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あいづき
2026-06-01 18:04:23
Public
創作企画/エルダーの庭に眠る
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お茶会は突然に
✦作品集
常設イベント「お茶会はお気に召すまま」
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Ep.01 レモンとレース
ここ、プルーヴェリテに来た目的である一つの重要な式典がつつがなく終了し、ここから本格的に始まる婚姻への道が開けた。私個人、今が全員スタートに立ったのだから大きな焦りはないが、個々人の性格によっては思う所はあるだろう。特に、人間側である姫君達の方が大きなものを背負いここに来たという者が多い印象がある。
そんな中、一通の封筒が届く。誓約式も終わったばかりなのに何が来たのか、と、その封を切ろうと裏返せば、そこには金色の封蝋が。封蝋に使用されている印は、毎日目にしているヴェリテス城のものだ。今までも、ゲームを主体にした茶会や、歓迎祭についての報せなど様々なものがあった。だから、今回もきっと何かの催しなのだろうと思い、軽い気持ちでテーブルに置いてあるペーパーナイフでその封を切る。
そこに書かれていたのは、姫君と二人で行う茶会の報せだった。
指定された日付と、姫君が背負う国と、その名。
初めて届いた封筒に書かれていた相手の名前は「ティア・フォンターナ」であった。
「ティア嬢ですか
……
」
零れた言葉の風は穏やかに流れ、正直なところ気が抜けた。それは悪い意味ではなく、何度か会話を重ねたことのある相手であれば、必要以上に気を張る必要がないからだ。それに、彼女には何が似合うのか、容姿を見ていれば分かる。清楚な彼女の魅力を引き出すもの。それでいて、姫君である立場に相応しいものは何か。時間はある。今日明日の話でもないから、自国の協力も得て仕込んでおけばいい。
「楽しみですね」
会話も、茶会も、催しも。国全体で婚姻の成功数を上げようという政治的意図も見えつつ、交流の幅が広がることは喜ばしいことだ。だからこそ、口角も僅かにあがるというもの。
──茶会当日。
指定された場に行けば、時間の前にも関わらず律儀な彼女は先に待っていた。もしかしたら、落ち着かなかったのかもしれないが。それは、私の知るところではないし、詮索するのも良くない部分だ。いつものように真白のワンピースに杖を携える彼女は私の顔を見て明らかに安堵の表情を浮かべた。
「よく知っている殿方で安心しました。クリスティアン様となら、緊張せずにお話しできそうです」
素直だ、と思う。それを表情に出すことも、声音に乗せることも。計算でないことは誰の目にも明らかであるから。だから、私も素直な心根で対応が出来る。
「私こそ。本日はよろしくお願いいたします」
手を差し出せば、彼女は意図を理解して手を重ねる。互いに足の不自由さを理解しているからこそ、ウィークポイントに対する暗黙の了解がある。そのままテーブルまでエスコートし、彼女を座らせる。自身が席に戻る前に、彼女の目の前でぽんと神術により収納していた手のひらサイズの箱を取り出す。彼女の髪色を模した水色の箱に、レモンイエローの装飾を施したものだ。
「折角お相手が分かっていますので、こちらを。親愛の贈り物と思ってください」
差し出せば、零れ落ちそうなほどに見開かれた瞳が、私と箱を交互に見ている。だからこそ、笑顔で一つ頷けば受け取ってくれた。
「開けても構いませんか?」
「どうぞ」
その言葉を受けた彼女の指先は緊張で少し震えている。でも、箱を開いたと同時に、その表情も明るくひらいた。中には真白なレースリボンの端に、真珠があしらわれているシンプルな装飾品が綺麗に畳まれている。
「まぁ、こんなに素敵な品を頂いてもよろしいのですか? あ、ありがとうございます」
「構いません。ティア嬢のために用意したものですから。それに、形を確定していませんので髪への装飾だけでなく、お好きに使ってください」
「はい、是非。クリスティアン様のそのお気持ちが、わたくしはとても嬉しく思います
……
あの、クリスティアン様、実はわたくしもお渡ししたいものがあるんです」
「私にですか?」
思わず、面食らう。自身が用意するのは当たり前のこと、であったから。それが彼女から帰ってくるとは思わなかったからだ。通常、政治的意図が多少ともあればこういった事をするのは当たり前ではあるが、彼女からその香りを感じたことはない。重圧はあるのかもしれないが、この茶会はそれとはまた性質が異なるからだ。真意が分からず首を傾げていると、彼女から取り出されたのは小さな箱。
「風の噂でお誕生日の日付をお伺いしたので、こちらを
……
その、ご迷惑でなければ」
彼女の言葉に、合点がいく。どこで聞いたのか、というのは私にも分からないが。それでも、寿命が短い人間からしたら、生誕した日を祝うというのは重要な事なのだろう。書物によると、毎年祝う国もあるのだとか。人であるからこその彼女のその心に感謝をしながら、箱を受け取りその中を見れば、レモンクォーツがあしらわれた栞がそこに収められている。
「美しい栞ですね。ありがとうございます
……
読みかけの本を作る事自体、楽しくなりそうだ」
ふと微笑みを向けて、箱に戻す。今ここに読みかけの本は無いし、傷付けてしまったり、茶会中に汚してしまっては大変だからだ。
「ぜひ、読書の時間の楽しみに加えていただけましたら、これほど喜ばしいことはございません」
「それは、結構な殺し文句ですね」
わざとらしくウィンクを一つ渡してから、自分の席に着く。改めてテーブルの上を眺めれば、私好みの菓子があちらこちらに並んでいる。話を聞けば、彼女が事前に使用人に頼んで私好みの菓子を用意してくれていたらしい。その心に再度感謝するとともに、私たちの茶会は始まる。
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