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蟹
2026-04-08 23:29:51
6682文字
Public
二次創作:UTAUホラー
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百舌鳥のはやにえ / 薙桃愛
登場人物
・薙桃愛
・その他
注意事項
・本作品は『薙桃愛』の二次創作作品です。キャラや世界観の設定には、一個人の解釈や独自設定が多数含まれます。
・暴力的・猟奇的な描写を含みます。
・オリジナルキャラクターが登場します。
・特定の地域・信仰・思想を貶める意図は一切ありません。
・本作を他者や文化を貶める目的で使用することは、固く禁じます。
1
2
3
うちの学校から駅までの間に、大きな自然公園があるんだけど、学校のみんなは近道するのにそこを通るの。道路に沿ってカクカク通るより、公園を突っ切る方が距離短くなるでしょ?
ボートやベンチもあるから遊べるし、高校生までなら入場無料だからね〜、利用しない手はない!
とーぜん桃愛もよくそのルート通ってるし、あの日も"桃愛たち"は自然公園の中を通って帰ろうとしたの。
あの日の放課後は別クラスの友達
……
『Aちゃん』と帰りが一緒になったんだ。
Aちゃんは真面目だから「ちゃんとしたルートを通らないと
……
」って言ってて〜。でも「桃愛がいるからだいじょーぶ!」ってドヤァってしたら「うーん、しょうがないなー」って
……
え?この動き?メガネをクイってかけるAちゃんの真似。
……
動きがうるさい?そんなぁ!
……
えーと、どこまで言ったっけ
……
公園のとこからかな?
自然公園のゲートを潜ると、すぐ目の前に大きな森が出てきた。右手には池に続く遊歩道がって、桃愛たちはそっちに歩き出した。
周りは木がいっぱいでちょっと薄暗いけど、道は舗装されてるから歩きやすいよ。テクテク歩きながらAちゃんと「今日のテストどうだったー?」とか話してたの。Aちゃんはねー、桃愛と得意な科目全然違うの!なんで数学で90点取れるんだろっていつも思ってる
……
。
そうして歩くとすぐに視界が開けて、視界いっぱいに大きな池が現れた。
池の周りのベンチではうちの学校の子が座っておしゃべりしてて、池では白く光るスワンボートが泳いでた。桃愛はああいうのあんまり乗ったことないから、いつか乗ってみたいね〜なんて言い合ってた。
「薙刀持ったままでも乗れるかな?」
「
……
ボートからはみ出ると思うよ」
「大丈夫!桃愛が責任持って管理する!Aちゃんには指一本触れて欲しくないもん!」
「その言い方は傷つくよ?!」
「ごめん」
……
えーとそれで、そんな感じで池の周りを歩いてて
……
。
その途中で急に思いついたの。
「ねぇ、森の中の方、通らない?」
「え?」
池の向こうにはもっと深い森があって、その中には遊歩道が整備されてるんだけど
……
。
遊歩道に沿うよりも、森の中を突っ切っちゃえばもっともっと近道できるでしょ?
……
みたいなことをあのときは思ってた気がする。
でもAちゃんは微妙そうな顔してた。
「
……
やめた方が良いよ
……
?勝手に入ったら、管理してる人に怒られちゃうよ」
「でもでも〜!今日は帰り遅かったし、それに、おやつのさくらんぼが桃愛を待ってるの!!!だから早く帰りたいの〜!!」
……
Aちゃん、すごい呆れ顔。「そんなことで
……
?」って言いたそうだった。
「なんなのその目!桃愛はさくらんぼのためならなんでもできちゃうもん!Aちゃんだって飼ってるインコに『愛してる』って言わせるために徹夜で言葉を教えてるじゃん!」
「なっ。なんで知ってるの
……
?!?!」
そういうわけで、Aちゃんと私は遊歩道を外れて森の中を進むことにしたんだ!
