二卵性
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庇の下は腹の中

ヌヴィレットさんちにメリュたちとお泊りさせられる公爵♀のヌリ♀(先天性女体化)(付き合ってない)
https://privatter.me/page/69f5380a2dc7a の後の話

夜風が冷たい。
リオセスリは回廊の欄干に身を預け、空に浮かぶ月を眺めた。フォンテーヌ廷の街灯は明るいが、それでも夜の月のほうがまぶしく輝いている。
「はァ……
見下ろす景色はすこしばかり騒がしいが、いい夜だ。だが、こぼれるのはため息ばかりだった。
なぜなら、今晩の宿が決まっていないから。
いっそ今から要塞に戻ろうか、とも考えてしまう。どこかの酒場で一晩飲み明かしてもいいが……、しかし明日も朝からフォンテーヌ廷での用があるのだ。酒のにおいを振りまきながらパレ・メルモニアに赴くのも憚られる、というか何らかの法に反する可能性がある。特にあの最高審判官様の前に出るには――
「リオセスリ殿?」
思い描いていたひとの声が降ってきて、リオセスリはばっと顔を上げた。
「ヌ……ヌヴィレットさん。ごきげんよう」
いつもの法服を身にまとった最高審判官様が、怪訝そうな色をかすかに浮かべていた。リオセスリは動揺を隠すためにいつも通りの笑みで応えたが、彼は目を細めて首を傾げている。
「こんな時間に、こんなところでいったいどうしたのだろうか?」
「はは、そりゃあこっちのセリフだよ。こんな夜まで、仕事かい?」
「うむ。用があり、ロマリタイム・ハーバーまで少々……
「巡水船の最終便で帰って来たのかい?ご苦労様」
しかしここは巡水船のターミナルからパレ・メルモニアへ帰る通り道ではない。むしろ逆方向だ。
「最高審判官さんはお疲れだろう?はやく家に帰って休んだらどうだい」
「巡水船に乗っている最中さなかに君の姿が見えた気がしたのでね」
「おっと……
街灯があるとはいえ夜、しかもそれなりに人通りがあるというのに、よく見えるものだ。リオセスリは肩を竦めた。
「明日は朝からパレ・メルモニアで会う予定だったが、今夜はフォンテーヌ廷に宿泊するのかね?」
「まあ……
「宿はどこだろうか?送っていこう」
善意で言っているのだろう。なにせ品行方正な最高審判官様である。だが、今ばかりは都合が悪かった。
「そんな気を遣っていただかなくても結構だ。わざわざご足労いただいたのも申し訳ないくらいだよ」
「そのようなことはない。私が自ら進んでやっていることだ。今夜は観光客も多い。このような夜に一人で歩くのは危険だろう」
例えばここにいるのが自分でなくとも、知り合いの女性であればヌヴィレットは同じことを言っているのかもしれない。要塞の主、水の下の「公爵」の一人歩きを危ないというのは、彼くらいのものだろうけど。
リオセスリはため息を飲み込み、ヌヴィレットに向き直った。本当のところを言わないと食い下がるばかりだろう、このひとは。
「わかったわかった、実は宿がなくってね。今日は客が多いのがわかっていたから予約していたんだが。どうも不手際で部屋が足りなかったらしい」
「宿の名前は?」
一瞬でヌヴィレットの瞳が剣呑な光を帯びる。だから言いたくなかったのに、身分を明らかにしていない女一人の宿泊を断っただけで最高審判官様に睨まれるのは不憫すぎる。
「そう目くじら立てるなって。ちょっとしたミスだろ」
「しかし今こうして君が困っているのは事実だ」
「まあ、俺は野宿でも構わないんだが。明日あんたと会うのにはちょっとな」
「リオセスリ殿、冗談が過ぎる。誰と会うにしても野宿など危険きまわりなく、休むに休めないだろう。それに君は女性なのだから、体を冷やすのもよくない」
