揺籃に微睡んで

外は雨。
休日の一日、睦言を交わしながらしっとりと時を過ごす二人。

この作品は2026年4月4日・5日に開催された、ぐだぐだ鯖WEBオンリー「ボイラー室横より愛をこめてW~二回目~」での白殊独自のリクエスト受付企画【白殊に歳勇小説リクエストを投げつけようVol.2】でリクエストいただいたものです。

◆リクエスト内容◆
『夢の語り部』の設定で、雨の日に1日中ベッドで怠惰に過ごす土近。
もちろん昨夜は共寝。

しっとりしっぽり雨の日の二人をお送りしました。
R18との指定はありませんでしたが、手が滑ってこの公開部分以降R18展開になりました。
書籍に収録する際にはR18部分を載せます。

『夢の語り部』( https://privatter.me/page/69566231a7634 )設定
現代転生パロ。
近藤さんのが年下設定(二歳差)で、1臨・黒の剣士の外見です。
土方さんには記憶がありますが近藤さんには記憶無し。

揺籃ようらん微睡まどろんで



 微かに身動みじろぎをして目を開けると、俺に腕枕をした歳の寝顔が目に入った。
 昨夜俺たちは身体を重ねそのまま眠りに身を委ねた。
 いつもは歳の方が先に目を覚ましていて俺に寝顔を見せてくれることは少ないが、今日は俺の方が早かったらしい。
 なんとなく嬉しくなってじっとその顔を見つめる。
 影を落とすくらい長いまつげが呼吸に合わせて微かに揺れて、惚れ惚れするような端整な顔立ちだ。
 これが自分の恋人なのだと思うと、いまでも胸がときめく。
「ん……雨か……
 微かな呟きと共に歳が目を開けた。
 言われて気付いた。
 耳を澄ませば確かにパチパチと窓を叩く雨音が聞こえる。
「気付かなかった。おはよう、歳」
「おはよう、近藤さん」
 声をかければ優しい微笑みが返ってきた。
 触れ合う素肌の温もりが心地よくて歳の肩に頭を押しつけて背に腕を回す。
「今日は休み、だよな」
「あぁ。今日も、なんと明日もだ」
 甘えるようにそう言ってみれば、悪戯っぽく大袈裟に言って、歳も俺の背に腕を回して抱き寄せてくれた。
「俺も、同じ」
 お互いわかりきっていることだけど改めて確かめ合ってぴったりと身体を寄せる。
「今日はずっとこのままでいよう」
「俺はやぶさかじゃ無いが、メシはいいのか?」
「いらない」
 お腹が減っているかいないかと聞かれたら減ってはいるけれど、それよりも歳とベッドでこうしていたい。
「そうか」
「歳は?」
 言うからには空腹は感じているのだろう、聞いてみれば歳は俺の髪をそっと撫でたあと額にキスをした。
「腹が減ったら、あんたを食わせてもらうから大丈夫だ」
 そのままスッと俺の首筋を舌が這う。
「お手柔らかに」
 嫌じゃないから、そのままされても構わなかったけれど、ちゅ、と音を立てて鎖骨に終わりのキスをされて、歳の唇はそこで止まった。
「しないのか?」
「まだ腹は減ってねぇから、あとで、な」
「俺はいつでもしてくれていいからな」
 鼻をすんと鳴らして歳の頭に手を回して甘える。
「ふふ」
 歳は微かに笑って柔らかく俺にキスをしてくれた。
 うっとりとそれを受けて目を細める。
 外の雨音はより激しくなってきたようだが出かけない俺たちには関係がない。
「ん……
「どうした?」
 俺が少し漏らした声に、歳はすぐに反応した。
「食べるものはいらないけど……飲み物が欲しいから取ってくる」
 昨夜随分啼いたから、少し喋って喉が枯れているのを自覚して、ベッドから抜け出そうとしたら腕を掴まれて引き戻された。
「俺が取ってくるからあんたは寝てろ」
