【凶星を穿つ】8

一ページ目必読
※MHパロ1nd.




転がりかける程夢中に地を駆け、冷静に焦りながら走る。あの三人に会いたい一心で、呼吸を荒げて進み続けた。長くて短い彼らとの距離を詰めて、何から話そうかと考える。それでも何も言葉が出ずに、ただ無言でバルファルクに太刀を向けた。


「オマエなら絶対に来るって思うとったでソウゲツ!」


翼撃を躱したカンジがソウゲツに気付き、ここ数年は見たことがないほど眩しい笑みを浮かべる。太陽のような輝きに魅せられ、ソウゲツは目を細めた。


「(嗚呼、オレとオマエはやはり、違うものだ)」


彼は弱い。彼は脆い。だから自分が守らなければならない。そう思って、そう信じて生きてきた。けれど、それは少し違うのだろう。自分に弱い部分があるように、彼にも強い部分がある。それを少しだけ、理解した気がした。
ハンマーに力を込めながら、カンジはアサヒに接敵しようとするバルファルクに突撃する。それと入れ替わるように下がったヒロは、ソウゲツの隣に立った。


「ソウゲツ、おかえり。待ってたぞ」

「状況は」

「悪くはない。ヤツの動きにも、ようやくクセが見えてきた」

「狙い目は見つかったのか」

「バルファルクは大気を吸引し、それを体内で龍気に変換するんだ。変換した龍気を溜め込む場所を暴発させれば、大きな損害を与えられる」

「弱点の場所は」

「胸元」

「了解した。誘導を頼む」

「簡単に言ってくれるねぇ。ま、この四人ならできるけどな!」


ヒロの狩猟笛から音色が流れ、ソウゲツは自身の動きが軽くなるのを感じる。音に反応した古龍を、斜め下からカンジが突き上げるように殴った。瓶を取り替えたアサヒが、矢を放ち彗星を麻痺させる。


「今だよソウゲツ!!」
「やっちまえソウゲツ!!」


動きの止まったその瞬間に、アサヒとヒロが叫んだ。同時にソウゲツが古龍の足元に滑り込み、その胸元を狙う。痺れながらも反応を返そうとするバルファルクの右翼が、自身に致命傷を寄越そうとする男に振りかざした。


「────!」


一陣の風。木の葉が舞い、僅かな瞬間だけバルファルクの視界が奪われる。それは瞬きよりもずっと短く、されど決定的な運命の分かれ道。小さな小さな葉に隠され次に現れたソウゲツは、バルファルクの予知した場所より先にいた。音速の翼が、ソウゲツの“居た場所”を穿つ。


「(きっとこの奇跡は、神からの褒美だ)」


神風に押されて加速した剣は、勢いを増し続けていた。空振った翼が戻る前に、ソウゲツの踏み込んだ一撃が天彗龍を襲う。その一太刀は、確実に胸元を削り斬った。アサヒの矢とカンジのハンマーで既に脆くなっていた鱗にとって、ヒロの笛による攻撃力を増させた斬撃はあまりにも重い。バギャリと派手な音を鳴らし、バルファルクの鱗が舞い散った。

それでも絶命する、その瞬間。バルファルクは咆哮を轟かせながら、右翼をソウゲツに振り下ろす。ソウゲツは動けない、ヒロとアサヒは手をのばすには遠すぎる。
だからこれは、当然の出来事だった。


「おーーりゃあ!!!!」

ドギャンッッ!!


ここまでの戦闘で最も大きく、また派手な音と火花が舞う。カンジの振り上げたハンマーは、振り下ろされていた最中の右翼を逆に打ち返したのだ。その背中はソウゲツにとっては小さく、また脆いもののはず。しかし彼はそこに、見たことがないほどの頼もしさと強さを見た。


「(……そうか。オマエはずっと、オレの隣にいたんだな)」


バルファルクの断末魔が途絶え、今後こそ本当に動かなくなる。凶星から奇しき光が失われ、焦げた大地に倒れ伏せた。天災と言われた嵐が、人の手で砕かれる。それは明確な栄光で、英雄の証だった。