若干ズレたことを言われている気がするが、リオセスリが反論する前にヌヴィレットはこう続けた。
「そういうことならばうちに泊まりなさい」
……うち?」
「私の家に泊まるように」
リオセスリの魂胆としては、パレ・メルモニアの仮眠室でも貸してくれないかなというところだった。決して人様の家にずかずか上がり込もうなんて思っていない。
ヌヴィレットさんの家――、とリオセスリは後ずさったが、欄干にブーツのかかとがごつりと当たるだけだった。
「い、いやいや……。罪人を家に上げるとか、最高審判官さんのジョークにしてはタチが悪いんじゃ」
「リオセスリ」
ぴしゃりと遮るように名前を呼ばれ、リオセスリは両手を挙げた。このひとは本気なのだ。断るための文句をぐるぐると頭の中で巡らせ、ようやくなんとかなりそうな言葉を絞り出す。
「ダメだろ、男の一人暮らしの家に女を連れ込むのって」
ヌヴィレットに非がありそうな言い方になったが、一般論でもある。ヌヴィレットは目を瞬かせ、「確かに……」と肩を落とした。
「配慮が足りなかった」
「ヌヴィレットさんの気持ちはありがたいよ。だが、体裁ってものがあるだろう?」
せっかくの好意を無下にすること自体は申し訳ないのだ。リオセスリが慰めるように言い募ると、ヌヴィレットは気を取り直したのか、かすかに口角を上げて微笑んだ。
「そういうことであれば、メリュジーヌたちを家に招こう」
「は?」
「君も彼女たちがいたほうが安心だろう。心配は不要だ」
「えっ、いや、今から家に招くのって相手にも迷惑になるんじゃないか?!」
「君に野宿をさせるよりはずっといい。事情を話せば必ず理解してくれる」
「ま、まてまて、ヌヴィレットさん」
「それとも、彼女たちに無用な心配をかけるつもりかね?」
そのロジックはずるい。そして、メリュジーヌに告げ口されるということは、必ず水の下のシグウィンにも話が行くということだろう。時間差で怒られてはたまらない。
……はあ。わかったよ」
いよいよ諦めるしかなく、リオセスリは今度はため息を飲み込まなかった。

ヌヴィレットはパレ・メルモニアの中層階に居を構えており、その下層にフォンテーヌ廷にて勤務するメリュジーヌ達が多く部屋を借りているらしい。
「だめよ、公爵様。野宿なんて危険だわ!」
「そうだよ、シグウィンも心配するよ」
「人間は体を冷やしたら風邪をひいちゃうんですよ」
「わ、悪かった悪かった」
ヌヴィレットが声をかけたメリュジーヌたちに口々に言われ、リオセスリは反射的に謝った。ちなみに彼女たちの部屋に泊まらせてもらうという選択肢は、家具のサイズが合わないことを理由に却下されてしまっている。
確かにヌヴィレットの家は広々としていて、案内された寝室のベッドもリオセスリとメリュジーヌ三人が横になってもまったく窮屈でないくらいの大きさだった。全体的にシンプルで飾り気はないが、置いてある家具はすべて一級品だ。さすが最高審判官様の家だと感嘆してしまう。
「ヌヴィレット様が声をかけられてよかったですけど、今度同じことがあったら私たちでもいいの相談してくださいね」
「うんうん、公爵様だもの。みんな力になりたがるわ」
「ははは、そこまで言ってもらえるなんて光栄だね」
よくメロピデ要塞の医務室を訪れているオティニエや、ステッカーを貼りに来るマーナ、それからパレ・メルモニアの受付に座るセドナとは顔見知りである。とはいえそこまで好かれていたとは思わず、ヌヴィレットが何か言いつけたのだろうかとリオセスリはベッドの上で考えた。
