ずつ。正面には通路が続いているらしい道があり、ここから遠く奥はよく見えない。

先程の階層と違って、案内役はいない。脱出の手がかりも、友人の探索も何も得ていない。この状況下で、何処に向かおうか。


*


探索は隅々まですべきだろう、カンジはこの部屋を調べることにする。あまり見たいものではないが、絵画も観察してみる。
どれも凄惨で残酷な戦争の風景が、切り取られたように描かれている。血の描写よりも現実的に表現された人々の苛烈な顔は、眺めているだけで心がズシリと重くなる。

しかし、一つだけ様子の違う絵画を見つける。四人の男が描かれた、写真のような肖像画。顔はそれぞれ赤、緑、黄、青で塗りつぶされているが、カンジには何となく彼らが幸福の雰囲気を纏っているような気がする。抱き合ったり手を繋いだりと、とても親しいのだろうことも察せられる。題名には、〈征服者の心〉と書かれている。

ふと、声が聴こえて音源を探る。楽しげなそれの正体は、すぐに分かる。誰かが上機嫌で、鼻歌を口遊んでいるようである。耳をすませば、それは緑の部屋から漏れているらしい。
〈作品〉ではあるだろうが、部屋に誰かがいるらしい。こんなに楽しそうなのだから、きっと優しい人だろう。安堵にも似た感情を抱きながら、カンジは緑の部屋に向かうことにした。