みたむら
2023-12-09 15:31:17
13424文字
Public FGO(鯖ぐだ)
 

マスターは忙しい!

FGO・術ギルぐだ小話。
カルデアで忙しく手伝いしてるぐだ子を術ギルが休ませる話。

前 編


 カルデア内では職員たちが常に仕事をしていて忙しい。レイシフト先から帰ってきた藤丸立香ふじまるりつかは二、三日は休息を楽しんでいた。しかし、休んでいる間に忙しくしているカルデアの職員たちを見ていると何か手伝えることがないかとじっとしていられなかった。立香はしばらくの間、カルデア内の手伝いをすることにしたのだ。
 カルデアの中にある資料室では、立香の声が飛んでいる。

「えーっと、これはここ。あれはここ……

 私はドクターことDr.ロマニに頼まれ、資料室の整理をしていた。前の戦いでは予想外のことがたくさん起こっていて、ドクター始め、カルデア職員の人たちに調べ物を隅から隅までしてもらい、そのせいで正しい資料配置になっていなかったのだ。
 私は機械にそんな強くないため、手伝いをすると言ってもこういった雑用みたいなものばかりだ。それでも、みんなのためになるのなら私は苦でもない。私の手を施すだけで本棚がきれいになっていくのを見ていくと私の部屋もそろそろ掃除しないとな、と他人事のように思ってしまう。

「あ。ここに埃が……箒を持ってこよう」

 持ってきた本を元ある場所へ持っていくと床に埃があるのを見た。そして入口あたりでは埃の臭いはなかったのに、このあたりに来ると少々埃臭い。ここは長期間掃除が届いてなかったのかもしれない。
 私は箒とちりとりを持って埃などを掃除する。余計な仕事かもしれないが、後に使う人のことを考えればきれいにしている方がいい。

「さっきから何をやっている、雑種」
「あ、王様」

 掃除をしていると、背後からサーヴァント――ギルガメッシュがいた。
 ギルガメッシュといえば黄金の甲冑を想像すると思うが、目の前にいる彼は甲冑を着ていない。彼はアーチャーのギルガメッシュではなく、キャスターのギルガメッシュだ。ウルクの王になった時の姿であり、様相もウルクの王らしい姿である。そんなギルガメッシュが怒っているような、呆れているような目で私を見ている。

「ドクターに言われてこの資料室の整理を頼まれたんだ。で、普段はそんなに使ってないのか、ゴミが少しひどいから掃除も兼ねてやってる」
……そんなことを聞いているのではない!」

 ギルガメッシュが何故か怒り出した。彼が怒ることは別に珍しくもないのだが……まぁ、私の応え方がおかしかったんだろう。そもそも、私の後ろをずっと見ていたのだから私が何をやっているかなど、すでに知っている。

「そんなだらだらしていたら日が暮れてしまうわ戯け!」
「うーん、それはごもっとも」

 資料整理しつつゴミを拾うというのは結構手間でもある。しかし、ゴミを見つけてしまうと掃除をしておきたい。そしてその欲求を諦めたくない。資料整理して出ていっても、気になってしまうのは私の性格上分かっている。

(一番いいのは、王様に手伝ってもらうことなんだけども……

今にも噛みつきかねない目つきを見て頼める様子ではない。いや、そもそも王様がマスターとはいえ普通の人間相手に聞いてくれるほど優しくない。

「すでに一時間は経っているがいいのか? 次の手伝いもするのであろう?」
「ん? ……ああっ! もうそんな時間?!」

 ギルガメッシュの忠告に壁に立てかけてあった時計を目にすると彼に言われた通り一時間は経っていた。次に頼みたいことがあるから、と一時間ほどでできれば戻ってきてほしいと言われていたのだった。どうしよう、このままだと遅刻してしまう。

(仕方ない、先に資料を整理して今日の仕事を終わらせてから来よう)

 時間は有限だ。こうしている間にも時計は一刻一刻進んでいる。私はモヤモヤしたまま掃除道具を片付け、片付ける本の整理を再開する。

……たく」

 王様から小さくそう呟いたのを聞こえたような気がしたが気にしてない振りをして、手を動かした。
 しばらくして本の整理は終わった。きれいに片付いたのを見ると気持ちがいい。

「やればできるではないか……褒めてやろう」
「ありがとう……王様も、お疲れ様」
「ふん。何のことかさっぱりだ」

 私からのお礼にギルガメッシュは何も知らないというように資料室を出る。それを少し見届けてから私は後を追いかける。
 本の整理していると、途中で整理しなくてはならない資料が減っていたのだ。何でだろうと思って周りを見ていると、別の本棚で軽々と整理していくギルガメッシュの姿が見えた。彼自ら手伝ってくれることは稀だ。私はありがたく思いながら残りの本を片付けたのだ。
 管制室に戻ると、ドクターがこちらに気づいたらしく、手を降ってこちらに走ってくる。

