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とむぢ
2026-04-17 23:02:25
14843文字
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グッドモーニング・スイートハート/G▲▽
朝の風景シリーズ G▲▽ver.
本編ノータッチの双子がどこかでプラズマ団の事を知ってたらいいなという願望のようなもの
※捏造過多(幼少期など)
※双子で恋人(パートナー)な▲▽(できてる)
世界で一番大切な人となんで結ばれちゃダメなの?って素で思ってるタイプのG▲▽
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ジリリリ、甲高い機械音が鳴り響く。今日も朝がやって来たことを知らせてくれた二つの目覚まし時計が、ほぼ同じタイミングで叩かれた。音が鳴り止み、一瞬で静かになった寝室に、むくりと上半身を起こす二人分の影。白と黒の色違いでお揃いのパジャマを着ている二人は、まずお隣のベッドへと顔を向けた。
「おはようございます! クダリ」
「おはよう、ノボリ」
朝から肺活量をフル活用し、よく通る声を部屋中に響かせたのは兄のノボリ。起きているときも眠っているときも、いつもご機嫌そうに口角を吊り上げているのは弟のクダリ。瓜二つの顔を見合わせて、大切な片割れと朝の挨拶を交わす。こうして今日もノボリとクダリの一日が始まった。
さて、起きてまずやることは温かいベッドから出ることだ。毎回べつに息を合わせているというわけでもないのに、同時に布団から足を出した。ノボリは丁寧に左右揃えてベッドの下に脱いで置いていた、ヒトモシの絵が描かれた黒色のスリッパを履く。クダリもノボリに続くようにしてフローリングの床に裸足を乗せてから気がついた。あれ、スリッパが見当たらない。最近買い換えたばかりなのに。目だけをキョロキョロと彷徨わせた後、SOSのつもりでクダリはノボリの名前を呼んだ。
「ノボリ」
「ベッドの下はご覧になりましたか?」
起きたばかりの弟が何を探しているのか察したノボリが、寝室のカーテンを全開にしながら助言をする。朝の明るい白い光が部屋に降り注いだ。クダリはベッドの上でちょこんと正座をするようにして座り、そのまま前屈して自分のベッドの真下を覗き込んだ。ノボリの言う通り、ベッドの真下の丁度真ん中あたりにクダリのスリッパがあった。一体どんな脱ぎ方をしたらそんな所にまでスリッパが飛んでいくのかと、疑問に思うだけ無駄である。何かとよく“不思議ちゃん”と評されることの多いクダリの身の周りでは、昔からよく説明がつかないような不思議なことが起きるのだ。
「あった、ぼくのスリッパ」
「それはそれは、何よりです」
覗き込んだ体勢のままベッドの下に腕を突っ込んで、クダリは自分のスリッパを引っ張り出す。背後からノボリの嬉しそうな声が聞こえた。シビシラスの絵が描かれている白色のスリッパにクダリが裸足を突っ込んで、いざ二人揃って寝室を後にした。廊下を二両編成で突き進む。目指すは洗面所、出発進行である。
細身とは言え、成人した男二人が真横に並んで洗面台の前に立つと、流石に少し窮屈そうに見える。だが慣れてくるとこの狭さが逆に心地好い。起床してからまだ5分しか経っていないけれど、もうすっかり覚醒しきっているノボリとクダリの顔が、ピカピカに磨かれた鏡に映し出されている。昔から二人の寝覚めは良い方だった。それはひとえに、一日の終わりに見る顔と一日の始まりに見る顔が、いつもすぐ隣にあるからだ。母親の胎内にいるときから一緒で、喜びも悲しみも強さも弱さも分かち合って共に成長してきた。ノボリとクダリの心が通じ合っているのは、今さら言うまでもない。
朝の支度はまだ半分も終わっていない。先にノボリが洗顔する。その間にクダリが近くのカゴの中から二人分のタオルを用意した。貴重な休日に二人で買い物に出掛けたときに見つけた、フワフワでモコモコな、吸水性バッチリのタオルを洗顔後のノボリに渡す。するとノボリは手にしたタオルのフワモコ加減に感動したのか、少年のように目を輝かせてクダリの方を見た。その口角は1ミリも上がっていないけれど、きっと満面の笑みを浮かべているのだろう。ノボリの表情の変化はクダリにしか分からない。
「クダリ! こちらのタオル、想像以上ですよ! 良い買い物をしましたね!」
「うん。エルフーンの毛玉みたいにふわふわ。触ってるだけで気持ちいい。よく売れてるのも納得できる」