 足元も怪しいだろう? とベッドに収められた。
「うん……
 歳はキッチンに行き、カランと氷の音をさせてピッチャーでレモン水を持ってきてくれた。
 それがグラスに移されるのを見て、身体を起こす。
「近藤さん」
 グラスを渡されるかと思ったら、歳はそれを口に含んで俺の口を塞いだ。
「ん……
 唇とそこから伝わる熱は熱いのに流れ込んでくる温度は冷たくて、不思議な気持ちになる。
「美味しい」
「ただの水だぜ?」
 グラスに残った分を飲み干してピッチャーをベッド脇の収納付きテーブルに置き、歳は俺の横に座った。
「歳がくれるものはなんでも美味しいし嬉しい」
 歳の膝に頭を乗せてその顔を見上げる。
「そりゃ、嬉しいな」
 腕を伸ばして唇に触れたら、その手を捕らえてまた優しいキスが降ってきた。
 そのまま背に手を回され二人でベッドにもつれ込む。
「もう動かなくていいよな」
 腹這いになって頭を上げ、半身を起こして肘を付き俺の方を優しく見つめる歳に甘えも混じった声で囁いた。
「あぁ」
 歳の片手が伸びてきて俺の髪を軽く撫でた。
「歳は、俺の髪が好きだな」
 自分では余り好きではないけど、こうして歳が愛してくれるのなら、悪くないと思えるようになってきた。
「綺麗だからな、あんたは。他の人間に見せるのがもったいないくらい魅力的だ」
 サラッとそんなことを言ったあと、俺の肩を抱き寄せた。
「──時々、他人ひとの目に触れないよう、閉じ込めてしまいたくなる」
 俺に対してそんなに、と思うくらいの真剣で思い詰めた言葉にほんの少しだけ背筋が冷えた。
 でも──
「歳になら、閉じ込められてもいい」
 俺にとって歳が世界の全てだから。
 歳に振り向いてもらえなくなったら俺は枯れてしまうだろうから。
 自分からも歳の胸に身を投げて縋りついた。
 こういう時、俺はずるいと思う。
 歳が俺をどんなに大切に思ってくれているか、俺は知っている。
 歳が俺を捨てないことも十分にわかってる。
 でも、それでも、俺は──
「そんなこた、しねぇよ」
 する必要もない、と歳は微かに頭を振って穏やかな表情かおに戻った。
「残念」
 その顔を見つめて、俺はぽつりと呟いた。
「今はこうして、二人きりだからいいじゃないか」
 歳は俺の額、頬、首筋と転々とキスをして尚のこと抱きしめてくれた。
「うん……でも……
 俺は自分からも歳にキスをしてその広い胸に身を預ける。
「俺だって、歳を独り占めしたい」
 その優しい表情を、笑顔を、他の誰にも向けて欲しくない。
 俺だけを──見つめて欲しい。
「俺には、あんただけだ」
 ぎゅう、と更に強く抱きしめられる。
 少し苦しいくらいだけど、その苦しさも嬉しさに変わるくらいだ。
「俺も……
 囁くように言って歳の背に腕を回して力を込めた。



 しばしお互いの体温を分け合っていたけれど、雨のせいもあってか空気が冷えてきているような気がした。
「少し、寒い」
 呟けば、歳は頷いてベッドの隅に追いやられていた掛布を引き寄せた。
「俺は少し腹が減ったかな」
 俺の鼻先にちょんと触れるだけの口付けをして歳が微笑む。
「食べるなら、温めてから」
 俺は自分から歳の首筋に顔を埋め、そこに噛み痕を残した。
「トロトロになるまで、温めてやるよ」
 その意趣返し、というように歳は俺の腰を抱き寄せて胸元に華を散らした。
「ん……お願い」
 ベッドに縫い付けられて、歳の指が俺の肌を這う。
 徐々に熱を持つ自分の身体とその指先を感じながら、俺はゆっくりと目を閉じた。

 雨は、まだ止む気配はない──。