……
あなたもそんなことで?って言いたそうだね。
***
森の中に入った途端、周りの空気が変わった。他のどこよりも薄暗くて、土と落ち葉だらけの地面はボコボコしてて歩きにくい。ローファーに土が入ったのを落としながら、慎重に歩いて行った。
草を踏むと青臭さがほんのり漂って
……
木の間を縫うように通るたびに長い枝がブレザーの袖を掠めていく。そして抱えてた薙刀ケースにも枝が引っかかっていく。
「うーん、まっすぐ進めるけど枝多いな〜。真剣(薙刀)で一掃したい
……
こう、ぐるぐるーって台風みたいに回転して
……
」
「それ、私も斬られちゃわない
……
?」
「桃愛的にはもっと場を整えてからというか
…………
いや!なんでも!ない!!」
「桃愛ちゃん
……
たまに変なこと言うよね」
「そ、そう〜?あはは
……
ってきゃーー!!」
……
誤魔化してたら、すごいおっきな蛾が飛びかかってきた
……
。うう、思い出したらゾッとする
……
。
でもAちゃんは、平気な顔して追い払ってくれたの!
「ありがとう〜!すごいね、ああいうの平気なの?」って聞いたら、「うーん、野生の鳥も虫を食べるからな
……
」
……
って。助けてもらってなんだけど、なんかズレてる気がする
……
。
そうしてまっすぐ歩いてたら
……
。
「ん
……
?」
視界の端で何かが動いた気がして、足を止めた。キョロキョロ見回したらソレが視界に入って、吸い寄せられるように近づく。
桃愛たちの腰くらいまである低木の群れ。その枯れかけの枝の一つに
……
ハチが突き刺さっていた。じっと見続けていると、そのハチは悶えるように蠢いた。
「あっ
……
」
思わず声が出ると、Aちゃんも近寄ってきて、少しだけ考え込んで
……
すぐにピンときた様子だった。
「あ
……
『はやにえ』だね」
「
……
なにそれ?」
初めて聞く言葉だったけど
……
これはモズって鳥の仕業なんだって。モズは捕まえた獲物を木の枝に刺す習性がある、ってAちゃんが解説してくれたの。
「なんでそんなことするんだろー?戦利品なのかな?」
「その発想は怖いよ?!
……
仮説は色々あるけど
……
餌として食べるためってのが最有力候補かな
……
」
「へぇ〜。Aちゃんは物知りだね!」
そう言うと、眼鏡を掛け直しながら「べ、別に
……
でもありがとう
……
」って照れてた。可愛い!
まぁ、最初見たときはちょっとびっくりしたけど
……
そういう習性ならそういうもんだよねってことで、ハチを置いて先に進んだ。
……
んえ?桃愛はハチは平気なのかって?
ハチがどうっていうか
……
まぁ、急に来られるとびっくりするって感じかな。
***
しばらく歩き続けると、森全体がより薄暗くなってきた。木の隙間から覗く夕陽が眩しくて、早く帰らないと!なんて思って。森の中でコロコロと響くなんかの虫の声が、余計に桃愛たちを焦らせる。
そして、しばらく歩いた頃。
「あっ。あれも
……
?」
桃愛はまた、はやにえを見つけた。
木の枝の先に突き刺さるカエルは、だらーんと脱力してぶら下がっていた。
どことなく体の模様が色褪せていて、さっきのハチとは違って生きてる感じはしないなー、なんて思いながら、Aちゃんと顔を見合わせる。
「
……
こんな連続で見つかるものなんだ
……
」
「ね。この森にモズいるのかな?」
「わからないけど
……
『はやにえ』があるならそうなんじゃないかな
……
?」
「あー
……
」
そして二人とも黙っちゃった。
遠くで鳥がさえずっていて
……
どちらかともなく、先に行こうと言い出した。
そこでふと振り返る。
来た道の向こうは木が重なりあって、隙間から見えてたあの池はもう見えない。
枝に刺さったカエルは、少し遠くで変わらず宙ぶらりん。
はやにえ。
早贄。
贄
……
「桃愛ちゃん?」
「
……
はっ!ごめんごめん!」
なぜか桃愛はカエルから目が離せなくて、それをふり切ってAちゃんの後を追った。
***
先に進むほど周りは静かになって、何度も何度も制服に枝が引っかかる。
気づけば陽が落ちたみたいに辺りが暗くて、スマホの充電が切れないか少し不安になる。
……
でもね、怖いとかそういうのより、ワクワクする気持ちの方が勝ってた。
「ふーんふふんふんふーん!」
「ちょっ、ここで鼻歌?」
