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ゆべし
2026-04-24 23:07:48
2317文字
Public
銀色の夢
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2148478
Customize name
優しい銀色
gntk夢
夢主の大まか設定→
https://privatter.me/page/69da14fcf373d
まだ夜市前のお話
1
2
真っ暗闇の中、私ひとりが佇んでいた。足元が冷たくて歩き出そうとすると、ズブズブと暗闇に飲み込まれてしまう。徐々に体も重怠くて、腰が痛い。息も絶え絶え、もうこれ以上は立っていられない。でも、嫌だな。こんな冷たいところにひとりで沈んでいくなんて寂しい、悲しい。
「
……
ぃ、ぉぃ」
「っ、やっ
……
しず、む」
「
さくら
!」
「ぁ
……
ぎん、さん
…
?」
「あーあー 変な汗、出ただろ。ちょっと、これで顔拭いとけ」
「ありがとう」
そうか、仕事が終わったあと銀さんに連れられて万事屋に来たんだ。緊張の糸が解けたのか急にお腹が痛くなって、それで横にしてもらったあと寝ちゃった。さっき見ていたのは悪い夢、手渡されたあったかいタオルに顔を包むとなんとなく息苦しさが和らいできた。銀さんはひざ掛けを腰まで回るように掛けてくれて、お腹の辺りもじんわりと楽になってきた。
息を吐くと、辺りのことが目に入るようになる。鼻を掠めるいい匂いは夕飯の支度をしてくれている証拠。銀さんは宣言通り、何もかも世話を焼いてくれるつもりなのだ。何もしなくていい。自分の身も守ってくれる。そう思うだけで、肩の荷が下りてもう一度息を吐いた。
「先に風呂入るか? 夕飯も出来上がるけど、どうする?」
「
……
じゃあ、先にお風呂いただいてもいいですか? ちょっと、着物が苦しくて
……
」
「おう、ゆっくり入ってこいよ~」
重い体を引きずって何とか湯あみしたあと、お泊り用の浴衣に着替えた。薬を飲むこともできるけど、まだ食事も摂ってないし、もう少しの辛抱と思いながら居間に戻ろうとした。
「銀さん?」
「ほら、飯できてるから食って薬飲もうな」
「
……
うん」
そっと手を引かれて、数メートルの短い距離でも優しく気を遣ってくれる。銀さんは公平に優しい。分かっているけど、こんな風に扱われたら勘違いしてもいいかなって思う。体で慰め合うこともあるのに、言葉で交わす関係性の証はない。それがお互いに緩くて、ちょうどいいから。
「ぷは~ うどんのお出し、沁みる」
「そりゃ、よかった。無理して全部食うなよ」
「大丈夫、ありがとう」
あと片付けも全部してくれて、私が立ち上がると毎回「大丈夫かー」って声を掛けてくれる。照れくさくなるくらい至れり尽せりで、つい顔が綻んでしまう。
温かいお茶を淹れて居間に戻ってきた銀さんは向かい側のソファーに座った。それがなんだか寂しくて、じーっと見つめてしまう。視線に気がつくと、どうした?て聞いてくれるから、私は自分の横をポンポンと叩いてみた。目を見開いて、視線を伏せて、少し頭を掻いたあと、のそりと立ち上がった。
隣に腰を下ろした瞬間、風に乗ってくるのはさっきまで洗い物をしてた石鹸の匂い、あとから甘い匂いがする。少しだけ隙間をあけて座るから、埋めるように体を傾けた。寄りかかった肩が揺れる。でも、すぐに隙間はなくなった。私の肩に回された腕が力強く引き寄せてくれた。
「
……
っ、はぁ」
「痛ェか?」
「んー重い感じ、です」
「刀傷ひとつ作ってだけでも痛ェのに、毎月毎月辛い思いしてんだよなァ」
「人間の構造だから、仕方ないですよね」
自分の意思とは関係なく、体から流れ落ちるドロリとした感覚はいつまで経っても慣れることはない。それはひとつ、この体にしかできないことがあるから。ふと、思い浮かぶ顔に不安定な情緒が揺れ動いて泣きそうになる。
「
……
子供、欲しい?」
「えっ?」
「まァ、俺たちの場合、それより前のことから始めねーとな」
「銀さん、何を
…
」
見上げた顔には優しさしか滲んでいない。ふわふわとした銀色が視界いっぱいに広がる。よそ見をしていたら、唇に触れる感覚がした。子供がするみたいな可愛いキスに鼓動の速さが増していく。俯こうとしても顎を掬われて、何度も重ねるそれはただただ触れるだけ
……
「ぎん、さん
…
」
「っ、悪ぃ
……
でも、もう少しだけ」
こつん、と額がぶつかって、顔の距離が縮まった。銀さんの整った顔が目いっぱい広がるから、心臓の音が聞こえそうなほど速い。少し距離を取ろうとしても背中に腕を回されて、身を引くことはできなかった。吐息が唇に感じられるほど近づいて、銀さんの視線が私を射抜くから、ゆっくりと目を閉じた。
「
……
んっ」
ちゃんと通じ合えたら、もっと幸せなんだだろうか。それでもまだ、今の関係から踏み込むのが怖い。今が変わってしまうとどうなるんだろうと不安になってしまう。そう思ってしまった私はつむった目尻からぽろりと涙をこぼした。
「泣かせたくなんか、ねぇのにな」
「ごめ
…
ごめんなさいっ」
「謝ることもねぇよ。ちゃんと言う時は、俺から言うから」
「私が先に覚悟したら、言っちゃうかもしれません
…
」
「なるべく、早めにします」
「
……
銀さん」
「ん─?」
「お、お腹痛い
…
!」
「バッ、それは早く言えって! ちょっと横なって、待ってろよ」
「うん」
今までの関係を酷い人だなんて思ったことは一度もないし、しがらみを持つのが怖かった人が囲ってくれるなんて、それだけでも幸せだ。それに、今からこんなに甘やかされたら
……
「ダメ人間になっちゃうかも」
「ほら、薬飲んで。布団まで運んでやるから」
「一緒に寝てくれる?」
「
……
いい、けど」
「腰、さすってもらったらすごく楽なんです」
「そりゃーよかった」(平常心平常心平常心
……
)
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