当のヌヴィレットは、リオセスリを寝室に案内し、「バスルームは好きに使ってくれていい。寝間着は私のものだがこれを。自分の家だと思ってくつろいでくれ」と告げたきり姿を見せていない。セドナ曰く、「レディがお家でリラックスする姿を見たらダメなんだってフリーナ様がおっしゃっていたからですよ」ということらしいが。なるほど、紳士である。
ここまできたら遠慮もいらないかと寝間着も借りることにしたが、ヌヴィレットのものだと思うと落ち着かない。袖も肩も余っているのに胸だけどうにもきついのは自分でも見苦しいと思うので、配慮してもらえるのはありがたかった。
「公爵様はヌヴィレット様とシグウィンの大事な人だもんね」
「ヌヴィレット様も一緒に寝ればいいのに!」
「ダメですよオティニエ。人間はルールが厳しいんです」
「えー?でもヌヴィレット様は……
「もう、マーナ」
かわいらしい声で盛り上がる三人のおしゃべりを聞きながら、ヌヴィレットは慕われているのだなと微笑ましくなる。彼の言ううつくしく純粋ないきものたちと自分とでは違いすぎるので、場違いだなと感じてもしまうが。
「公爵様?もう眠い?」
「明日も早いのよね。そろそろ消灯する?」
しばらく黙って話を聞いていると勘違いされたのか、そう尋ねられて、リオセスリはベッドから立ち上がった。
「俺が消そう。ほら、シーツに入って……
「公爵様は真ん中ですよ」
「はいはい、寝相が悪くならないよう努力するよ」
はるか昔、弟妹たちを寝かしつけたことを思い出しながら、リオセスリは明かりを消して静かにシーツに潜り込んだ。しばらくは幼いささやき声が聞こえていたが、じきに静かになる。
メリュジーヌにも体温はある。三人にくっつかれて、リオセスリも目を閉じて深い呼吸を意識的に繰り返した。

しかし、リオセスリは眠りが浅い性質である。
休むための方法は心得ているが、いつもと違う場所で長く眠ってはいられない。うとうととまどろみながら夜が明けるのを待っているつもりが、だんだんと意識がはっきりしてきてしまう。
……公爵さま?」
ふと、リオセスリの右腕に顔を寄せていたオティニエが、静かにささやいた。
「おきてる?」
……おっと。起こしちまったかい」
「ううん……
短い髪をシーツに擦りつけるようにしたオティニエが、不思議な形の虹彩をゆっくりと瞬かせた。
「お水飲みたいの。ついてきてくれるかしら」
「いいよ」
「ありがとう……
彼女が気遣っているのか、それとも本当に水を飲みたいのかはわからなかったが、リオセスリは頷いて二人でこっそりとシーツから這い出た。セドナとマーナの規則的な寝息が聞こえてくる。
「暗いけど、見える?」
「すこしはね」
「私につかまってていいわよ」
「そうさせてもらおうかな」
カーテン越しの月光はほとんど届いておらず、家の中はしんと静まりかえっていた。マシナリーの音、ボイラーの音、配水管の音、空気管の音――何かしらの音が常に聞こえている要塞とは真逆である。だから神経が張り詰めるのだろうか、とリオセスリは手を引かれながら思った。
「ん……?」
だが、静けさの中に違和感を覚える。最高審判官様の家だ、まさか不審者がいるはずがない――。それにマレショーセ・ファントムの一員であるオティニエが反応していないのだ。暗闇の中でも彼女たちの視界が遮られることはない。
その正体は、リビングルームに差し掛かったところで判明した。
白い影がぼんやりと浮かび上がる。リオセスリは咄嗟にオティニエを庇おうとしたが、この家にいるもうひとりの人物なんて正体がわかりきっていた。
「ヌヴィレットさん……?」
明かりもつけずにソファに腰かけていたのはヌヴィレットだった。
白く長い髪を結わずに垂らし、暗闇の中でも鮮明な色の瞳がリオセスリに向けられる。と思ったら、すぐさま顔を逸らされた。
「すまない」
……?どうかしたかい」
「い、いや……
