冬暁
2026-04-11 00:44:51
2400文字
Public ホム主
 

幸福を紡いで

深響恋夢2の展示作品。『幸福をうたって』の続きです。
タンレイに会いに来た二人はあるお願いを伝える。
※世界の深層「花束と挽歌」ネタバレを含みます。


 照明が落とされた会場で、ステージだけが眩く輝く。優雅に舞台に上がったタンレイは、深海まで美しく響く歌声を奏でた。歌声に聞き惚れた観客たちが恍惚とした息を漏らし、時折鼻を啜る音さえ聞こえる。
 隣からも聞こえた音に僕は眉尻を下げた。
「メイクが落ちてしまうよ」
「だって……
 涙に濡れた頬をハンカチで軽く押さえる。彼女は僕の手に重ねると目を閉じた。
「胸がいっぱいなの。嬉しくて、幸せな気持ちでいっぱいになるから」
「ふふ、そうなるのも仕方ないね」
 僕は彼女の肩を抱き、その頭に頬を擦り寄せた。甘くて柔らかい香りに頬を緩める。
「今日の選曲は、僕らのためのものなんだから」
 くすぐったくて、少し落ち着かなくて、だけど僕も胸が満たされている。
 彼女と共にあることを心から祝福される幸福に僕も目を閉じた。
 こんなにも幸せを感じるなんて、少し怖いくらいだ。
「ホムラ」
 彼女の呼びかけに目を開ける。涙に濡れながらも幸せそうに笑う彼女は、やっぱりこの世界の何よりも美しかった。
「私たち幸せものだね」


Posted by 冬暁/薄明