なるほどたしかにエルフーンとは、言い当て妙だ。クダリのブラボーな例えにウンウンと大きく頷いていたノボリが、突然なにかを思い出したかのようにクダリの顔を見つめる。どうしたのかと首を傾げるクダリに向かって、ノボリは真剣な口振りで切り出した。
「触り心地の良さで言えば、クダリも負けていないとわたくしは思います」
仕事中でもプライベートでも、ノボリは何かと関連付けてクダリの話をする癖があった。例え全く関係なさそうな話題だったとしても、ノボリの手にかかればいつの間にかクダリの話にすり替えることくらい、朝飯前だった。これが通常運転なのだ。大好きなポケモン勝負のことやクダリのことに関しては、ノボリは常にデフォルトで暴走していると言っても良い。それでいて何をどんなに嬉しそうに語っていてもずっと無表情なのだから、ノボリに慣れていない人物からすれば恐怖すら覚えるだろう。思い立ったらすぐ行動、思ったことを素直に相手へすぐに伝える。それがノボリという男だ。意外に思われることも多いが、実はノボリよりもクダリの方が色々と頭の中であれこれ考えてから言動に移すタイプだ。じっくりと思考を巡らせてから、クダリもまた大好きなポケモンバトルやノボリのことになると一直線に突っ走る。この似たもの同士の兄弟にブレーキなどついていない。
「? ノボリ、寝ぼけてる場合じゃない」
とは言え、何故か急にふわもこタオルの感触と自分の触り心地(?)を勝負させられているクダリは、笑顔はキープしたままジットリとした目線をノボリの方へやった。ポケモン勝負で勝ち負けを決めるのは大好きだが、それ以外の勝ち負けに関してはそこまで興味が持てない。朝イチの洗顔をキメたことで更に頭がスッキリとしたノボリは、ジト目を向けてくるクダリの反応に心外だとばかりに頭を振った。
「わたくし寝ぼけてなどおりません。本当に常日頃から思っているのですよ。もし今日がお休みでしたら朝からクダリを心ゆくまで堪能して、わたくしがクダリの触り心地の良さを証明してみせるところですが、生憎そうもいきませんので」
ノボリの言葉を咀嚼するクダリの脳内に、一瞬にして宇宙空間が展開された。どういう意味なんだろう。瞬きを何度もして思考を巡らせ、やがてクダリは一つの解を導き出した。
(あ。もしかしてこれって、今日いっしょに寝たいって言ってる?)
でもノボリは天然なところがあるから、考えすぎかもしれないな。心の中でそう呟くクダリはまだ口を開かない。まだ喋るべき言葉が見つかっていないからだ。
片時も離れず、文字通りおはようからおやすみまでずっと一緒にいる双子だけれど、時々クダリはノボリの思考が正しく読めなくなることがあった。子供の頃はそれこそ二人で一つだった感覚の方が強かった。なのに、大人になってお互いの心の中に生まれた新しい気持ちを確かめ合った日から、クダリはノボリのことが分からなくなる瞬間が、少しだけ増えた。お互いの“いちばん大切”な存在になって、双子の兄弟兼生涯のパートナーとして支え合うことを誓いあって、確実に子供の頃よりお互いのことを意識することが増えたのに。何故か意識すればするほど距離が出来たような気がして、それがなんだかクダリは、ちょっとだけ寂しい。二人の境界線が曖昧だった頃が、ほんの少し懐かしい。自分でもまだ上手く説明出来ない感情な上に言語化するのが苦手なクダリが、胸に抱える寂しさをノボリに打ち明けたことはないけれど。
色々とごちゃごちゃ考えていることをノボリに気づかれる前に、クダリはニコニコの笑顔のまま返事をした。
「今日はお仕事、堪能するならポケモンバトル。証明するのはぼくたちサブウェイマスターの強さ、そして真剣勝負の素晴らしさ。そうだよね、ノボリ」
「ええ、ええ! クダリ! 全く以てその通りです! 今日は一体何人の挑戦者がわたくしどもまで辿り着くのか
……
そしてわたくしどもを越える挑戦者は現れるのか。今から楽しみで仕方がありませんね!」
会話が盛り上がり始めているが、現時点でまだ二人とも目が覚めてから10分程度しか経っていない。寝覚めが良すぎるのも考えものだった。スキンケア後に歯を磨きはじめたノボリの横で、クダリも朝の支度を進めるべく豪快にバシャバシャと顔を洗う。さっぱりした。顔に残った余分な水分を拭き取った後、ふわもこのタオルに目元から下を埋めるクダリがくぐもった声で、先程のノボリのナゾナゾみたいな言葉に対するアンサーを告げた。
「夜ならぼくのこと、いっぱい堪能してもいいよ」
「!!」
「ノボリのこともぼくに堪能させてくれるならいいよ」
