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kibaco
2026-04-14 11:01:49
894文字
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尊直
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現パロ尊直&冬直1
直義でてこない尊直
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足利尊氏と幼い頃から交流のある兄弟に取材をしたところ、尊氏の弟は尊氏が己の作品を売るために付与した設定であるという。そう、ナラティブこそ作品の本質。
「だってそうでしょう。あのひとの画を見て、この仏の鋳型となった弟は、どんな男なのだろうと思わせることに無二の価値があるのですよ」
なるほど。言われてみればそうかもしれない。この写実的でうつくしい御仏たちは清廉でありながらどこかなまめかしく際どい。自身こそ神仏のように美しく常にアルカイックに微笑む尊氏が、血のつながった二つ違いの弟と二人アトリエに篭って密やかにこれらの美を練り上げている。
「しかし弟さんは居ない」
実際は尊氏がひとりで、或いは弟ではない誰かしらをモデルとして描いている。
高兄弟の兄の方がくっ、と笑う。
「居ません」
「最初から?」
「おりませんな」
「モデルは?」
「さて、」
高兄弟の弟の方が、兄の顔を見る。兄の方は知らん顔。どうにも胡乱だ。
「作品の仏は、どこか尊氏さんご本人にも似ておられますね?」
結局本人を写しとっている、自画像ということか。作家の美しい顔を思い浮かべるとそんな気もしてきた。
「そうでしょうとも」
高兄弟の兄がしたり顔で同意する。
「弟ですからね。兄君に似ていて当然だ」
煙にまいてくるじゃないか。なるほど、彼ら高兄弟からしてこの仕組まれた物語の機能の一部なのか。
「あの人も毎度仰るでしょう?」
あれか。
「「一心同体」」
作家の描く画の中にしか存在しない弟。仏を弟だと言う作家。いや、弟を仏にしたいのか?
仏画に問いかける。
墨の濃淡のみで描かれているにもかかわらず、尊氏の仏は瑞々しく肌や瞳の色が視えるようだ。
いるのか?いないのか?
いなくなったのか?
美丈夫の姿をした画の中の仏は艶然と微笑むばかりである。
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