喧嘩? お迎え クルザス散歩

pixivより。繋がっている2作品をまとめました。ゆるうちよそ。
家族喧嘩で家出した子をお迎えに行って、イシュガルドでごはんを食べたりするはなし。



林檎林から皇都へ.

テレポを使えば瞬く間のことだが、敢えて皇都までチョコボで移動することにした。二人を乗せることも可能な、大きな体躯の所謂グランチョコボ。呼び出した彼に跨り、外套を羽織ったことを確認して、あの子にーーしわすに手を差し出す。存外身軽と見えて、ひょいと私の後ろに座ったことを温もりで感じる。
「掴まっていて」
短く告げ、グランチョコボの腹を軽く蹴った。ホワイトブリムの林檎林から北西へ、手綱を繰る。

雪を蹴るチョコボの重い足音も暫く、皇都へ入る門へと至った。ーー大審門。その場所で、手を祈りの形に組み、短い祝詞で感謝を捧げた。
「何故?」
不思議そうに首を傾げる大切な同行者は、どうやらまだ知らされていないらしい。
……翁と雛が初めて出会ったのは、どうもこの辺りなんだそうだ」
雛には他にも色々何かあったらしいが、それを語るべきは私ではない。
「そう、なんだ」
もご、と呟いたしわすも、東方の祈りの所作で倣ってくれた。碌でなしではあるが、それはまた別として大切な家主たちでもある。何を何へとは上手く言えない。ただ、感謝を。
「行こう」
「うん」
通行証を衛兵へと提示し、巨大な門を潜る。そしてまた、次はやや小さな聖徒門を過ぎれば、皇都イシュガルドの下層に到着だ。

* * *

「滑りやすい、気をつけて」
心配するほどドジな子でもあるまいが、手を繋いで、少し霜の降りる道をまた北西へ。まだまだ戦の痕も痛々しいが、私たちアウラ族が悠々と歩けるほどにはなった。
坂を上がれば、エーテライトプラザに出る。
「何処へ?」
「宝杖通りまで」
都市内エーテライトを使用し、メインマーケットである上層は宝杖通りへ。次もまた西の方へ、今度は坂と階段をひたすら下る。二つ目の階段を降りれば、目当ての店に到着だ。

* * *

どの都市でもそうではあるが、やはり逞しく生きる皇都の商人たち。その一人であるメストノの料理屋には、よく世話になっている。
「エフトステーキ。あとはいつものキッシュとダガースープをふたつずつ。ひとつは連れに」
エレゼン族らしさはあまり感じない、気さくな片手を上げる仕草で、店主は承ったと合図をくれた。
「隅を借りても?」
次いでサムズアップで応えてくれたのに甘え、店の隅のスペースにーー勝手知ったるとはこのことか、椅子を持ち出して陣取った。
「シノ」
「奢りだ」
まだ気まずさがあるのか、遠慮がちな様子のしわすにそう返す。
「今日も冷えますからな。良く売れるんですよ」
まさにあっという間か。まずはダガースープが差し出された。
「感謝する」
「沢山仕込んだ甲斐がありました」
にこりと笑って次の料理の支度に戻った店主に謝意を告げ、簡素な汁椀とスプーンを手渡すと、しわすは少し目を細めた。
「いただきます」
私も倣い、熱いスープに口をつける。イシュガルドでは珍しい、あっさりとした魚のスープだ。胃の腑から温められる体が、自然にほぅと息を吐かせる。
……懐かしい味がする」
成程、東方の味に近いのか。ならば納得もいく。それに、連れてきて良かった、とも思う。
曰く、潮汁というものがあるらしい。東方の、スイという場所は海が身近で、舌に馴染む味がするそうだ。

翁の家でも時折食卓に上がるエフトのキッシュ。店で食べるものは、また家とは細かい味付けや盛り付けが違って気分も変わる。
ステーキの方は、興味深げな視線を寄越したしわすの口にも入れてやった。ぷりぷりとしたエフト肉は、食べていて口の中が楽しい。臭みを抜いて焼いただけの豪快さだからそこ、キッシュよりも本来の素材が引き立つと言うもの。
「帰ったら」
あそこは私の家というわけではない。けれど、彼女の家ではあるのだから。
「帰ったら、翁の作ったこれも食べてみたいな」
…………うん。おじいちゃんのも、食べてみたい。スパイスに拘るひとだもの」

一緒に住めば、どんな理由で誰かしらと、たまには気まずくもなろう。それでも、戻って構わないのだと。そう彼女が安心してくれたのならば良い。
もう少し、クルザスを見て歩いて。もう少し、顔を上げられるようになってから。
そうしたら、一緒にあの花畑の家に帰ろう。