保科
2026-05-06 00:36:05
2169文字
Public 超かぐや姫!
 

ポッキーは自分で食べろ

がるさん俺ァ我慢できなくてさァ!!!!!!! 勝手に書きました
引用させていただいた元のツイートです↓
https://x.com/i/status/2051171796976865365

「たっだいまぁ〜」
――おかえり、とぶっきらぼうながらにいつも返ってくる返事がないのに、買い食いしたポッキーをかじりながらかぐやは首をかしげた。自室なのかな。ひとまずマイバックの野菜たちを冷蔵庫の野菜室にサクサク入れていく。この工程はパズルゲームみたいで好きで、リスナーに話したら共感半分呆れ半分だった。あんま一般的じゃないんかな。そもそも野菜専用の部屋があるってのがおもろくない?
そうして、道中箱と空袋をゴミ箱に捨て、2袋目を空けつつ螺旋階段を登って彩葉の部屋の前まで向かうと、まずはこんこんこん、と3回ノック。これをやらないと彩葉はカンカンに怒る。小説で見たカンカンって何?と聞いたらこの前の私のあんたへの説教だよって返ってきたのはまあまあ笑った。追加でカンカンに怒られた。
ので、かぐやは欠かさずノックするけれど――「かぐや?いまゲーム中。用?」くぐもった扉越しの声。ほーん、と思い、かぐやは音を立てないように扉を開ける。
……喋っていい?」
「あー、いーよ。今、ボイチャなしの野良だ、し、っ」
囁く声に、ちょっとテンション上がった彩葉の声が返される。学習用の机に腕を置き、椅子に行儀悪く胡座をかくのは彩葉がよくやる、リラックスのスタイル――それもKASSENとかの本気モードの時だ。
ととと、と足音を立てて近くまで歩み寄る。ハメてるスマコンが彩葉の瞳でピコピコ輝いて、補助用のコントローラーがその手元で絶え間なくカチカチと音を立てている。絶賛プレイ中だ。
机の上の氷が入っていたらしいグラスはとうに結露でビチャビチャで、大分長いこと熱中しているらしいことがうかがえた。
……彩葉」
「何、どしたの。――だーっここにトラップ!?――だから用があるなら言ってって」
真剣な顔の彩葉を見る機会は、少なくない。そもそも真面目な女の子だ。勉強にしろゲームにしろかぐやへの説教にしろ――特にボロアパートでは同じ空間にいるからしょっちゅうだったし。
でも、やっぱ何か――いいよなぁ、って思う。何が?って言われると、なんだろう?ってなるけど。虚空、絶対にかぐやを見ないそのまなざしが、かぐやを向けばいいのになぁって、ないことをちょっと思って。それで、なんとなく手元の菓子袋が目についた。
「ううん、ただいまーってだけだけど」
……あ、そう。おかえり、っと」
「ね、彩葉、ポッキー食べる?かぐや食べさせたげるぜい」
「あー……?あー、うん。食べる」
やった。少し不審そうだけど、意識がゲームに取られてるせいで反論もない。ここぞとばかりに、既に破られている袋から1本を取り出す。彩葉は変わらずVRの世界しか見てなくて、かぐやなんて文字通り眼中になくて――でも。
「よっしゃ口開けて〜」
「んあ」
――そんな彼女が言葉通りに動くのは、なんとなく、胸がすく。とは、まあ、言えないけどね。これもなんとなく。うーん、やっぱヒトって分かんないこと多いね〜。
何はともあれ見てばかりでなく有言実行、ポッキーを口元まで運ぶと、彩葉はそれが唇に触れたのを察知してサクリとかじる。短くなった分を押しつけて、するとまたサクリとかじる。……おお。前に動物映像で見た餌やりみたいだ。可愛い、と思う。真剣な横顔はカッコいいのに、めちゃくちゃだ。
……うま」
彩葉が嬉しそうなのに、もっともっとと心が疼く。持ち手部分に彼女の唇が触れたところで、かぐやは次のに持ち変える。再度口元に当てればもう一度、サクサク、彩葉が齧っていく。また持ち替える。齧っていく――可愛い、どうしようこれちょっと癖になる。犬DOGE撫でてる時を思い出す。
とか、なんとか、思考をそらしたのが多分良くなくて。
今また彩葉の唇がまた持ち手の部分に差し掛かって、でも呆けたかぐやはそのまま指を押し込んでしまって、だから、
パクリ。
―――
持っていたプレッツェル部分ごと、親指を、彩葉に甘噛み、され、た。のは、何?えと、何ってか、どーしよこれ。ぞくり、知らない感覚で背筋が粟立って、頭の芯がぼやけた。
―――
……?」
継続してゲームに意識を取られてる彩葉は、何だろうと不思議そうに、二度、三度、ただ、声も出さず動けずにいるかぐやの指を、舌でぬるりと舐め、噛み、
………………………………ぁ痛っ」
「は――
その刺激に、かぐやがうっかりつぶやいた声で、頭脳明晰な彩葉さんには情報が十二分だったようで――かぱり、舐っていた口が開き。その手から、不自然にコントローラーが落ちた途端。
明らかにゲームの余韻ではない真っ赤な顔をした彩葉が、椅子から飛び退るようにして椅子ごと後ろに倒れた。どがらがしゃん。
「い、彩葉!?大丈夫!?すっげー落としたけど!?」
「あ、っ、いや、私、今――あ負けた」
ひっくり返ったまま呆然とした彩葉の声が、ゲームの進捗を小さくつぶやいて。
さて、ゆるやかにこちらを見上げるARモードに戻してくれたらしい彩葉と、たぶん、彼女に負けずに顔が赤いだろうかぐやが何を話すべきなのかは、――誰か教えてくれないかな。無理かな。大丈夫、ごめんなさい、ねえこの感覚って――彩葉、彩葉、ねえ、やっぱりヒト、分かんないこと多いって。湿りきった指を拭えないまま、私は独りごちる。