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冬暁
2026-04-11 00:44:51
2400文字
Public
ホム主
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幸福を紡いで
深響恋夢2の展示作品。『幸福をうたって』の続きです。
タンレイに会いに来た二人はあるお願いを伝える。
※世界の深層「花束と挽歌」ネタバレを含みます。
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タンレイ様。そう書かれた紙が貼られたドアの前で僕たちは立ち止まる。ノックをしようと持ち上げた手に彼女はしがみついた。
「ちょっ、と待ってね」
囁くような声をあげた彼女は、いつもより緊張しているみたいだった。何度も開いたことのあるはずのドアを前に、胸に手を当て呼吸を整える。理由はわかるけれど、敢えてそれを無視した。
「どうぞ」
「
——
ッ!?」
ノックに応えるソプラノを聞いて彼女の肩が震える。僕を見上げる眼差しが咎めるように眇められた。彼女の熱烈な視線にウィンクしてドアを開ける。
「ホムラ!」
小さな叫び声を背中に聞きながら、彼女の手を引いて入室した。
入ってすぐに目を引いたのは、系統の違うドレスがかけられたハンガーラック。今回の公演で着るものだろう。それらに合わせるアクセサリーが、大きな鏡の前に並んでいた。タンレイはその鏡の前でメイクを直していたらしい。専属のメイクさんが手にしていた筆を下ろす。
「いらっしゃい。二人とも久しぶりね」
優雅な仕草で振り返ったタンレイが色づいた唇を柔らかく持ち上げた。
「それから、結婚おめでとう」
その言葉に込められた祝福に、僕は静かに微笑み返す。
「ありがとうございます」
彼女と共に礼をすれば、グレーパールを閉じ込めたような瞳があたたかく僕たちを見つめた。タンレイは彼女の左手を握り、そこに嵌められた指輪を目でなぞる。
「とても素敵なものを贈ってもらったのね。よく似合っているわ」
「
……
はい」
花が恥じらうように彼女が頬を綻ばせる。その視線が指輪を大切にそうに見つめているから、心が満たされて破裂してしまいそうだった。短く息を吐き出せば、それに気づいたタンレイがくすりと笑う。
「本当に嬉しいことね。この日をずっと楽しみにしていたの」
「泣くにはまだ早いでしょう?」
「もう! そういうのは見ないフリをするものよ? そういうところは変わらないんだから」
涙は溢れてはいないものの、普段よりも輝き多くを含んだ瞳が僕たちを何度も見る。
あなたが式を挙げた日。式の後、僕に小さな花束を贈ってくれた日。僕を見ていたあの眼差しを思い出す。
——
みんな、自分が立ち続けるための支えを探している。
——
僕はこんな日が来ることを望んでいたけれど、同時に叶うはずがないと諦めてもいた。
「そのうち、式を挙げるつもりです。テイラーのあの庭で」
「招待状を送るので、よかったら来てください」
「
……
ッ、もちろんよ! 何があっても絶対に行くわ! 私はもちろん、みんなあなたたちを祝いたくて仕方ないもの」
確かに彼女はみんなに気に入られていた。籍を入れたことはまだタンレイにしか伝えてないけど、招待状を送ればひっきりなしに連絡が来るに違いない。
彼女がホッとしたように肩の力を抜いた。喜びに満ちたその瞳に僕は小さく頷き返す。
「そこでタンレイさんに一つお願いしたいことがあるんです」
「何でも言ってちょうだい」
「彼女のブーケを作ってもらえませんか」
僕の言葉にあなたは大きく目を見開いた。あいだに生まれた沈黙を、穏やかなクラシックだけが通り過ぎる。
小さく息を吸い込んだタンレイは、何かを思い出すかのように視線を落とした。それは慈愛の笑みと共に僕たちへと戻される。
「ええ、とびきりのものを用意するわね」
「ありがとうございます! タンレイさんの式の時はホムラがデザインしたって聞いて、それならホムラの時はぜひタンレイさんにって思ったんです」
「あら、ホムラから聞いていたの?」
「少しだけ。詳しくは話してくれないんです」
「ふふっ、なら今度話してあげるわね」
「タンレイさん!」
「いいでしょう? 私の式の話なんだもの」
「わぁ、楽しみです!」
「とても良かったのよ。ホムラも最初は来ないってツンツンしてたのに、実は色々動いてくれていてね」
「それ以上はいいでしょう!?」
前のめりで目を輝かせる彼女を引き離す。「ホムラ!」と口を尖らせる彼女に、僕は仕方なくため息を吐いた。
「せめて僕がいない時にして!」
いたたまれない。出来れば話しては欲しくないけど、彼女がこれで止まるはずもない。そのうち話を聞いて悪戯げな顔で僕をつつきに来るんだろうね。
まぁ、僕が本当に話して欲しくない内容はタンレイも話さないだろう。
彼女はリモリア人の式に興味を持っていたからね。多少僕を弄るくらいは目を瞑って
……
おきたくはないけれど。
二人がアイコンタクトして笑い合っているのを横目に見ていると、コンコンとドアがノックされた。
「タンレイさん、そろそろ
……
」
「もうこんな時間。二人とも、今日は楽しんでいってね」
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Posted by 冬暁/
薄明
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