なぜか歯切れ悪く、どこからどう見ても動揺しているヌヴィレットに、リオセスリは首を傾げた。それから、セドナの言葉を思い出す。
――女の寝間着姿を見たからってそんな動揺するもんか……
むしろ全く気にしないタイプだと思っていたが。とはいえリオセスリのほうもいちおう身を縮こまらせておいた。そういった反応をされると、だんだん気恥ずかしくなってくる。
「こっちこそすまない、ちょっと水を飲みたくてね……
「ああ、好きなものを飲んでくれて構わない。グラスも」
「公爵様、こっちよ」
オティニエは全く動じておらず、「あのグラスを取ってちょうだい」と頼まれるままにリオセスリはヌヴィレットに背を向けた。キッチンのひんやりとした貯蔵庫には水のボトルが何本も並べられており、ヌヴィレットが天然水を愛飲しているというのは事実なのだと思った。
そのうちの一本を開けて、二人でグラスに注ぐ。喉を冷たい水が流れ落ちる感覚に、頭が冴えてきた。
そこで、リオセスリはようやく疑問に思った。こんな夜中に、ヌヴィレットは明かりもつけずにソファで何をしていたのだろうかと。
……まさか」
「公爵様、どうしたの?」
「いや。オティニエさんはこれまでもヌヴィレットさんの家に泊まったことはあるのかい?」
「ううん。お泊りは初めてよ」
「ということは……
頭の隅をよぎった想像を無視できない。だが、リビングルームにはもうヌヴィレットの姿がなかった。しんと冷たく静かな空気と、違和感――大きな何かが足元に横たわっているような感覚だけは同じなのに。
ふあ、とあくびが聞こえて、リオセスリは黙ってオティニエと手を繋ぎなおした。淑女らしいしゃべり方をする彼女だが、こうすると「公爵様の手ってあったかいのね」と嬉しそうにする。
「よく眠れそう?」
「きっとな……
再度ベッドに体を横たえてそう答えたときには、少しも信じていなかったが、リオセスリは目を閉じるとたちまちのうちに意識を失った。それから一度も目を覚まさず、朝を迎えたときには思わず飛び起きてしまったくらいだった。

顔を洗って着替え、軽く化粧をし、髪を整える。いつもの公爵が出来上がったのを見て、お泊り要員のメリュジーヌたちは元気に帰って行った。また誘ってくださいね!と言われたので、楽しんではくれていたらしい。
そしてヌヴィレットと二人で家に残されたリオセスリは、気まずい気持ちで彼に向き合った。
「その……、必要以上にあんたに気を遣わせてしまったみたいだ。今度からは迷惑をかけないよう気をつけるよ」
「私は迷惑をかけられたとは思っていない。むしろ君の助けになれてよかったと」
「いや、ベッドを譲っておいてそれはないだろ」
そう。よく考えてみれば、おかしかった。
客間にあんなにでかいベッドがあるわけがないのだ。ヌヴィレットが頻繁に家に客人を呼ぶとも思えない。最高審判官様の家ということでそんなものかと納得してしまっていたが、つまり、リオセスリは昨晩彼のベッドを占領していたということになる。
要塞では誰のベッドかなんて気にしたことはないし、路上で生活していたころは体を横たえられるだけで十分だった。しかし公爵の地位なんてものまで得てしまっている今、最高審判官様のベッドで眠るなんてますます畏れ多い。
「俺にソファを使わせればよかったじゃないか」
「君はベッドでゆっくり休むべきだった。それに、メリュジーヌたちをソファで寝かせるわけにもいかない」
それはそうなのだが。急に呼び出した上にソファに寝かせるのは申し訳なさすぎる。彼女たちにとってソファがそう窮屈でなくてもだ。
「私は毎晩ベッドで横になる必要はないゆえ、負担にもならない」
「そうは言ってもだな」
「それよりも配慮が足りていなかった点を詫びよう」
「配慮?」
