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黄昏に交わる

夜明グレゴールと子方ヒースクリフの短いお話です。
カプ要素なし。幸せな話ではありません。




 どこかの裏路地で、葉巻を火にくべる男がいた。慣れない手つきで先端を炙り、恐る恐る口を付ける。肺に酸素を取り込む要領で大きく煙を吸い込んだ。
「げほっ……!」
 途端に強烈な苦味が喉を焼き、大きく咽せ返る。生理的な涙が目に浮かび、男は葉巻を持つ手を遠ざけた。
 こんなものを盗むのではなかった。男は重々しく舌打ちする。あのときの自分はどうかしていたのだろう。
 クソ、と悪態をついて火を消す。苛立ちのまま、シガーケースごと麻袋に放り込もうとした。
「なんだってこんなモンを……あ?」
 だが、その中には入れた覚えのない紙切れが入っていた。
 名刺だ。あの男の顔が脳裏をかすめる。
「んだよ、これ。いつのまに……
 質に入れる前に気がつけたからよかったものを。こんなものが入っていたら足がついてしまうだろう。名刺を摘み上げ、書かれた肩書きを目で追る。
……あの人、三級フィクサーだったのか」
 あれほどの腕前ならもっと上の等級だと思っていた。気後れして損をしたという思いと、それでもなお納得できない思いが胸に残る。相当な手練だろうとの見立てが外れただけには思えない。どうにも腑に落ちず、眉を顰める。
 名刺を指先で弄びながら、青年は知らず知らずのうちにその名前を何度も読み返していた。