Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
nozomu_HK
2026-06-08 01:50:40
4525文字
Public
Clear cache
[リクエスト]その体温が好きだから(ヨウテス)
幼なじみな世界の泡のヨウテス
リクエストいただいたものです
1
2
どうしてこうなった。ヴェルト・ジョイスは頭を抱えたくなった
客人を受け入れることも多いため、比較的に清潔を保っているエントランスホール。それが、今は空になった缶や瓶がテーブルの上を転がる凄惨な光景が広がっている
そんな状況を作り出した赤髪の酔っぱらいはソファを我が物顔で陣取り、隣に座る青年に絡んでいた
ダークブラウンの瞳と髪色の温厚そうな好青年。名をヨアヒム・ノキアンビルタネンと言う彼は、フィンランド人─エリアスの息子でありテスラの幼馴染だ
彼が何故ここにいるのか。一言で言ってしまえば父の遣いだった。なんでも渡さなければならない書類があったとかで、遠出中の父に代わり息子であるヨアヒムが来たのだった
ヨアヒムは今ロンドンから離れているらしく、偶々帰ってきたタイミングだった。テスラも会うのは久しぶりらしく、ヴェルトそっちのけであれよこれよと話が進み、気づけば酒盛りが始まっていた。最も、飲んだのはテスラだけだが
「飲みすぎだぞ。テスラ」
「なによ......。まだぜんぜんのんでないわよ.....」
口調こそしっかりしているもののテスラの目は虚ろで、ヨアヒムを見ているつもりなのだろうが微妙に視線が合っていない。
「取り敢えず水を飲んでくれ......。飲めるか?」
「んぅ.....」
懲りずに手を伸ばすテスラから酒を遠ざけながら、ヨアヒムは慣れた様子でテスラに水を飲ませる。テスラはヨアヒムに凭れかかり、甘える子どものようにヨアヒムの持ったコップから水を飲んだ
──ただの幼馴染にしては距離が近くはないだろうか
ヴェルトは、遠目から二人の様子を眺めながら考える。幼馴染とはいえ年頃の男女だ。もっと遠慮や距離があるものではないだろうか。少なくともヴェルトの目には、例え姉弟でも踏み込まないであろう一線を超えているようにすら見えた
そんな疑問を持った所で答えてくれる人はいない。アインシュタインは一足先に自室に帰ってしまった
どちらにせよ、このままでいるのは少々気まずい
「......紅茶でも淹れてこようか?」
「すまない。助かるよ」
耐えかねたヴェルトがテスラの酔いを覚ますための提案をする。ヨアヒムは空になったコップと今にも寝てしまいそうなテスラを抱えながら答えた
ヴェルトは頷き、ソファから立ち上がると一旦その場を後にした
キッチンに着くと湯を沸かし、その間に準備を進める。人数分のソーサーとカップをトレーに並べ、ポットに茶葉を入れた。あれだけ騒がしかったテスラの声も聞こえない。夜の静けさの中、かちゃ、かちゃ、と紅茶を準備する音だけが響く
準備を終え、ポットに沸いたばかりの湯を注ぐ。トレーを落とさないように細心の注意を払いながら、二人の元に戻った
「ありがとう。ヴェルト」
「あぁ......。テスラは......寝たのか?」
ヨアヒムは頷いて肯定する。テスラは酔いが回ったのか、ヨアヒムの肩に凭れて寝息を立てていた
テーブルの上に散乱していた缶や瓶は端にまとめて置かれている。ヨアヒムが片付けてくれたのだろう
空いたスペースにトレーを置き、ティーカップを二人の前に置いた
「すまないな」
ヨアヒムはカップを手に取る。疲れたのか険しい表情をしていたが、一口飲むと緩やかに微笑んだ
「美味しいよ」
「それはよかった」
そう言ってヴェルトも紅茶を飲んだ。程よい暑さと優雅な香りは、ヴェルトの心を落ち着かせてくれる
「......テスラも寝てしまったし、部屋に連れていくよ。部屋は上か?」
「ああ。それなら......」
言いかけてふと、言葉を止めた
テスラの部屋は二階にある。一階とは違い、そこは普段部外者が入らないのをいいことに散らかり放題になっていた
部屋に入らなかったのか、外に出すだけ出して放置しているのかは定かではないが、ピザボックスは積み上げられ、ゴミ箱から紙屑が溢れ落ちている。特筆すべきは、ブラジャーやハイソックスが脱ぎ捨てられていることだ。とても客人に見せられるような状態ではない
「あー......。二階まで連れて行くのは大変だろ?空き部屋があるからそこに寝かせたらどうだ?」
「そうだな。使ってもいいというならそうさせてもらおう」
ヨアヒムはテスラを起こさないようにソファから立ち上がる。支えが無くなったことによって揺らいだテスラの体を静かに横にしてやる
ヨアヒムはテスラの腕を自身の首に掛け、背と膝裏に腕を差し込み、抱える。所謂姫抱きだ
「世話をかけたな。おやすみ」
「あぁ」
ヨアヒムはヴェルトの示した部屋へと向かった。一人残されたヴェルトは、二人を見送りながら紅茶を飲んだ
******
テスラを起こさないように強く抱き締めながら空き部屋のドアを開ける。しっかり閉まっている訳ではなかったため、比較的楽に開けることができた
あまり使われていないせいか少し埃っぽい
ベッドにテスラを降ろし、布団をかける。テスラは気持ち良さそうに眠ったままだ
「......」
ヨアヒムはテスラの頬に触れる。愛おしく思うように、壊れ物を扱うような手付きだった。自然と笑みが零れる
テスラとの付き合いは長い。彼女の家に泊まることも何度もあった。ヨアヒムにとってテスラは姉同然だった
けれど、成長するに連れてテスラに抱く感情が友愛や親愛という言葉で言い表せないものであると気付いてしまった
きっと今以上にテスラと会える時間は少なくなってしまうだろう。それを思うとなんとも離れ難くなってしまう
「んぅ......」
擽ったかったのかテスラが小さく呻いた。瞼が緩やかに持ち上がる
「ヨアヒム.....?」
「すまない。起こしてしまったか」
テスラはまだ寝惚けているようで、声にいつもの覇気がなく、今にも目を閉じてしまいそうだった
「......どこにいくの?」
「今日は帰るよ。君は寝るといい」
「そう......」
ヨアヒムが帰ると聞いてテスラは悲しそうな顔をした。帰らないでと物語る表情にヨアヒムは眉を下げて笑う
「明日も来るよ」
ヨアヒムはテスラを慰めるように頭を撫でる。暖かく大きな手はテスラの安心を誘った
「......約束よ」
「あぁ。約束だ」
ヨアヒムはテスラの手を取り、両手で包み込む
テスラは安心したのか再び目を閉じた。暫くすると寝息が聞こえてくる
「おやすみ。テスラ」
ヨアヒムは柔らかな声で囁いた。布団をしっかりと被せて、今度こそ起こしてしまわないように部屋を後にした
夜の静けさの中帰路に着く。暫くは一人きりの時間だ。その中でヨアヒムはゆっくりと過去を思い返すことにした
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内