ファルカさんに恋をした。
でもアピールは上手くいかず、のらりくらりと躱される日々。人間の寿命は短い。このままだとファルカさんの妻の座を誰かに奪われるかもしれない。
そんなのは嫌なので、強硬手段に出ることにした。
フェイの間で伝わる恋のおまじないがある。準備に時間は掛かるが、かなり強力で、必ず恋は実ると言われているくらいのものだ。
周りから怪しまれながらも、材料が揃ったので、夜明かしの墓で儀式を行う。
妖精語で呪文を唱える。何かが僕の身体に纏った気がした。
多分、これで効果を発動できたはずだ。早速ファルカさんの元に向かわなければ!
────────
西風の砦に向かうと、ファルカさんは書類と格闘していた。飽きて来たのだろうか、ペンを回している。これなら声をかけてもいいだろう。
「ファルカさん」
「うおっ!」
声をかけたら驚いたのか、手に持っていたペンが宙に飛んでいった。ペンはくるくると回転し、目の前を通過していき、シャツの隙間に突き刺さった。
「
………」
「
………」
時が止まった。胸はある方だが、ペンは谷間に突き刺さっている。ファルカさんもペンをじっと見つめることしか出来なかった。
居たたまれなくなり、ペンを抜く。
…これは、返さないと、いけないよな
…?
「
……ど、どうぞ」
「
………えっ! いや、それは
…」
「こ、これは事故です! 急に声をかけた僕も悪かったですし、忘れましょう!」
ただ、ペンを返すだけなのに、顔が熱い。ペンをファルカさんに押し付ける。ファルカさんは神妙な面持ちでペンを受け取った。
「
…その、失礼しました!」
変な空気に耐えきれず、退散することにした。
…ちょっと、今は顔を合わせられない。
ファルカさんの呼び止める声はしたが、構わず走っていく。
「フリンズ、ちょっと待ってくれ!」
斜面を登りきった所で、呼び止められた。走ったら少し落ち着いたので振り向くと、ファルカさんは斜面の下にいた。
「その、落ち着いて
…………」
「ファルカさん?」
「
………黒、か」
………黒? なんの事だ?
ひゅう、と風が吹く。
………風?
ばっ、とスカートを押さえつける。
「
……見ましたか?」
「いや、見てないぞ!」
「白々しい嘘をつかないでください! 黒って言ってたじゃないですか!」
「
………その、とても眼福だった」
「フォローになってません!」
もう恥ずかしくて顔も見れない!
振り向いて走り出すと、石に躓く。あっ、と思いながらも視界が反転する。
「フリンズ!」
倒れる間際、太い腕が支えてくれた。身体が引き上げられ、ファルカさんと密着する。
心臓がバクンッ! と叫ぶ。
…こういうところが好き! 格好いい!
どうしよう、心臓の音、聞こえないだろうか。むにゅりと握られている。
…握られている?
「
………うーん、デカイ」
ファルカさんの大きな手が、僕の胸を揉んでいた。
「
…………っ!」
「あ、いや、わざとじゃないんだ!」
ファルカさんは慌てたように、パッと離れていく。立ち上がる事も出来ず、地面に座り込んだ。
「
…いや、本当にすまなかった。おっさんに触られても不快だよな」
「
………」
「
…………その、フリンズ?」
「
……ファルカさんの、えっち」
そういってランプに潜り込んだ。ファルカさんの叫ぶ声がするが、知るか!
「申し訳ないと思うなら、夜明かしの墓まで運んでください!」
耳を塞いで叫ぶ。恥ずかしくて、もう何も聞きたくなかった。
ファルカさんは諦めたようで、ランプが持ち上がる感覚がする。ランプ越しに大きな手の感触が伝わる。
…この大きくて、固い手が、好き。
頭を手に押し付けるように、傾ける。ゆらゆらと揺れながら、静かな時間を過ごす。
「ここを乗り越えないといけないな。よいしょっと!」
ぎゅう、と握りしめられて、固いものに包まれる。
…何が起きているんだ? 少し外の様子を覗き見る。
目の前には、胸板があった。
…ファルカさんに抱き締められている?!
顔に熱が集まる。心臓がうるさい。
…ファルカさんのおっぱい、大きくないか?
ああ、もう、早く着いてくれ!
夜明かしの墓にたどり着くまでの僅かな時間がとても長く感じた。
────────
「フリンズ、着いたぞ」
「
………」
「その、本当に、すまなかった。顔を見て謝りたいんだ。
…出てきてくれないか?」
まるで、大型犬がしょぼくれているようで、絆されてしまう。
…仕方ない、出るか。
ランプから出ようとして、何かが引っ掛かった。ファルカさんに飛び付くように、ランプから飛び出る。
「きゃっ」
「おっと」
目の前に、大きな胸板が、あった。すごく、固くて、厚い。見上げると、ファルカさんの顔が目の前にある。整った顔立ちに見とれてしまう。
…格好いい。
見とれていると、お尻からむにゅり、と揉まれた感触がした。
この流れ、まさか
…。
恐る恐るお尻を見ると、大きな手がお尻を揉んでいた。
「あ、いや、これは、飛び付いてきたから、つい
…」
「
…………」
「その、とても安産型な、いいお尻だぞ」
「
………えっち!!」
ファルカさんを部屋から叩き出した僕は悪くない!!
なんとか気分を落ち着かせて冷静になる。
今日は色々とおかしい! ペンはまだ、いい。スカートも仕方がない。でも、おっぱいやお尻を揉まれたのは変だろう!
…もしかして、これは、もしかすると
…。
慌てておまじないについて調べると、端に小さく注意書きがあった事に気づいた。
“恋のおまじないをすると、好きな人とラッキースケベが起きるよ! これで既成事実を作れば責任を取るしかなくなるね! 受精したら効果が切れるよ!”
「“誰だこんな糞みたいなおまじないを作ったやつ! 燃やしてやるから出てこい!!”」
静かな夜明かしの墓で、奇っ怪な現象が起きた。幸いな事に、妖精語で叫んだため、罵声は誰にも聞かれずに済んだ。
恋のまじないをしたら、ラッキースケベが起きるようになった➁ | Privatter+
https://privatter.me/page/6a02d8a6919aa
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