ふわもこタオルの下に隠れたクダリの口元は相変わらず弧を描いていたけれど、実は心臓はドキドキでバクバクだった。うるさい心臓が口から飛び出ないようにタオルで押さえ付けているつもりでもあった。最近サブウェイマスターとしての仕事以外でも車掌業務が忙しくて、なかなか触れ合う機会がなかったから、また久しぶりにノボリが一緒のベッドで寝てくれるのではないかと。つまりそういう素敵なお誘いなのではないかと、クダリなりにいっぱい考えて答えてはみたけれど、どうだろう。目をカッと見開いたノボリがさっきから歯ブラシを咥えたまま黙り込んでいる。そんなつもりはなかった、とノボリに言われたらどうしようか。恥ずかしい弟だと思われたら嫌だなと、クダリは心を悩ます。
一方でノボリは願ったり叶ったりの状況を前にして狂喜乱舞していた。あまりの嬉しさに固まっていた。紛うことなきスーパーブラボー。表情には全く出ていないのに、弟の前でだらしない顔をしているのではないかと、ノボリもノボリでしなくていい心配をする始末。幼い頃は手を繋いだりハグをしたり肩を組んだり、とにかく互いに触れ合うことが当たり前だったから許可すら取らなかったし、実際そんな気遣いなんてものは要らなかった。お互いの物も勝手に使った。借りるとか借りないとか、そんな感覚はなかった。あの頃は二人が持つ自我の境界線が曖昧で、ノボリがクダリで、クダリがノボリだったからだ。この世界には誰よりも自分のことを理解してくれるもう一人の自分がいる、そんな認識だった。
しかし成長してお互い別々の自我が生まれてくると、そうもいかなくなった。弟を分身ではなく、違う意思を持つ一人の人間として大切にしたいと思えば思うほど、近付きすぎていた距離を一度離す必要があった。今までの距離感のままでは自分たちは先に進めないと気付いたのは、ノボリの方だ。どんなときもノボリはクダリと二両編成で生きてきた。それはこれからも絶対に変わらない。双子の枠を超えた今の刺激的な新しい関係になってからも寂しさなど感じたことはないけれど、歯がゆいと感じたことは数知れず。だからこそ、この世界で一番愛しい魂の片割れに触れることが、他の誰でもない片割れ自身に許されて昂る気持ちを、今ここで声を大にして伝えたい。そうと決まればノボリは口を濯いで、いつもの口癖と共に沸き起こる喜びを表した。
「ブラボー!! 流石はクダリ、素晴らしい提案です! わたくしとしたことが、わたくしだけがクダリに触れることばかりを考えておりました
……
! 今すぐガントルに私が入る用の穴を掘ってもらいたいくらいです!」
「どうして? ノボリが穴に入っちゃったらシングルトレインに穴が開く。ダイヤが乱れて困るひといっぱい居る」
それはだめだよねとクダリが至極真っ当なことを言えば、未だ上下パジャマ姿のノボリはまた大きく頷いた。サブウェイマスターの制服をきっちり着こなし、やってくる挑戦者を次々と負かしていくノボリしか知らない職員たちには想像もつかないような、ただ弟を溺愛する兄の姿がここにある。クダリだけが知る、ノボリの顔である。
「ええ! ですからここは己の浅ましさを曝け出しましょう。わたくしたちは幼い頃から様々なものを交換して参りました。わたくしがクダリに触れるのであれば、わたくしもクダリに触れてもらわなければなりませんね。これで毎晩の楽しみが増えるというもの! QOLも爆上がりでございます!」
興奮気味に話すノボリの心底嬉しそうな反応を見て、クダリはとりあえず自分の出した答えが間違っていなかったことに安堵する。良かった、ちゃんと一緒に寝るお誘いだった。しかしすぐさま違和感を覚えて、ン? と首を傾げた。なんだか聞き捨てならない単語が聞こえたような気がする。毎晩の楽しみ?
「ノボリ、ぼく毎晩って言ってない」
毎日だなんてドキドキで身体が持たない。ノボリとくっついて一緒のベッドで眠れることは嬉しいが、それで翌日以降の仕事に支障が出るのは困る。急いでクダリは否定するが、自分の言葉一つでこんなにも舞い上がっているノボリを見ていると、何だか細かいことなどどうでも良くなってきた。すっかりクダリは“ノボリが喜んでるならいっか”モードになる。一度このスイッチがオンになると、オフになるまでクダリはノボリの言うこと・やること全てを全肯定する弟になる。絶対に有り得ないが万が一世界中がノボリの敵に回っても、クダリだけは死ぬまでノボリの味方だ。そんな精神で生きているクダリはこれ以上口を挟むことをやめて、ただにっこりと笑って自分の歯ブラシに手を伸ばした。いつまでも喋っていないで支度を進めないと、遅刻してしまう。一先ずは言い出しっぺの責任を取る為に、今晩ノボリから思う存分“堪能”されることをクダリは覚悟するのだった。
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