「いいじゃん、多分誰も聴いてないし!周りが暗いときほど明るくいなきゃ!」
「いや、私が聴いてるし
……
というか桃愛ちゃん」
Aちゃんは不安そうに、辺りを見たわしていた。
「なんか、普通に遊歩道通ったときより、この道長く感じないかな
……
?」
「うーん
……
舗装されてなくて、歩くのがちょっと大変だから、疲れてるだけかもよ?」
桃愛は明るい声を作ってAちゃんを励ました。
「大丈夫大丈夫!ここまで来たんだもん、もうすぐ出られるよ」
「そう
……
?」
「スマホの位置情報だと駅の方に近づいてるし、このまま真っ直ぐ歩けば
……
Aちゃん?」
前を歩いてたAちゃんが急に立ち止まって背中にぶつかりそうになる。ひょいって前を覗き込むと、すぐに理解した。
今度は小鳥だった。
その身体から流れるものが鋭利な枝を濡らして、細い木の体を赤く煌めかせている。
「
……
なんか、段々大っきいものに
……
ねぇ」
Aちゃんに話を振ると
——
あの子は微かに震えて黙り込んでいた。
「
…………
っ」
そのとき、桃愛の頭にもぼんやりと、Aちゃんが飼ってるインコの姿が浮かんだ。前に写真見せてくれたことあって
……
。
「
……
大丈夫?」
そしてAちゃんの背中を撫でて声をかけると、びくっと体を震わせて振り向く。
「
……
っ!う、うん
……
ごめん」
声を絞り出すAちゃんも桃愛も、視線は木の枝に刺さっていた鳥の死体に釘付け。
あの流れる血潮から
……
目が離せなくて
……
。
桃愛は呟く。
「
……
虫、蛙、鳥
……
」
自分が何を言っているのか理解する前に。
「
……
行こう、桃愛ちゃん」
Aちゃんは目を伏せたまま、足を踏み出した。
「桃愛ちゃん?」
でも、桃愛は。その場に立ったまま、胸がドキドキしていた。
あれは、あの気持ちは
……
大事なテストを受けるときに
……
難しかった問題が解けたときみたいな
……
。
……
正しいことをしている悦び。
「
……
っと、はいはいっ、今行きますよ〜!」
そのときは気持ちを押し殺して、Aちゃんについて奥まで歩き始めた。
***
桃愛たちは歩く。
森はまだ終わらない。
それどころか先に進むほど、どんどん草木が生い茂っていき、木の枝も棘を増していった
……
そんなふうに思えた。
陽もすっかり落ちちゃって見えないから、スマホのライトで前を照らして進む。隣にいるAちゃんの表情もよく見えない。
「
……
桃愛ちゃん」
ただ、その声が震えていたのはわかった。
ここに辿り着くまでに血の匂いが濃くなってきていて、もしかしたら桃愛たちはそれを道標にしてここに来たのかもしれない。
そう思うくらいに
……
太い枝が何本も突き刺さったイタチの、その長い尻尾がプラプラ揺れている光景は、ふわふわの毛並みを濡らして滴る血は
……
息を呑むほどにおそろしかった。
変な笑いが出そうになるのを抑えながら、Aちゃんに話しかける。
「
……
モズって、イタチたべるのかなぁ」
「食べないよ!?
……
食べないはず
……
なんだよ」
「そっかぁ。それじゃあ」
『何が』これをやってるんだろう?
そう口にする前に、Aちゃんは私の腕をぎゅっと掴んだ。
「ねぇ桃愛ちゃん、引き返そうよ。ここ、なんか、ダメな気がする
……
」
「Aちゃん
……
。でも
……
ここまで来たんだよ?帰れなくなるよ?」
「何言ってるの?!ダメ、上手く言えないけどっ、先言っちゃダメなんだって
……
!!なんでわかんないの!?」
Aちゃんは必死で腕を掴んで抵抗していた。前に進む私を引き止めようとして、ずりずり引きずられていくAちゃん。桃愛より勉強ができて、優しくて、桃愛より怖がりなAちゃん。
……
本当に困っちゃった。
だから。
「桃愛ちゃ、」
Aちゃんを突き飛ばした。
こうするときはいつも、世界がスローモーションになる。
あの子の眼鏡の向こうで黒い瞳が見開かれていくのを、桃愛は一コマずつじっくり見つめていて
……
Aちゃんの向こう側に、巨大な棘みたいに尖った枝の群が見えたの。
……
その瞬間、はっきりとイメージが浮かんだ。
最初は虫。
虫の次は両生類。
両生類の次は鳥類。
鳥類の次は哺乳類。
哺乳類の次は人間。
それが正しい順番。順番に食われて、次に繋いで。
それがあるべき贄のすがた。
そしてAちゃんを捧げたら、そしたら次は。
人間の次は?
