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2026-04-17 23:01:53
1006文字
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箕乱
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【箕乱】浜辺にて
リハビリです。
(ここまでのあらすじ)事件の後で海まで不意にドライブしてしまって、なんとなく何を言ったらいいかわからないまま車を降りた二人。
夏の入り口に差し掛かっていた。
蒸した風が肌を撫でる。
車道のすぐ傍まで砂浜が迫ってくるような場所で、車を降りた二人は無言で海に向かい歩き始めた。
なにかを口にすれば壊れて仕舞うような気がした。
自分たちの周りを薄いガラスの膜が覆っている。
均衡を崩せばすぐにでも粉々になって仕舞う、繊細で傷つきやすい空気だった。
不意に、乱歩が立ち止まった。
潮風が髪を揺らす。
視線の先で夕陽が海に沈もうとしていた。
台無しにするのには慣れている。
いまさら、格好をつけても仕方がないだろう。
「お前は」と声に出してようやく、箕浦は自分たちが大きな波の音の中にいたことに気づいた。
「お前はなんで俺といる。もう大した必要もないと思うが」
「理由が必要?」
「いや、ただ、不思議なだけだ」
取り立てて目立つ力もない、面白くない男だ。
乱歩には頼りっぱなしなのだし、愛想を尽かされる方がまだわかる。
「君が、僕を必要としてたから」
その言葉はすこしだけ寂しげに響く。
「でも、もういいってことなら僕は来ないが」
「そうは言ってねぇ」
箕浦は乱歩の腕を掴む。細く頼りない腕だ。
「俺が訊いてんのは、お前の理由だ」
ほんの一瞬、驚いたように乱歩が瞳を見せた。
すぐにいつもの人を食ったような表情に戻ったが、箕浦は確かに見た。
あの乱歩が。
滔々と言葉を紡ぎすべてを見通しているはずの青年が。
その時少しだけ、迷いを見せた。
乱歩は波打ち際まで歩いていく。
さらさらと砂が崩れては奇妙な足跡をつくる。
「わからないんだ」
置いていかれた子どものような声だと思った。
「誰かに愛着を持ったことがない。僕を必要としてくれるなら僕は此処に居る。僕をなんの条件もなく愛してくれた両親はもういない」
「そんなら」
箕浦が追いつく。波が乱歩の靴を濡らす。
「ずっと居てくれよ」
「なにそれ」
「俺はこんなだし、お前がいてくれねぇと困る。市警のやつらだってそうだ。お前の会社の奴らも、社長だって。お前がいてくれねぇと、みんな困る。だから」
箕浦は腕を伸ばし、乱歩の肩を掴む。
「そんな、波に攫われそうな顔をすんじゃねぇよ」
乱歩は振り返る。
最後の夕陽がひとすじ頬を照らした。
「ははっ、仕方ないなぁ」
そう言って笑った顔の、微かに寄せられた眉のせいか、箕浦には泣いているように見えたのだった。
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