「君の寝間着姿を見てしまったことだ」
「事故だろ。俺は気にしてないよ」
まあ、進んで見せたい姿だったとも思わないが。ヌヴィレットの前に出るなら、なるべく完璧な公爵のままでいたい。だが、あの寝間着はヌヴィレットのものだったわけで、下手に言い訳をして彼の服を貶したと思われるのも避けたかった。
「私は気にするのだ……
しかしヌヴィレットの様子はまだすこしおかしい。
唇をぎゅっと引き結び、視線を逸らされる。あんたが掘り返したんだろとリオセスリは呆れつつ、いったい何に動揺しているのかと訝しみもした。
「別に裸を見たわけでもあるまいし、責任取れなんて言わないから安心してくれよ」
「は……、責任……
「誰にも言わないしさ」
「私も誓おう」
ヌヴィレットはやけに重々しく頷いた。
「責任を取ると」
「いや、取らなくていいんだって。聞いてたか?」
何をどう取るつもりなのか。というか過去には寝間着よりずっと露出度の高い夜会ドレス姿も見られているわけなのだが、基準がさっぱりわからない。今後はうかつな姿を見せない方がいいだろう、本当に。
「まったく、変なことを言わない方がいいぞ。どんな勘違いを招くかわからない。あんたにはわかりきったことだろうが」
思わず説教じみたことを言ってしまったが、ヌヴィレットは気にしていないようで、「そうだな」と否定しない。タチが悪いのでは?とリオセスリは片眉を上げた。
「本当にわかっているのかい?」
「無論、勘違いを招くような軽率な真似はしない」
「ならいいんだが」
「ところで朝食の準備はすでに頼んでいる。食べていくだろう?」
「準備を頼んでから聞くなよ……
全然軽率な最高審判官様である。さっさとお暇して適当なカフェにでも行こうと思っていたリオセスリはため息を吐いた。

結局朝食はヌヴィレットの部屋で摂ったが、問題はその後だった。二人で執務室に向かうかどうかで一悶着あり、なんとか説き伏せたリオセスリは一人でリフトに乗ったのだったが。
「あれ、公爵?」
……フリーナ様」
専用のリフトだから余人には見られない、と言われていたはずなのに。ホールに降りたところで声をかけられてしまい、リオセスリは背筋を冷や汗がつたうのを感じた。専用って、ヌヴィレットさん専用ってわけじゃなくって、水神様もお使いになるってことかよ。
「こんなところで……、いや、まさか」
はっとするフリーナに、言い訳しない選択肢がもうない。逃げたくなりながら、リオセスリはやましいことは全くありませんという顔を作った。実際ない。ないはずだ。ヌヴィレットさんと一緒に降りなくて本当に良かった!
「昨晩はちょっとばかり、最高審判官さんに助けていただいたんでね」
「公爵が助けられるって……あ、危ない目に遭ったのかい?」
「水神様のご心配には及びませんよ。最高審判官さんには軒下を貸していただいただけでね」
「軒下を……?ああ、なるほど」
ゴホン!と咳ばらいをしたフリーナが「そんなところだと思ったよ」とやれやれと首を横に振った。どんな想像をされていたか考えないようにしながら、リオセスリはにこやかな顔を向けた。これで最高審判官さんが少しばかり軽率でも変な勘違いはされないだろう。
……本当に何もなかったのかい?」
なぜかまだ勘ぐられてはいるのだが。
「同じベッドにいたセドナさんがよくご存じかと」
「あー……、いや。メリュジーヌと一緒に泊まらせるって相当じゃ」
「では俺はこれで。フリーナ様もよい一日を」
それは言わぬが花ということにしてほしい。リオセスリはとっととホールを立ち去ったが、どうせ向かう先はヌヴィレットの執務室だ。手を振る受付のセドナには「あれ、ヌヴィレット様はご一緒じゃないんですか?」と訊かれ、もはや逃げ場はないのかもしれなかった。