「やぁ、立香ちゃん。整理終わったかい?」
「はい。少し遅れましたけど」
「ありがとう。とても助かるよ! 次は、これを――
「医師。まだ雑種に雑用やらせるつもりか」
「賢王様もいたんだね。……しかし、彼女が手伝いたいと聞かないんだよ。僕だって休んでほしいって思ってるけど」

 輪に入ってきたギルガメッシュの咎めにドクターもしどろもどろになりながら答える。
 こうやって合流するたびに二人は対峙する。
 私が手伝いたいと思ったからやってるんだけど、二人は本来はまだ休ませるべきだという考えだ。確かにレイシフト先での戦闘が長く続き、慣れない土地での生活をすることになるのだから、職員の手伝いするより体力の温存が何よりもマスターの役目と言ってもいい。ただ、ぼうっと過ごしているだけなのは嫌なだけ。これは私の我侭だ。

「立香ちゃん、今日はこれくらいで――
「まだ仕事残ってるならやらせてください!」
……貴様も少しは休め。“休息するには百年早い”とは言ったが、こういうことを言っているわけではない」
「分かってるよ。限界だと思ったら止めるし、まだできると判断してるからこうしてここにいるの」

 確かに少し疲れが出てきてはいるが、それは少しの休憩があればすぐに回復する程度のものだ。何度戦闘に巻き込まれたか。伊達にマスターやってない。

……じゃ、じゃあこれをここに持っていって欲しい。少し重いかもしれないから王様もできたら協力してくれると嬉しい」

 そう言ってドクターが言ってきたのは机の上にある多くの紙の束。これは大事な資料だからなくさないように持っていって欲しいらしい。確かに、彼の言うとおり量が多いので流石に私の力だと難しいかもしれない。

「今日の仕事はこれで終わりだから、そのまま部屋に戻っていいからね」
「はい!」

 ドクターは「よろしくね」と言うと職員に呼び止められ仕事場に戻ってしまった。残されたのは私とギルガメッシュ、そして机の上にある紙の資料のみ。

「よし、やろう!」

 何往復しなきゃいけないか目分量では分からないが、資料の束を持ち上げ、指定された場所に持っていく。その部屋には行ったことがないが、地図をくれたので道を間違えずに行けた。
 そして、何往復かした後、私は部屋に戻ってきた。流石に足腰が痛む。ちょっと無理をしすぎただろうか。

「はっ、マヌケな面よな」

 ベッドに寝転がる私を目を細めたギルガメッシュがそう言った。

「さすがに、あんなに往復するとは思わなかったよ……少しだけ休憩」

 そう言って今度こそ私はがくりと枕に顔を埋めた。ふわふわの枕と布団で眠気を誘う。しかし、まだやることが残っているので、寝るわけにはいかない。

「雑種、茶を出せ」
「はぁい」
「何だその返事は! 貴様は我の小間使いであろう、我自ら指示を出しているのだ、喜んで返事をするのが常であろうが」

 つまり、だらしねぇぞということなんだろう。小間使いになった覚えは……多分ないのだが、彼の中では私は小間使いになっているらしいので、重たい体をゆっくり起こす。
 二人分の茶を淹れると紅茶の匂いが私の鼻をくすぐる。紅茶の匂いだけで落ち着くほど、私は疲れていたのかもしれない。そう思いながら淹れたての紅茶をテーブルに出す。ギルガメッシュはティーカップを取るなり宝物庫から取り出したのか立派なソファに腰を落とし、優雅に飲む。普段怒ってばかりの彼でも、少しだけ落ち着いているような気がする。
 彼にもたくさん助けてくれた。確かに、仕事をしているのは私の意志であり、彼は巻き込まれたようなもの。だからこそ、ため息やら愚痴やら溢れてもこっちは文句を言えない。彼の言うとおりなのだから。

「お疲れ様、王様」
「よい、褒めて使わす」

 そう言って、王様は少しだけ笑みを零していた。
 紅茶を飲み干すと、少しだけ時間が空いたので、ベッドに横になっていた。少し休憩したら資料室で掃除の続きをしなくては。
 しかし、疲れが出てきたのかまた眠気を誘ってくる。ベッドは本当に罪だ。

(でも、少しだけなら……いいよね)

 そう、自分に言い聞かせて瞼を閉じた。