苦しき炎に身を灼いて

『夢の語り部』設定。
出会い、友人となった近藤に土方が抱いた想いとは。

こちらの作品はWavebでいただいた『夢の語り部』設定のリクエストになります。
◆リクエスト内容◆
『夢の語り部』設定で、「土方さんが近藤さん(黒剣ちゃん)に対して嫉妬する、やきもちを妬くエピソード」

ほわほわしたのが多い『夢の語り部』でも、いつもより仄暗い土方さんが抱く情念の話。

『夢の語り部』( https://privatter.me/page/69566231a7634 )設定
現代転生パロ。
近藤さんのが年下設定(二歳差)で、1臨・黒の剣士の外見。
土方さんには記憶がありますが近藤さんには記憶無し。

 醜いと、本当にそう思うのだが、その想いは隠せなかった。

「歳!」
 一緒に帰ろうと約束した俺が中三・二学期の期末テスト週間。
 俺の姿を認めてその人が駆け寄ってくる。
 その表情は幸せそうで、何の憂いもないように見える。
〝見える〟だけで実際はそうでないことはわかっているのに、それなのに俺はその笑顔が堪らなくねたましく思える時がある。
 俺は前世の記憶を取り戻し、じくじくと疼く傷に爪を立てられるような思いを抱いているというのに、なんであんたは何も知らずその顔を出来るのかと……
 かといって記憶を取り戻してほしいかというとそんなことはない。
 むしろ取り戻してほしくない。
 あんな記憶はない方がいいに決まっている。
 それに、サーヴァント時代の黒の剣士──マガツヒノカミの影響を残した姿で生まれてきてしまったのだ。
 そんな中で記憶があったのなら、真っ先に自分を消そうとするに違いない。
 あの頃の記憶なんぞ、綺麗さっぱり洗い流されて忘れてしまって構わない。

 これは、俺の勝手な思いだ。
 あんたと何も知らないまま出会いたかった俺の、勝手な嫉妬だ。

 だが、互いに何も知らずに出会ったとして、俺はあんたの心にここまで食い込むことが出来ただろうか?
 俺はあんたの魂の色を知っていたからこそ、どんな姿のあんたも受け入れることが出来た。
 今世に生まれた〝土方歳三〟はあんたの姿を他の連中のように奇異の目で見ることはしなかっただろうか?

 俺が記憶を取り戻したのは間違いなくあんたを最初に見た時だ。
 幼かった〝土方歳三〟はその時点で三十余年の人生を経た人間に生まれ変わってしまった。
 今世の〝土方歳三〟がどんな思いを持ってどんな衝動に動かされる人間だったのかは、失われてしまった。
 だから、今更それの是非を問うことは出来ない。

「歳?」
 きょとん、とした顔で眉間に皺を寄せていたであろう俺の顔を近藤さんは覗き込んできた。
「あぁ、悪い。ちょっと考え事をしてた」
「進路に関することだったりするのか?」
「まぁ、そんなところだ」
 今はいい口実があると思う。
 それを理由にすれば大抵のことは無理が通ってしまう。
「俺、歳と同じ高校に行きたいな。できれば大学も」
「──え」
 俺は一瞬絶句した。
 近藤さんはまだ中学一年。
 いろいろ考えて高校もその先も選べばいいと思っていたのに、もう俺の後を追ってきたいと思わせているのかと、そう思わせるほど俺はこの人の人生を歪めているのかと。
 俺しか味方がいないくらい、世はこの人を孤立させているのかと。
 そう思うと同時に、そのまま俺しか見えなくなってしまってほしいとの思いもわき上がる。

 あぁ、俺は愚かだ。
 あんたに対して本当に醜い思いを抱いている。
 あんたを自由にしたいと思いつつ、己の手に取り籠めて離したくないと考えている。

「だめか?」
 縋るような、親に置いていかれた子供のような目をして近藤さんは俺に問いかける。
 近藤さんのことを思うのなら、ここで目を覚まさせるべきなのかもしれない──

「いや、大歓迎だ」

──俺は……それをしなかった。
「俺もしっかり勉強して、あんたに教えられるくらいになるからな」
「うん!」
 ぱぁっと日の光が差すように笑顔を作った近藤さんに、心の中で詫びる。
 俺より、近藤さんの方が何倍も辛いのだ。
 俺の嫉妬など、虫ケラみたいなものだ。
 何も知らなくても、仮に何もかも知っていたとしても、必ず護ると決めたというのに、俺は情けなくなって近藤さんにバレないようにそっと涙を拭った。

 あぁ、もう終わりにしよう。
 くだらない妬心など抱くのは今日で終わりだ。
 この先、もしあんたが俺の呪縛に気付いて離れる時が来ようとも、俺は笑顔で見送ろう。

──それが、あんたのためになるのなら。