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沁月
Public
ウ教×ハ♀ 相思相愛 読み切り
そらごとに隠れ咲く
MHRウ教×ハ♀。相思相愛。
嘘をついてもいい日だからこそ。
1
2
「愛弟子よ
……
! 我が最愛の、愛しい人よ」
全てを包み込むように、ウツシが改めて娘を優しく抱きしめる。
彼の体温は、娘を
凍
い
てつかせていた全ての不安も嘘も、誤魔化しも、
瞬
またた
く間に溶かしていった。
風がふわりと優しく吹いて、花びらが、緩やかに流れていく。
「俺は、キミとずっと一緒だ。キミは独りでなんか散れないよ。だって、隣で俺がずっと咲いているからね」
「
……
ずっと? 本当に、ずっと?」
「もちろん! キミが元気で居てくれるなら、俺はずーっと、元気いっぱぁい! キミと一緒に咲き続けられる。昔から、ずっと
……
今も、もちろんこの先も、それは変わらないよ」
「
……
ウツシ、教官」
また吹いた柔らかな風は娘とウツシの髪を揺らし、花びらを
水面
みなも
に浮かぶが如く、月明かりにふわふわと漂わせた。
「
……
変なこと言って、ごめん、なさい。
……
えへへ、嬉しいです」
ようやく少しずつ不安から
解
ほど
かれ始めた娘を両腕に捕らえ、真っ直ぐ見つめたまま、ウツシは「嘘じゃないからね」と微笑む。
誓うように語る言葉にしてはあまりにも真っ直ぐとして、幻想を帯び過ぎている──が、通常は叶わぬであろうことも、ウツシという人物が語ればもしかしたら、彼ならば、と妙に確かな期待と希望が見える。
「──ああ
……
でもね、愛弟子」
ふと思い出したように口を開いたウツシを、娘が首を傾げて見つめた。
彼の目が少しだけ、先ほどの娘よりも悪戯っぽく、だが、どこか意味深に甘く細められて。
「この先、
夫婦
めおと
の
契
ちぎ
りを交わした後は
……
キミという花を、俺だけが
愛
め
でられる時間もできる、よね?」
「! そ
……
れ、って」
不変の
深愛
しんあい
を込めながらウツシが紡いだ『花』という言葉の意味。
それが先ほどとは全く別の形に変わった瞬間を的確に察した娘は、とても無垢に、たちまち顔を沸騰させた。
照れ隠しをしたいが、彼女はウツシの天満月よりも輝く
金色
こんじき
の
双眸
そうぼう
から目を逸らせず、両腕に包まれたまま。
そんな状態で彼を見つめながら素直に胸を高鳴らせるうち、娘は幸せそうに口角を上げていた。
──わたしは、あなたじゃないとだめ
──この身も、この心も、すっかりそうなってしまった
──咲くことも散ることも、どちらも、何度でも、あなたとなら
ウツシが甘く告げたことは長年、幼い頃から切に彼を想い続けてきた娘の夢。
彼だからこそ叶えてくれる、彼でなくては実現しない幸せ。
ゆっくりとウツシの腰に両腕を回しながら、娘が吐息混じりに、悪戯っぽく微笑む。
「
……
そういう時間、本当にとってくれますか? 嘘じゃ、ないですよね?」
「ふふっ
……
キミこそ。ずっと、キミを大切に愛でさせてくれるかい? 今度は、嘘じゃない、よね?」
「はい、もちろん。あなたじゃなきゃ、いや
……
これは嘘じゃないです、絶対に」
互いに顔を見合わせたまま「ふふふっ!」と、娘とウツシが声を重ねて笑い合う。
直後に幾度目か、月明かりに彩られた花風が吹き抜けた。
明澄
めいちょう
な光を帯びた花吹雪が2人を包み込む中、ウツシが大きく、温もりと慈愛に溢れた片手で優しく娘の頭を撫でていく。
「ねえ
……
愛弟子。大丈夫だよ、何も心配しないで。俺は
……
キミと一緒だ」
「
……
はい」
「俺の傍で、見ててよ。里長やゴコクさまもびっくりの、カムラの里のご長寿教官、ご長寿ハンターになるからね?」
「ん、ふふふふっ
……
ゆっくり見守らせて頂きますね。嘘でも、嬉しいです」
「嘘じゃないってばぁ! 今日は嘘をついても良い特別な日ではあるけど! 絶対に嘘じゃない! 絶対、絶対に実現してみせるよ!」
「ふふふふっ。ありがとうございます
……
」
すっかり安堵した様子で目尻を和らげた娘に、ウツシも同じ様子で微笑む。
彼の胸の中に宿るのは、咲き続けている時はもちろん、散った後であっても変わらない、最愛の人へ捧ぐ誓いと偽りなき想い。
(何があっても、どうなっても
……
キミが望んでくれる限り、俺はキミと共にある。これは
……
決して嘘じゃない。だけど、今日は
……
)
よりによってこの日にそれを告げるのは少々
間
ま
が悪い気がして、娘の頭を撫でながら、ウツシが気取られない程度に苦笑しながら「大好きだよ」と小さく囁く。
その声も掬い上げた娘が「わたしもです」と
躊躇
ためら
いなく答え、ようやく迷いのない花散らしの笑顔を浮かべた。
そのまま、どちらからともなく、月華の中で唇を重ねる。
生
せい
を感じる柔らかな感触に、目を閉じた娘が嬉しそうに「んん」と声を溢れさせ、ウツシがそれも含めた全てを喰らい尽くすように、熱く湿った分厚い熱を深く、深く絡め合わせた。
風が流れて雲が動き、天満月が口付け合う2人と共に、夜闇の中へ隠れ始める。
夜も深まり、相変わらず
人気
ひとけ
は全くなく、2人の耳には風の音と、互いの胸の鼓動だけが聞こえた。
喜びに満ち、熱く、甘く激しく跳ねる、至福の脈動。
互いの命が
爛漫
らんまん
と咲き誇る活力と温もりを刻みつけるように、2人は抱き合い、普段以上に長く口付け合ったまま。
言葉ではない形で、ただ、互いの想いを分かち合った。
それは、今日だけは嘘を
咎
とが
められない互いの口を、優しく封じるようにも見えた。
1
2
@acadine
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