蝋爛
2026-04-08 18:34:28
8245文字
Public B
 

やきにくこわい

2026/04/08 初版




「はぁ〜満足した!」
「食い過ぎだろ……残るんじゃないかと思ったぞ」
「そんなことしないよ〜!頼んだものはちゃんと食べます」

あれから、最初に食べたものももう一度食べたくなったりして更にオーダーをしていた。いつも食べる量の、少なくとも2.5倍は食べただろう。それだけ美味しかったのだから仕方がない。何度も、まだ食うのかと聞かれたけれど……その度に、まだ食べますと返していた。そういうクレールくんだって何杯もお酒を飲んでいたのだからおあいこだろう。あのあともワインやら何やらを飲み続けていた。
“食べ放題”というのは本当だそうで、決まった金額だけ払えばそれでいいとのこと。飲み物も飲み放題にしてくれていたらしい。たくさん食べたり飲んだりしたけど、一人あたりはいつも食べている金額とそう変わらない。とてもお値打ちだった。
お腹がいっぱいになっているので、今日は転移魔法テレポは使わずのんびりとお散歩がてら歩いて帰ることにした。

「おいしかったねぇ〜また行こう!」
「今度は俺無しで行ってこいよ」
「なんでぇ!道わかんないもん!」
「街からすぐだっただろ、ほらそこ──は?」
「は?なに?──え」

歩いてきた道の背中側。そちらを指差しながら振り向いたクレールくんは、びっくりした顔をして固まっていた。
何事かと思い、振り返って見たそこは──建物が無くなっていた。あれ?

「ぼく、酔っ払ってる?」
「いや……俺ももしかすると酔ったかもしれねえ」

目を凝らして、眼鏡までかけて確認をしたが……初めから何もなかったように、まっさらな土地が広がっている。
確かに食べたし、飲んだ。間違いはない。二人揃って見間違えることなどあるだろうか。いやない……はず。自信無くなってきた。
トームストーンを確認する。確かに見たはずの情報はどこにも見当たらない。消した覚えもない。なんならすぐ確認できるよう登録もしておいた。いやまぁ、見慣れない文字で書いてあるなぁとは思っていたけれど、まさかこんなことになるんて誰が思うか。
ほかほかとした気持ちが一気に冷めてしまった。

「やきにく、こわい!」




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