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eclipsis
7904文字
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ミホペロ
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Ma belle
原作終了後のif世界線
※🦅👻の間に赤子が生まれて🦇様が顔を見に行く話
※🦅も🦇様も若干性格が優しくなっててキャラが変わってるかもしれません
2023年に書いた話に加筆修正した話です
1
2
濃い灰色の雲が辺りに満ちて静かな夜が訪れている。
ミホークは城の廊下を歩いて、子ども部屋に向かっていた。手には昼間持っていた木のオモチャがある。部屋の前に着くと木の扉が少し開いていた。その隙間から柔らかい光が漏れている。ゆっくりと扉を開け、音を立てずに部屋の中へ入った。
部屋にはベビーベッドと、そのすぐ傍にペローナが立っていた。就寝前の夜着の姿でベッドの中に視線を向けている。現れたミホークに気づいたら、ニコリと微笑みかけ再び視線をベッドに移した。ミホークも彼女と同じように口角だけ上げて微笑んだ。
ミホークは部屋へ歩を進めると近くの机に持っていたオモチャを置いた。四つ足でちょこんと立っているクマで、顔にツギハギ模様がしてある。これは完璧に母親の趣味だ。赤子は好み以前に、まだ言葉すら喋れない。けれど机の上には、似たようなツギハギ模様のあるオモチャが何体か置いてあった。それらを見てミホークは鼻で息をするように小さく笑った。
机に寄り道していたミホークはベビーベッドに足を向けた。近づいて中を覗くと、赤子が眠っている。
どこもかしこも丸々としていて、特に真ん丸な頬を見たら触りたくなった。静かに手を動かして優しく指の背で頬を撫でた。それを見て、傍に居るペローナがクスクスと口を開けずに笑う。赤子は起きない。すっかり熟睡している。
ミホークはペローナへ視線を移した。穏やかに赤子を見つめる彼女は、長い髪を甘く編んで自然に片側へ流している。当然だが出会った頃よりペローナは大人になった。ミホークの記憶に強く残る彼女の姿は大振りな巻き髪を軽やかに、少しお転婆に、揺らしていた。今は落ち着いていて、何だかその毛先まで慈愛に満ちている。
ペローナの変わり様はミホークにもそれを芽生えさせた。
ミホークは更に彼女の傍へ近づき、ゆっくりと背後から抱き締めた。ペローナは特に驚かず、胸の前で交差された男の腕をたおやかな手つきで撫でる。
撫でられる感触にお返しとばかりに、ミホークは目の前にある桃色の後頭部へキスをした。
一つの時代が終わり、戦の無い日々がもう随分と長く続いている。
ミホークは人生の大半を海で過ごし
流離
さすら
った。様々な戦場を渡って、色んな人々と出会った。そして別れがあり、裏切りもあった。その境遇は彼にとって無益な疲れを生みやすかった。だからミホークは己に連なる者を求めなかった。守るべき者ができるのは、孤高の身としてはただ煩わしいからだ。無益、あるいは無駄になるものは要らなかった。
けれど、ペローナに出会い彼女を愛した後は信条が変わった。平穏な暮らしが欲しいと思った。戦が無くなった後その想いは輪をかけて強くなり、今ではこうして彼女との間に赤子も生まれた。
――
平穏な暮らし。ペローナと赤子、家族。これ以上求めるものは無いと、ミホークは確信した。
少し昔を思い返すと腕の中の存在が更に愛しくなった。ミホークは薄く目を閉じると抱き締める力を強くする。ペローナがほう、と息を吐く音をさせた。
「ホロホロ
……
ちょっと寂しいな」
満たされて出た溜息かと、ミホークは思ったのに。予想外な事を告げられ、腕の力を少し緩め眼下のペローナを見た。娘が少し身体を捩ってミホークを見上げる。
「モリア様のことだよ。すぐ帰っちゃったからさ、泊まっていけばよかったのに」
そう言われて、昼間に会った大男の姿をミホークは思い出す。孫を抱いたと、はしゃいでいた様に見えた。
「
……
奴に合う寝床はこの城には無いぞ」
別に泊まらなくて良いとは言えず、事実を述べるだけにした。その程度にはミホークにもモリアへ配慮があった。すると、ペローナが顔をむっとさせた。
「鷹の目、作ってやれよ」
「何故おれが」
「木でオモチャ作れるじゃん。ベッドもいけるだろ」
「
……
おれは家具職人じゃない」
「簡単だって!モリア様もきっと喜ぶぞ!」
「おれがアイツを喜ばせる意味はあるのか」
ミホークがうんざりしたように吐き捨ててしまったら、弾んでいたペローナの雰囲気が曇り始めた。
「モリア様は大事な家族だからだよ。意味はそれで充分だ。
……
お前もそうだろ?」
ペローナが眉を下げて寂しげに告げる。家族。その言葉を聞いてミホークは一度ピクリと身動ぎし、両目を気持ち見開いた。
ミホークの求めるものは平穏な暮らしだ。それは家族と同義で、つまりペローナから生じる絆だ。だとするとモリアもきっとそれに値する。
答えが簡単に出てしまった。けれど、口に出すのは何故か引っかかる。三日月のような吊り上がった口。そして不気味な鳴き声染みた高い笑い声が、何処かから木霊している気がする。
急にぎこちなくなったミホークを見て、ペローナが更に眉を下げた。不安そうな娘の顔にダメ押しされたのか、ミホークの強ばっていた口が開く。
「
……
お前が大事だと思うならば、おれも
……
まぁ
…
、同意する」
ミホークのその告白を聞いてペローナの丸い目が更に丸くなるのと、彼女が吹き出したのはほぼ同じであった。
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