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燈 ともしび
2026-05-31 20:57:10
3772文字
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ぎゆさね【こい、ねがう/こい、こがれる】
キ学軸。ゆっくりと愛を育む。
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【こい、こがれる】
「抱くぞ」なんて言うから、そのままベッドに連れ込まれるかと思ってた。
いや、実際に抱かれる覚悟をしてきていたのだからそれで良かったのだけれど、俺が思う以上に冨岡は紳士だったらしい。あれだけ盛り上がっていたのに、冨岡の第一声は「風呂に入る」だった。綺麗な身体で不死川を抱きたい、と。
ありがたい。ありがたいが今それか? このタイミングでか? と突っ込みたくなったのは俺だけだろうか。
分かってはいる。男同士ではすぐに抱き合えず、準備が必要なことを。俺もこっそり調べたから分かってはいるんだ。でも気持ち的というか盛り上がりというか。こう、ムードってやつゥ、と歯噛みしたくなる。あと覚悟が引っ込んでしまいそうな怖さも。
結局、ムード云々より冨岡の言うことのほうが正しいし合理的だからと自分を納得させる。あのままベッドになだれこんでいたら大惨事になるだけだろうし。
冨岡の匂いがするベッドの上で恥ずかしさと混乱でウーウー唸っていると、いつの間にか風呂を終えた冨岡が隣に立っていた。表情はいつものスン、とした顔。でも俺を見る視線は熱を帯びたままだったからほっとした。
本当は少しだけ怖かったのだ。風呂に入った冨岡がやっぱり無理だとなったらどうしようって。俺はガタイが良いし傷だらけだし、お世辞にも綺麗とか可愛いってタイプではない。正気に戻った冨岡に拒否されるのが怖かった。
だって俺はめちゃくちゃ覚悟してきたのに。男だけど男の冨岡に抱かれたいって。無理とか言われたら立ち直れない。
でも今、冨岡からはまだ熱を感じる。俺に対してじわじわと炙られるようなそんな熱を。それなら俺も早く支度をしなければ。
「ふ、風呂借りるな」
噛みそうになりながらそれだけ言うと、冨岡は何かをまとめて差し出してきた。
前にも借りたことのある寝巻きがわりのスウェットの上下。パッケージされたままの新品のパンツ。そこまでは良い。標準的な着替えだった。問題はその上に載せられた紙袋のほう。
「これ
……
」
「準備が必要なんだろう? 用意、した」
恐る恐る中を覗くと下の準備用の洗うやつと、男女向けより粘度が高いと書かれた専用のローション、あと拡張用らしい棒状の玩具。
多分そうだろうと思っていたが実際に見ると衝撃が半端ない。恥ずかしさで目が潤みそうになる。
でも。
でも、これを望んだのは俺だから。
冨岡に抱かれたい、抱いて欲しいと望んだのは俺だ。なら、これは必要な準備であるのだ。
「本当は俺がやりたい」
「え」
覚悟を決めて風呂場へ向かおうと思っていたら冨岡がポツリと呟いた。
「不死川を抱きたいし、その過程を含めて全部愛したい」
「でも、不死川は嫌がるかと思った」
嫌がることはしたくない。
それはこの鍵を渡される時にも言われた。俺の嫌がることはしたくないのだと。
……
ほんと、お前ってやつはよォ。
愛され過ぎてて自分のことなのに怖くなるわ。
「冨岡ァ」
油断していた冨岡の頭を胸にぎゅっと抱きしめる。愛おしさが溢れて抱きしめている頭のてっぺんに何度もキスした。
「準備、ちゃんとしてくるからよォ」
「
……
うん」
「ちゃんと
……
俺のことを愛してくれ」
「うん。世界一、愛する。大切にする」
笑って、でも二人とも少し泣いていた気がする。まだ早いっての。
これから。ここから始めるんだろ。なあ、冨岡。
抱きしめていた腕の力を抜くと冨岡はこちらに顔を寄せてくるから軽く触れるだけのキスをして、それから風呂場に向かった。
もう、覚悟は出来た。
世界一、冨岡に愛される覚悟だ。
ヘロヘロになりながらもなんとか準備を終えて風呂から出れば、何故か冨岡はベッドの上に正座していたから爆笑してしまった。これじゃどっちが抱かれる側なのか分かんなくなるだろうが。
おまけに
「不束者ですが」
なんて始めるから笑い過ぎて窒息するかと思ったわ。
でも、これが俺たちか。俺たちのやり方なのかもな。だってさ、俺今、すげえ幸せで楽しくてドキドキすんだよ。冨岡と二人。初めてのことをこんなに笑って楽しく出来るなんて最高でしかないだろ。
「冨岡ァ」
「うん」
「するか」
「うん。抱きたい」
「いいぜ。抱けよ。欲しいもの、お互いに受け取ろうなァ」
くすくすと笑いながらもつれるようにベッドに寝転んだ。
それは泣き笑いの、初めてな幸せな夜のこと。
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