夢の語り部

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
現代転生パロ。
大晦日~新年の近藤さん語り。
近藤さんのが年下設定(二歳差)で、1臨・黒の剣士の外見です。
土方さんには記憶がありますが近藤さんには記憶無し。

ほんと、こいつ黒剣ちゃんしか書かねぇな、と思ってやってください。

姫始めも上げました(パスワード制)
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 紅白が終わり、行く年来る年が始まった頃、一緒にこたつに入っている恋人を見れば大して感慨も深げではない顔をしている。
 でもきっと、年が変われば──
「あけましておめでとう、近藤さん」
 画面が切り替わり、その刻を告げる放送が始まるか始まらないかの絶妙なタイミングで彼は振り向いた。
 その顔は砂糖菓子が蕩けるのではないかと思うほど甘く、優しい。
「あけましておめでとう、歳」
 ぷちん、とリモコンでテレビを消す。
「もう見ねぇのか?」
 首を傾げる男に、必要ないもの、と返す。
「初詣いくか?」
「混んでいるだろうから、やだ」
「はは、違いない」
 自分で自分の毛先を弄ぶ。
 相変わらず変な色だ。
 生まれつきなのだから仕方ないけれど、全体的に灰がかったピンク色、それは途中から朱が濃くなり、首の辺りでは紅、更に伸ばすと毛先は青色に染まる。
 なのでいつも後ろ髪は首の辺りで乱雑に切っている。
 前髪だけは艶のある黒なので、全体がそうなってくれればいいと思うのに。
 今弄んでいる髪は──目の前の恋人が伸ばしてくれ、と言ったから伸ばしている。
 その時、なんと言われたっけ。
 あぁたしか──『あんたを繋ぎ止めるものがないと、困る』と。
 この男との出会いは随分昔だ。
 ご多分に漏れず髪のことで教師に注意された中学一年の春、その教師との間に突然割り込んできた。
『そいつの髪は生まれつきだ。染めてなんかないぜ。綺麗な髪に難癖付けるなよ、みっともない』
 剣道の道具を背負い、身につけたバッヂから三年とわかった彼──土方歳三は、その教師を眼力で黙らせた。
『あいつはとにかく難癖付けて生徒を叱るのが好きな馬鹿だから、相手にしない方がいいぜ』
 這々の体で逃げていった教師を呆然と見遣る俺の背を叩き、土方はそう言って笑ってくれた。
 いままでこの髪を、俺の姿を肯定してくれた人間は少ない。
 髪だけならともかく、アルビノでもないのに目も緋色だ。
 両親ですら扱いに困るような顔をされている。
 よく見れば土方も目は紅い。
 それで同族意識で庇ってくれたとしても、俺は嬉しかった。
『俺は土方歳三。あんた、新入生の近藤勇だろう?』
 言われてビクッとした。
 この姿を珍しがられてそういう噂があって、また何か言われるのかと。
『あんたは綺麗だ、自信を持て。何か言ってくる馬鹿がいたら、俺のところに来い』
 まるで長生した大人のように目を細めてそう言うと、俺の癖毛を撫でた。

──思えば、その瞬間俺はこの男に恋していたのだと思う。

 それからは、俺の容姿のことで何か言ってくる奴はいなくなった。
 ただ、別の噂が耳に入る。
近藤あれは土方のオヒメサマだから手を出すな〟と。
 土方が中学は言うに及ばず、近隣の高校にまで名が轟き、教師達も一目置く存在だと知ったのはそれからだ。
 オヒメサマなんて悪意のある言い方だと思ったが、気にならなかった。
 本当にそうなら、なんて善いことかと思ったくらいだ。

 俺は高校も土方を追っかけて同じ所に行った。
 専攻は違ったが大学もだ。
 その間、土方はずっと俺のことを気にかけ、時には遊び、時には勉強を一緒にして、年齢差など気にならない気の置けない関係になってくれた。
 何故か、俺の方が年下なのにいつも呼びかけは『近藤さん』だった。
 俺はなんて呼べばいいのかと聞いたら、『歳』と呼んでくれ、と言われた。
 年上なのだから『土方さん』、もしくは『歳三さん』だろう? と返せば天を仰がれてそれは勘弁してくれ、と。
 だから、ずっとそれに甘えて『歳』と呼んでいる。
 呼ぶ度になにか、心に迫るものがあるのを感じながら。

──そして……

 歳が大学を卒業して就職をし、俺が大学の三年になった時、それが起こった。
 一緒に遊び回って食事をし、ほろ酔いで某有名デートスポットに行った。
 いつもならカップルでお熱いその場が、誰もおらず怖いくらい静まりかえる中、歳が言った。
『近藤さん。俺の恋人になってくれないか』
 酔っ払っていたのもあるだろう。
 俺は二つ返事だった。
『なる、なりたい! 歳の恋人に俺はなりたい!!』
 その答えを聞いて、初めて抱きしめられた。
『ありがとよ、近藤さん』
 歳の熱い涙が首元にかかったような気がした。
 俺の返事で、泣くほど嬉しいのかとちょっと変な気もしたが、歳が嬉しいのならそれでいいと思った。

 恋人同士になったからといって、俺と歳の関係はあまり変わらなかった。
 一緒に食事に行ったり、遊びに行ったり、それにちょっとだけの軽いキスとか抱き合うとかのスキンシップが増えただけで。
 男同士でもやることはやれることは知っていたから、しないのか? と聞いてみたこともある。
 どこで覚えたんだと言われたが、『俺はあんたを大事にしたいから、あんたが卒業して、落ち着いたらな』とかわされた。
──したかったのは、内緒だ。
 恋人になれたのだから、その先に行きたい──自分に歳を刻んで欲しいと思って。
 大学卒業の日、同期生達の集まりには参加しない、と伝えたら卒業祝いだ、と食事に誘われた。
 夜景の見えるホテルのレストランで少しアルコールも入って。
 その夜、そのホテルの一室で俺たちは身体を重ねた。
 夢のように幸福しあわせだったのを覚えている。

 同棲を始めたのはその一年後。
 同性だからいろいろ難題もあったが、歳とならば苦にはならなかった。

 そして今日が初めての新年。

「じゃあ、寝るか? 初日の出は見たいんだろう?」
「見たいけれど……
 上目遣いに歳を見てみる。
…………
 俺の沈黙に、歳はニヤリと笑った。
「姫初め、ご所望かい?」
 こくりと頷くと、するりと歳の手が毛先を弄ぶ俺の手を取った。
「嬉しいお誘いだ。初日の出よりよっぽど価値がある」
 そこに口付けを落とし肩を抱き寄せられた。
「初音の鶯より、鳴かせてやるから覚悟しな」
 そんな台詞で俺はもう蕩けそうになる。
 初日の出なんかに間に合わなくてもいい──たくさん愛して欲しい。