「
……
っ!」
そうして、まっさらになった頭がようやく感覚を取り戻した。
桃愛の体も勝手に動きだす。
薙刀の重みを手のひらで感じながら
——
高まった気持ちを込めた一撃を放つ。
***
「
……
う、あ
……
」
私の目の前で、木の幹に寄りかかって倒れ込んだAちゃんが呻いていた。
「
………………
Aちゃん」
握りしめた薙刀に、手の振動が伝わってガタガタ震えている。
ケースを突き破って飛び出した刃先は、Aちゃんの頭
……
をかすめて、木の幹に刺さっていた。
そしてその刃先は、小さな蝶の羽を木の幹に縫い付けたの。
一匹の蝶々はピクリと羽を震わせた後
……
崩れた羽ごと落ちた。
「
……
桃愛、ちゃん?」
傷ひとつないAちゃんが、ゆっくりと桃愛を見上げる。恐怖を通り越して何もわかってないみたいな顔で。
「痛っ
……
!」
Aちゃんは痛みに表情を歪めて、枝が軽く刺さった背中をさする。
「
……
これで、振り出しかな?」
桃愛の言葉にAちゃんは首を傾げた。
「それってどういう
——
」
「Aちゃん」
もう、あの高まる波は引いていて、桃愛はいつもの調子で言う。
「ごめんね」
そうして、Aちゃんに笑いかけた。
そこでふっと力が抜けて
……
地べたにぺたんと座り込んだ、そのとき
……
。
「
……
ここどこ〜〜?!?!」
「
……
えぇええぇぇ?!?!」
桃愛もAちゃんも全力で叫んでた!
「いや桃愛ちゃんが森の中通ろうって!!」
「えっ?!!なんで?!?!桃愛そんなこと言った?!」
「なんなのそれ?!?!?!」
……
いやほんとに、そんなこと言った記憶ないんだって!
あーその、『森を通ろう!』はギリ言った記憶あるけど
……
でも桃愛が言ったって実感があんまりないんだよ〜!
森の中のことも、後からAちゃんに聞いたことを元にして(あとちょっと描写盛って)言ってるわけで〜
……
だから今でもあのときの桃愛の行動って、なーんか他人事って感じなんだよね
……
。
なんだったんだろ
……
やっぱ公園に入ったあたりから目をつけられてたのかな?
えー
……
とはいっても、森の中でオロオロしてるわけにもいかないのはそう
……
。だからとにかくAちゃんの手を握って「とにかく急げば間に合うよ!!」って声を上げた。
桃愛もAちゃんもバタバタ二人で走って、走り続けて
……
。もうすっかり夜だけど、風を切って走る耳の中がごうごうって煩かったけど、それでも走り抜けた。
そうして
……
思ったよりもすんなり遊歩道に出れた。
***
息を整えながらまた歩いて、少し歩いた先に道の駅に続く正門ゲートが見えたとき
……
Aちゃんもさっきの私みたいに座り込んじゃった。
「
……
はあぁ
……
。なんだったんだろ
……
さっきの
……
」
「
……
なんだろーね?わかんないけど
……
きっと大丈夫だよ」
桃愛たちは何事もなく無事に家に帰れたもん。それだけで十分だよ。
……
門限には間に合わなくて怒られたけど
……
さくらんぼもお預けされたけど
……
!!
……
というわけで
……
あの日から今日まで、私もAちゃんも特に変わりないかな。
……
ただ、Aちゃんは自然公園自体通らなくなっちゃったみたい。
……
まーでも桃愛は相変わらずショートカットするけどね〜。便利だし。
あっでも、あの森にはもう入らないから!!ね!!
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